未来への投資がされない日本

教育機関への公的支出
34位 / 34カ国OECD
大学生への公的支出
34位 / 34カ国OECD
一人親世帯の貧困率
33位 / 33カ国OECD
幼児教育に対する公的支出
29位 / 30カ国OECD
子どもの貧困の度合い(貧困の深さ)
34位 / 41カ国(ユニセフ2016)
クラス当たりの生徒の数
26位 / 28カ国OECD
教員の仕事時間
23位 / 26カ国OECD
ジニ係数(社会における所得分配の不平等さを測る指標)
25位 / 36カ国OECD

 上記は、今の日本の教育、子育て、所得、貧困などを表す数字ですが、いずれも先進国の中では低水準です。現在、子どもの貧困は、7人に1人が貧困状態という過去最高の値を更新しました。

 学校の上履きを買えない子どもたちがいて、給食でしか栄養が取れないような子どもたちがいます。都市部に住んでいると理解しにくいかもしれませんが、例えば沖縄県では、3人に1人が貧困状態です。これは昭和の時代のドラマの話ではありません。平成から令和へと変わった現在、目の前で起こっている現実として、私たちがそれを理解できているのか、という問題です。

子どもたち

写真はイメージです

 私は、自分自身が母子世帯の貧困家庭で育ちました。父と母は私が、小学生のときに離婚をしました。母は、私と妹2人、兄妹3人をなんとか養おうと早朝から深夜まで働いてくれましたが、働いても働いても生活は厳しくなるばかりでした。

 ひとり親家庭のお母さんたちは81.8%の人が働いているにも関わらず、平均収入は約200万円に過ぎません。そしてひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%に達します。この状態は本人の努力が足りないのではなく、多数のひとり親家庭のお父さんお母さんが必死に働いてもワーキングプア、貧困状態に陥るという社会的な構造に欠陥があることの証左です。

 そして働き続けた母は、ある時期に身体を壊し、寝込むようになりました。そしてうちは、生活保護を受けることとなりました。その時、子どもだった私は、ただ無力で、そのことに悔しさを感じながらも、母の代わりに働きに出て、家計を支える力はありませんでした。子どもだった私には、状況を打破し、未来を切り拓くことはできなかったのです。

 あたりまえのことですが、子どもは自分の努力だけでは、貧困から抜け出すことはできません。子どもにできることは、とても限られていて、その子どもが自分の努力では乗り越えられない壁を突破する力は、やはり社会が補わなければなりません。

 それは、その子どもの将来にとってももちろん必要なことですが、巡り巡って、日本の将来にも関わってくる大きな問題です。子どもの貧困を放置すると総額で約40兆円の社会的損失が出るという推計があり、未来を担う子どもたちへの支援の拡充は、社会的にも、経済的にも必要不可欠です。

 そうした中、現在の日本は教育や子育てといった若者向けの社会支出が欧州諸国と比較して低水準です。教育費支出に関していえば、OECD35カ国の対GDP比平均が5.2%である中、韓国は6.3%支出し第3位であるのに対して、日本は4.4%の支出であり、29位と大変低い水準です。

教育費の対GDP比グラフ

 経済的な意味合いでも子どもへの投資効果というのは非常に高く、逆に子どもへ投資をしない損失は計り知れません。

 若者や子どもたちは、日本の将来を担う宝物であり、一番の「成長分野」でありますから、教育の機会均等化、無償化をゴールとした負担軽減はもとより、子育て、教育については、社会全体で引き受けられるように積極的な投資を行うべきであると考えます。

格差の固定化は、社会全体の不安定化に繋がる

 子どもの貧困問題は、親の貧困問題と直結します。親の経済的貧困が教育格差を産み、子どもが低学力・低学歴になった結果、就労状況が不安定になり、その子どもが親になった時にまた経済的貧困に陥るという貧困の世代間連鎖が起こる状況は、データで証明されています。

 大阪府堺市の調査によると、市内の生活保護世帯のうち、過去に生活保護世帯で育った経験があるのは25.1%で、母子世帯では、その割合は40.6%に上ります。

 親も生活保護でギリギリの生活をしているので、子どもに充実した教育環境を与えることができず、サポートに入るべき行政も人と知恵が不足し、現金給付がメインとなっており、抜本的な改善が図られていない現状があります。

