米アマゾン・ドットコムがクラウドサービス事業の一環として、開発と販売を行っている顔認識・検出技術の取り扱いを巡って、株主が同社に圧力をかけていると、米ニューヨーク・タイムズが伝えている。

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株主投票で政府提供の是非を問う

 アマゾンの株主は、「レコグニション(Rekognition)」と呼ばれるアマゾンのソフトウエア技術を問題視しており、これを警察などの政府機関に提供しないよう働きかけている。

 アマゾン5月22日に年次株主総会を開催するが、そこで、この技術の販売先の是非を巡る株主投票が行われる。

 これは、同技術が人権を脅かしていないか、それによってアマゾンの信用や利益が毀損されることはないか、といったことを問うもので、株主は、具体的に次の2つを提案を行う。

 (1)この技術は人権侵害を助長するものでないと取締役会が結論付けない限り、レコグニションの政府機関への提供をやめる(販売を禁止する社内規則を設ける)

 (2)レコグニションがどの程度、人権やプライバシー権、あるいはアマゾンの事業を脅かすかを判断するため、第三者機関の調査を受ける

「公共の利益」か「人権侵害」か

 これまでのところ、「レコグニション技術が誤用されているという報告は受けていない」とアマゾンは反論している。同社は、「(技術が)公共の安全を目的に使用されるべきものであることを記したガイダンスも併せて提供している」とも主張。また「3000人以上に上る人身売買の被害者を特定したという事例もあり、技術は有益な目的のために使用されている」、としている。

 アマゾンのような顔認識技術の提唱者は、これが犯罪容疑者や行方不明児童などの特定を容易にし、公共の利益になると主張する。一方、人権擁護団体は、技術は、いとも簡単に乱用され、移民や特定の人種、市民運動家などの言論の自由、活動の権利を侵害すると、主張している。

テクノロジー大手の株主、圧力かける動き広がる

 なお、今回、株主総会で行われる株主投票では、政府への販売を禁ずる票が過半となっても、議決には強制力がないため、アマゾンに行動を強いることはできない。しかし、米テクノロジー大手の株主の間では昨今、こうして企業に圧力をかける動きが広がっている。

 たとえば、米アップルの株主は、「iPhone」に備わるペアレンタルコントロール(親が子のネット利用を管理する機能)を強化するよう強く要請し、アップルはその後の新OSで、それを実現した。

 今年は、米フェイスブックや、米グーグル持株会社である米アルファベットなどの株主総会で、選挙に関連するフェイクニュースヘイトスピーチ、中国向けの検閲機能付きネットサービスなどに関する株主投票が行われると、ニューヨークタイムズは伝えている。

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