大阪都構想の住民投票実施に向けて、再び歩を進める大阪維新の会。元代表であり、大阪府知事・大阪市長を務めた橋下徹氏が、大阪都構想住民投票に至るまでの苦難の道のりを振り返る。(JBpress)
(※)本稿は『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』(橋下徹、PHP新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
リーダーが持つべき「資質」
リーダーに部下がついてくる理由には様々なものがあります。
人事権を行使されるかもしれないという恐れ、リーダー(上司)の政治力にあやかりたい気持ち、リーダーにお世話になった恩、具体的な利益をもらえることへの期待・・・など色々な理由があるでしょう。
しかし、やはり部下がついてくる最大の理由は、「共感」ではないでしょうか。
人事権や政治力がなく、部下との個人的な人間関係もそれほどないリーダーが部下を引っ張るメインの力は「共感力」です。もちろん人事権や政治力、人間関係力があるリーダーが共感力を持てば鬼に金棒です。
人は、高い目標を実現することに大きな喜びを感じます。賃金・労働条件などの待遇や、生活の安定も重要ですが、それと同等かそれ以上に人は達成感を求めることが多い。ゆえに目標の実現に向かってとにかく突き進む姿に、人は強い共感を覚えます。
したがってリーダーにとって、「口だけのチャレンジ」は絶対に避けなければなりません。真にチャレンジする姿を部下に示すことが、部下を引っ張る原動力です。
上るべき階段を前にして
ゴールにたどり着くためには1000段の階段を上らなければならないとします。そのときに、10段先にある階段が上れないからといって、1段目を諦めてしまうのか。諦めてしまえば永久に1000段目には達しないのです。
たとえ10段目の階段を上れるかどうか分からなくても、目の前の1段目を上ることに全力を尽くす。もしかすると、10段目にたどり着いても、やはりそれ以上は上れずに結局ゴールに到達できないかもしれない。
しかし、まずは目の前の1段目を上り、そして次に10段目に挑戦する。その繰り返しによって、やっと1000段目にたどり着くのです。
たどり着いた「大阪都構想住民投票」
僕が2010年年頭に大阪都構想を打ち出してからは、茨の道の連続でした。そこから2015年5月の住民投票に至るまでの約5年半、振り返ってみると、いったい何段の階段を上って来たのか分かりません。
2010年から、「大阪都構想なんて絶対に不可能だ」とずっと言われ続けてきました。僕が階段を上り、壁を突破するたびに、「もうここで終わり、次はない」なんて言うコメンテーターもいました。「大阪都構想には法律の改正が必要だが、国会では大阪都構想なんて歯牙にもかけてない」と言い放ったのです。
僕は毎回、目の前の階段を上ることに全力を尽くしました。もっと上のほうの階段で万策尽きるかもしれない。しかし目の前の階段を上らないことにはゴールには絶対にたどり着けない。
散々批判を受けた僕の2014年3月の大阪市長出直し選挙。相手陣営は対立候補を出さずに、投票率は23パーセント程度。税金の無駄だ、民意を得ていないなどと厳しく批判を受けました。
しかしこの出直し市長選挙の公約に掲げた「法定協議会委員の入れ替え」という強硬策を、選挙で勝利したことをもって断行し、その後もいくつも壁を乗り越え、階段を上りながら、なんとか大阪都構想の設計図の完成にまで持ちこみました。
次は大阪府議会・大阪市議会での議決という階段を上らなければなりません。しかし、大阪維新の会は両議会において過半数議席を有していませんでした。
ここで万策尽きたと思いきや、突如「衆議院解散総選挙」となり、それを最大限活用して公明党と折衝し(公明党候補者の選挙区には維新の会は候補者を立てないという取引)、最終的には府議会・市議会において公明党の協力をとりつけ、過半数の議決を得て、住民投票までたどり着いたのです。
リーダーの「全力」が道を拓く
当時、大阪府議会・大阪市議会において、大阪維新の会は過半数の議席を有していなかったことから、「どうせ最後は議会が絶対に否決するんだから、大阪都構想を進めてもすべては無駄になる。やらないほうがいい」と散々言われました。先を見越した諦めの判断ですね。
確かにそういう判断もあるでしょう。出直し市長選挙も、その後の法定協議会による大阪都構想の設計図の作成プロセスも、膨大なエネルギーが必要です。どうせ最後に議会が否決するのなら、そんな無駄なことは止めようという空気が組織内にあったのも確かです。
しかし僕は、最後の府議会・市議会の議決がどうなるかは別として、まずは目の前の階段をとにかく上ることに集中し、政治家としての全エネルギーを注ぎ続けました。
出直し市長選挙、法定協議会委員の入れ替え、とにかくあの手、この手を尽くしながら大阪都構想の設計図を完成させたのです。
そうすると最後には衆議院解散総選挙の風が吹いて、住民投票までたどり着きました。あそこで議会の議決はどうせ得られないだろうと諦めていたら、衆議院が解散されたとしても、住民投票まではたどり着けていなかったのです。
道を拓くには行動しかありません。目の前の階段を上り続けるしかないのです。リーダーがメンバーを率いるには、口先人間になってはダメです。
リーダーは、目標の実現に向けて一心不乱にチャレンジする姿を示し、実践する必要があるのです。それが組織のメンバー(部下)の共感を呼び、メンバーがついて来てくれるようになるのです。
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