 こうした状況下で育った子どもたちの中には、親の貧困が一要因として道を逸れ、教育を十分に受けられず、低学力・低学歴になった結果、就労状況が不安定になり、生きていくためのお金を稼ぐことが困難となる子どもたちがいます。生きていけない環境だからこそ、現状に反発します。私もその当事者の一人でした。そして行き過ぎた反発は、犯罪などに繋がり、社会の基本的なレールから排除された若者たちを私は幾人も見てきました。

 そんな負の連鎖が繰り返された末路として、格差が固定化し、その子どもたちが、大人になった時にまた経済的貧困に陥るという貧困の世代間連鎖は、大きな社会問題だと私は考えています。人種差別のように何かを排除する論理で政策を前に進めてしまったり、こうした問題に無関心で放置してしまうとその不満がどこかで必ず爆発します。

 このような貧困の連鎖と固定化を放置する社会に、持続的な発展はありえませんので、こうした課題に目を向けて抜本的な解決を図ることが求められています。

 また、その他にも働く環境によっても格差が固定化されています。正社員と非正規社員別に、初めて就いた仕事の雇用形態での女性の結婚や出産に関する影響を見ると、正社員で結婚している割合(配偶者あり)が70.9%、子どもがいる割合が54.1%であるのに対して、非正規社員で結婚している割合(配偶者あり)が26.9%、子どもがいる割合が21.6%であり、2.5倍以上の差があります。

 また、男性の結婚しているかの有無を正社員、非正規社員、パートアルバイト別に見ると、20~24歳では雇用形態にかかわらず90%以上が未婚であるのに対して、35~39歳になると正社員の72.4%が結婚しているのにも関わらず、非正規社員は29.9%、パートは23.8%、アルバイトは23.3%しか結婚していません。
※総務省2017年「就業構造基本調査」表68

 この国では残念ながら、働いている環境の違いが結婚や出産など、人生に大きな影響を及ぼす現状があります。しかしこうした状況は、結果として国力を弱くし、社会を不安定化させます。

 労働人口5459万人中、非正規社員は2036万人(37.3%)であり、2012年民主党政権終了時から現在を比較すると220万人も非正規労働者が増えていますから、結果としてこの状態が続けば、少子化に歯止めがかかりません。
※厚生労働省 正規雇用と非正規雇用労働者の推移

 その証左として、2017年に生まれた子どもの数は94万6060人、合計特殊出生率は1.43となり、過去最少を現政権下で更新しております。そして、少子化の影響は、経済、社会保障、国民生活に広範な悪影響を与えることは言うまでもありません。

“アベノミクス”とは何だったのか

 私たちは、アベノミクスで景気が良くなった、経済が良くなった、給料が良くなったと刷り込みのように言われ続けましたが、実態はどうでしょうか。皆様がお給料をもらってどれだけ使えるかを示した値である「実質賃金」の統計に不正があり、今でも政府は説明責任を果たさず、隠蔽を続けています。

 また、戦後最長の景気拡大局面と謳われていたのが、幻だったかもしれないという報道がなされており、世論調査を見ると景気回復については、約80%の方が実感していないとこたえています。国民の給与が上がらず、使えるお金が減り、消費が伸びなければ、景気が良くならないのは当たり前ですし、経済政策的に言えば初歩の初歩から間違えています。

 これに加えて、2019年10年から消費税率を10%に引き上げることを政府が明言していることも影響して、IMFの世界経済見通しによれば、2020年の日本の経済成長率は0.5%程度と見込まれております。この数値は、G7、BRICs、NIEs、ASEAN5など、様々な枠組みの国々と比較してもダントツの最下位水準であるという予測です。

 こうした客観的な事実から見えてくることは、アベノミクスのカンフル剤で一部の大企業エリート層に下駄を履かせてより強くしたものの、抜本的な構造改革や生産性向上が進まなかった上に、一般国民にお金が流すことに失敗しました。結果として中間層がどんどんといなくなり、それが貧困層にシフトしてしまったことによって、ソーシャルコストが嵩み、経済成長も景気回復、財政健全化も実現できなかったということです。

