私立京華商業高校(東京都文京区)で有期専任の教員として勤務していた男性2人が5月23日、学校側に不当な雇い止めをされたとして、撤回を求めて東京地裁に提訴した。同日、同じく雇い止めにあったとして、私立安田学園(東京都墨田区)で非常勤講師として働いていた男性も東京地裁に提訴した。

ブラック企業被害対策弁護団と私学教員ユニオンが同日、厚労省の記者クラブで合同会見を行い、明らかにした。私学教員ユニオンは「今、私立学校の非正規雇用率は4割と言われている。都合よく使って雇い止めをして、使い捨てるという労務管理が蔓延している」と指摘した。

●「時間外労働や非正規教員の使い回し、全ての学校に蔓延」

訴状などによると、京華商業高校については募集要項に、「3年間は1年ごとの有期専任契約とするが、2年目に専任採用の判断をし、4年目からは専任教諭として採用される道が開かれている」と記載されていた。男性2人は正規雇用として採用に期待を持って働いていたが、実際には今年3月末で一方的に雇い止めをされたという。その際、2人は何度も校長に雇い止めの理由を確認したが、「総合的な判断」というだけだった。2人の雇い止めを受け、現役生徒の9割が撤回を求めて署名活動をして、学校に提出したが、学校は応じなかった。

この日、原告の男性の1人は、生徒の署名を手に会見に臨んだ。

「高校生の頃、担任の先生に憧れて猛勉強して教員になりました。生徒のことを一番に考えて、職責を全うしてきた。しかし、これまでに4回の雇い止めを経験しても、正規職員になれませんでした。今回、多くの生徒が署名を集めてくれた。これを真摯に受け止めたいと思い、提訴に踏み切りました。

時間外労働や非正規教員の使い回しなど、京華商業のみならず、すべての学校に蔓延している問題だと思います。将来を担う子どもたちのためにも学校教育に健全になってほしい」

●「雇用契約書がなく、学校内のルールで雇い止め」

また、安田学園で非常勤講師として働いていた男性は、5年にわたり勤務してきたが、今年2月に突然、雇い止め通告を受けた。しかし、過去の募集要項、内定通知のメール、内定通知などすべてに労働期間の記載はなかった。就職した際にも説明を受けず、5年間1度も雇用契約書が取り交わされていなかった。

会見で男性は、「契約書を見せてほしいと言ったのですが、出てきませんでした。学校内のルールということで、雇い止めにあいました」と語った。雇い止めは、非正規雇用労働者が希望すれば、無期雇用になる「無期転換ルール」を学校側が阻止する目的だったという。

男性は会見で、「どの学校でも、5年を超えないように雇い、人材をぐるぐる回しています。今年はいくらもらえるのかわからない、何コマもらえるのかわからない状況の先生が多くいます」と非正規教員の窮状を訴えた。

私学教員ユニオンの佐藤学さんは、「教員が短期で入れかわれば、安定的な授業や親との信頼関係が築けない。また、不安定な雇用でダブルワークやトリプルワークをする教員も多く、教育に専念できないという弊害がある」と指摘した。

※私立学校で働く非正規教員を対象とした労働相談ホットライン5月25日、26日に開かれる。番号は、0120-333-774。いずれも13時〜17時(相談無料、通話料無料)

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