この春から、幼稚園や保育園、小学校に入り、新生活が始まった子どもを持つ親御さんも多いと思いますが、「新園児」「新1年生」の中には、登園・登校の時間になると「おなかが痛い」と訴える子がいるようです。

 ネット上では「うちの子だ」「保育園に行く途中に言われたことがある」「ストレスなのかな」「どういう腹痛なのか分からなくて戸惑う」など、さまざまな声が寄せられています。新生活シーズンの子どもたちを襲う腹痛について、YSこころのクリニック院長で精神科医の宮島賢也さんに聞きました。

慢性腹痛の9割を占める心因性腹痛

Q.春になると、新園児や新1年生の子どもが「おなかが痛い」と訴えるケースは実際に増えるのでしょうか。

宮島さん「環境が大きく変わるので、『おなかが痛い』という訴えも増えると思います。検査しても異常がなければ『心因性腹痛(機能性腹痛)』と判断されます。検査で異常のあった腹痛も含めてですが、特に、3カ月以上持続する痛みは『慢性腹痛』と言われます。5歳以降に現れ、5~16歳の約10~15%(特に8~12歳)に慢性腹痛がみられます。男児と比べ、女児にやや多いようです。

慢性腹痛の10%が、乳製品に含まれる糖分・乳糖によって下痢などの症状をきたす『乳糖不耐症』で、残りの90%が心因性腹痛です」

Q.心因性腹痛は、どのような仕組みで痛みを感じるのですか。

宮島さん「ストレスでガスがたまったり、腸の動きに変調を来して胃や腸の周囲の神経に伝わったりすることで痛みが生じると考えられます。痛みを訴える子に『心理的なものだから』『痛くないでしょ』と言ってしまうと逆効果です。『おなかの痛み』は本当に痛いのです。あるいは、“痛い”と心が感じています。親御さんに『分かってほしい』『認めてほしい』というサインなのです。

おなかの痛み以外にも、頭の痛みを感じたり、気持ちが悪いと訴えたりするケースも多いです。吐き気や発熱も多く、中には39~40度の高熱を出す子もいます。また、個人差はありますが、ふくらはぎや太ももの痛み、腕の痛みを訴えることもあります。発熱するときは、感染症などの可能性もあるため、一度は内科で検査を受けましょう」

Q.「おなかの痛み」が身体的なものか、精神的なものかを親が判断する方法はありますか。

宮島さん「感染症や急性腹症などの可能性もあるため、初めて症状を訴えたときは内科での検査が必要でしょう。また、定期的な検査もお勧めします」

Q.子どもが「おなかが痛い」と訴えたとき、親はどのように対応すべきでしょうか。

宮島さん「寄り添いながら話を聞き、子ども自身が『ここにいたい』と思う場所にいてもらいましょう。基本的に子どもは両親のことが大好きですので、両親に困った顔をしてほしくなく、思いを言わずにのみ込むこともあります。また、学校に対してストレスを感じている場合、分かっていても言えないケースもあります。幼稚園や学校を休むということも選択肢に入れながら、お子さんの話を否定せずに聞いてあげてください。

『おながが痛い』と訴える子どもは、学校に行きたい子、保健室なら行きたい子、おうちにいたい子など、さまざまです。親に『学校に行かなくてはいけない』『休んでもらっては困る』という思いがあると、話を聞きづらくなる上に、子ども側も正直に答えづらくなります。幼稚園や学校に行っても行かなくても、親が子どもの“痛み”を理解し、“子どもがここにいること”を認めてあげてください。

園や学校に対しては『おなかの痛みを時々訴えて、学校を休みがちになる』『頻繁にトイレに行きたがる』ことを伝えておくとよいと思います」

Q.子どもの心因性腹痛を未然に防ぐために、日常生活でできることや意識すべきことはありますか。

宮島さん「子どものおなかの痛みは、親に対する一つのメッセージです。心因性腹痛の発症前・発症後にかかわらず、親は子どもに対して『生きているだけで、生まれてきただけで、既に素晴らしいこと』を伝えてあげてください。また、夫婦や家族が円満であること、そして子どもに愛情を注ぐことが大切です」

オトナンサー編集部

子どもの「おなかが痛い」原因は?