 本来、日本の発展を見据えて行わなければならないことは、明確な時代認識をもって俯瞰的に問題を捉え、前例にとらわれずに新しい提言を積極的に打ち出し、限られたパイを持続可能な社会の構築に向けてどう分配するのかということですが、提案されているのは残念ながら場当たり的かつ近視眼的な政策ばかりです。

 こうした閉塞感漂う状況を打破するためには、スピード感の早い時代に対応した成長戦略と国民所得にダイレクトに反映される分配政策の両輪を動かす経済政策が不可欠です。

 そうした中でまずは、世界の潮流を先取った成長産業の育成や地方の高付加価値産業を支援し、日本の労働生産性を向上させることが必要です。

 第4次産業革命を牽引し、IoT、AI(人工知能)、ロボットデータ政策、xR、ドローン、自動運転車など、利便性と生産性を高める先端技術の活用による社会のスマート化と新たな産業構造を支える人財の育成は、少子高齢化による人口減少社会における成長戦略のキーポイントになります。社会のデジタル化を推進し、効率化、透明化を図り、人的資源や予算を集中的に成長分野へ投資していく必要があると考えます。

 また地方自治体でも、地方創生ICOの研究やブロックチェーンを活用した高付加価値産業の育成など様々な取り組みがなされておりますが、今後はよりクリエイティブに歳入増を目指し、地域の活性化を図らなければなりません。さらには、一部のマーケットの既得権益を持つ人や公共事業にばかりお金をバラまくだけではなく、国民一人ひとりを豊かにするという視点がとても重要です。

 額に汗して頑張って働いた人のお給料がしっかりと上がり、困っている人にきちんとした援助がなされるような、国民一人ひとりに行き届く予算分配が必要です。最低賃金も欧米程度の水準を目指した賃上げが必要だと思いますし、非正規、正規関係なく、働く全ての人々が社会保険に加入できるような制度設計も有効です。しかもそれが瞬間的な補助金などではなく、生活のベースとして安定する政策を示してあげなければ意味がありません。

 こうした観点で格差を是正し、隅々まで行き渡る景気対策を図り、頑張れば未来はもっとよくできると国民一人ひとりが実感できる持続可能な経済成長戦略を実行していかなければなりません。

政治は本来、社会的少数者・弱者のためにあるべき

 政治は放っておけば必ず、権力により近い一部の人にとって都合の良い方向へ進んでしまいます。歴史上、権力は絶対に腐敗するということです。そして国民生活に大きな影響を与える立場にある者が、生活者の声を聞くことなく、算盤だけを弾いて、実態を踏まえない、机上の空論で政策を作れば、苦しむのは国民です。

 しかし現状の政権運営では、一部の既得権益団体や圧力団体の声がより優先的に政治や行政に反映されがちです。それは少数派でありながら、政治や行政へのアプローチを強かに巧みに彼らが進めている結果です。

 ただ私は、そうした方々よりも、ふつうに生活を送る一般市民や政治がなんだかおかしいと思っているけど、声の上げ方がわからないサイレント・マジョリティ(静かなる多数派)、全世代の本当に困っているマイノリティ(少数派・社会的弱者)やハンディキャッパーの当事者、あるいは機会に恵まれない若者たちなども含め、広く多様な価値観を持つ国民の皆様からの意見に、耳を傾ける必要性があると強く感じております。

 また議会は社会の縮図としてあるべきであり、様々な悩みを抱える当事者の代表が代弁者として声を上げることが、政府、行政のルールや制度、予算配分を変えることに直結します。

 そうした観点から私たち立憲民主党においても、その多様な原体験を持つ候補者の擁立を積極的に進めています。

歩く人々

 ただその一方で気をつけなくてはならないのは、多様性のあり方です。多様性は、それぞれのマイノリティ至上主義ではありませんから、多様な価値観を共に尊重し、理解しあえる、ダイバーシティの形成を各自が意識することも極めて重要です。

