広島東洋カープが完全に息を吹き返した。開幕戦以降5カード連続で負け越した時点では、過去のデータから「優勝の可能性ゼロ」とも報じられたが、4月16日からの巨人3連戦に勝ち越してから一気に爆発。次節のDeNA戦(同19日)以降は20勝6敗1分けで、ついに“首位君臨”となった。

 「沈んでいた序盤戦、チームを救ったのは、ベテランの石原。石原が好機で打ち、ムードを一変させました」(スポーツ紙記者)

 緒方孝市監督(50)も苦慮したところがあるようだ。

 広島のチーム関係者に話を聞く際、あるワードを口にするとものすごくイヤな顔が返ってくる。「丸ロス」だ。丸佳浩外野手の、FAによる巨人移籍。緒方監督は「丸ロス」による戦力ダウンを指摘されるたびに否定してきたが、最下位転落した序盤戦、各メディアは「むしろ、質問するのも気が引ける」と、逆に丸について何も質問しなくなってしまった。

 各メディアに“同情”される状況から立ち直った要因は、攻撃スタイルを変えたことにある。

 「4月29日以降、緒方監督は『3番バティスタ・4番鈴木』の打順を動かしていません。5番は、開幕戦で3番に入った西川龍馬、そして、松山竜平長野久義を使い分けています。1番には野間峻祥をほぼ固定させ、昨季まで1番を任せていた田中広輔を下位に置きました」(プロ野球解説者)

 打者・丸は3番、野手・丸は中堅手だった。センターには俊足の野間を入れ、強肩を誇る主砲の鈴木誠也ライトに置く。残るレフトポジションを、松山、西川、バティスタ、そして、若手の坂倉と人的補償で得た長野久義を加えた面々で争わせようとした。

 「将来性なら西川か、坂倉。打撃優先なら、バティスタ、松山、長野でしょう。丸の人的補償で若い選手ではなく、今年35歳になる長野を選びました。ベテラン選手を選んだ経緯からしレギュラーで使う意思があったのでしょう。『レフトは主に長野』と予想する声が多くありました」(前出・スポーツ紙記者)

 長野はゴールデングラブ賞など守備のタイトルも獲得している。しかし、レフトの守備は苦手だった。「レフト・長野」の構想は崩れ、日替わりオーダーの試合も続き、ついに緒方監督は決断した。

 4月30日の阪神戦に敗れ、迎、東出の両打撃担当コーチを呼び、打順を『ほぼ固定できる布陣』にすることを前提に守備位置を話し合った。翌5月1日以降、「1番中堅・野間、5番左翼・西川」でほぼ固定された現在の打順に再編された。

 左翼のスタメンも西川である程度固定し、バティスタは一塁に回すことにした。

 「今までは『3番・丸』で得点を挙げ、4番の鈴木を自由に打たせていました。西川、バティスタ、長野、野間らを3番に置きましたが、機能しませんでした。4月30日の緊急ミーティングでは1、2番の出塁率が昨季よりも落ちたことが要因だとされました。1番を任せていた田中の不振もありますが、出塁率も高かった丸がいなくなったことで、相手投手が警戒するポイントを変えたんです。今までは丸、鈴木を警戒していましたが、今年からは『鈴木の前に走者をためない』という内容に少し変わりました」(前出・プロ野球解説者)

 緊急ミーティングでは、4番鈴木の持ち味を生かすため、次を打つ5番バッターを重要視することになった。そして、1、2番は出塁したら走る(=盗塁する)ことを徹底させた。相手投手に盗塁を警戒させることで、クリーンアップへの警戒を緩めるのだ。

 緒方監督はチームが不振に陥ると、一人で考え込むことも多かった。しかし、今回は打撃担当コーチを加えて話し合っている。打順の再編はたしかに功を奏した。しかし、真の勝因は、緒方監督の変貌かもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

鈴木誠也