 この前、地域の中で政府が強行採決した年金カット法により、年金を減らされて生活に困っていたおばあさんから声をかけていただいた時に、「年金を減らされたら生活していくのが、本当に大変。生活保護の人たちは真面目に年金を納めていた自分たちよりお金をもらっているなんてズルイ」という趣旨の話を伺いました。私が直感的に感じたのは、この状態は悪循環でマズイなと思いました。

 本来であれば年金を減らすという予算の分配を決定した政府に怒りの矛先が向いて、年金カットするのはおかしいと声を挙げるのが筋だと思います。しかしながら、この事例のように、同様に生活をすることが困難な方々と比較して、「隣の芝は青い」という議論をしていては根本的な解決が図られず、現状は何も変わりません。

 THE BLUE HEARTSのTRAIN-TRAINという楽曲の歌詞に出てくるフレーズに、『弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく』という言葉がありますが、まさにこうした状況が起こり得る危険性があることを肌で感じる中、一人ひとりが政治に目を向けることの重要性を伝えていく必要を感じました。

 民主主義国家では、民度以上の政治家は生まれません。政治家に不満があるとしたら、その政治家を選んでいるのは私たち。政治に不満があるとしたら、その状態を作っているのは私たちが選んだ政治家。政治を変えるには、私たち国民一人ひとりが政治に向き合うことがやはり必要だと思います。

 皆さんの中には、政治には何を言っても変わらないと思っている方がいらっしゃるように感じます。私もそうした若者の一人でした。しかし私が政界に入って実感したのは、何を言っても変わらないのではなく、何も言わないから変わらないという現実でした。

 そして、私たちは、“政治に「無関心」でいることはできても、「無関係」でいることはできない。“我々の誰もが、この事実から逃れることはできません。

 年金や給料の額、医療・福祉の体制、保育園の数、学校給食の有無、満員電車の緩和、交番の設置場所、教育のカリキュラムや学費、婚姻制度のあり方、地元にカジノを誘致するのかなど、日々の生活を送る上でほぼ全ての事象に関して政治と生活は密接に絡み合います。

 だからこそ、おかしいと思うことがあれば、おかしいという声を挙げ、その事象を正す行動を起こすことがそれぞれに求められております。

 世の中をより良くするためには、私たち一人ひとりが社会の“一隅を照らす”ことが大切です。国民一人ひとりが自分の見える範囲の社会の問題点に対して、できる限りの改善を行う。仮に、この世に生きる全ての人が、それぞれのフィールドに応じた社会の問題点を真剣に考え、それを解決するためにアプローチが実行できる社会が形成されれば、皆が理想とする世の中を実現することが可能となります。

「現状に屈するのか、未来を拓くのか。全ては、私たち一人ひとりの行動が未来を決める」

 私も、国民の皆様の想いを政界に届ける代弁者として、期待に添えるようにしっかりと働いてまいります。

中谷一馬 衆院議員

中谷一馬 衆院議員

著者プロフィール
中谷 一馬 なかたに かずま / Kazuma Nakatani [ホームページ]

立憲民主党 衆議院議員 神奈川7区(横浜市港北区・都筑区の一部)

1983年8月30日生。貧しい母子家庭で育つ。厳しい経済環境で育ったことから、経済的な自立に焦り、中学卒業後、高校には進学せず、社会に出る。だがうまく行かず、同じような思いを持った仲間たちとグループを形成し、代表格となる。

しかし「何か違う」と思い直し、働きながら横浜平沼高校に復学。卒業後、呉竹鍼灸柔整専門学校を経て、慶應義塾大学、DHU大学院に進学。その傍ら、飲食店経営や東証一部に上場したIT企業の創業に役員として参画する中で、人の役に立つ人生を歩みたいと政界進出を決意。

総理大臣の秘書を務めた後に、27歳で神奈川県議会における県政史上最年少議員として当選。県議会議員時代には、World Economic Forum(通称:ダボス会議)のGlobal Shapers2011に地方議員として史上初選出され、33歳以下の日本代表メンバーとして活動。また第7回マニフェスト大賞にて、その年に一番優れた政策を提言した議員に贈られる最優秀政策提言賞を受賞。

現在は、立憲民主党 青年局長(初代)、科学技術・イノベーション議員連盟 事務局長として多方面で活動中。

著書:「だから政治家になった」幻冬舎

写真はイメージです