2019年プロ野球シーズンは、令和初に戦いが繰り広げられる記念すべきもの。だが新時代に突入したとはいえ、野球ファンにとって忘れられないのは、平成30年間の熱き死闘だ。



 前回は星野&落合の黄金期中日ドラゴンズの戦いを振り返ったが、野村克也星野仙一という2人の名監督が率いたこともある阪神タイガースも忘れてはならない。2003年と’05年にはリーグ制覇も成し遂げており、数多くの“名勝負”は人々の記憶に残り続けている。今回も、名勝負5選をセレクトする。



新庄剛志、敬遠球をサヨナラヒット! 1999年6月12日 対読売ジャイアンツ戦(5-4)



 本拠地・甲子園球場で行われたこの日の伝統の一戦は4-4のまま、延長12回裏に突入していた。そしてこの回、1死一、三塁と一打サヨナラチャンスを掴んだ阪神。ここで4番・新庄剛志がこの日、6度目となる打席へ。8回裏に起死回生の同点ソロを放つなど、この試合ここまで3安打を放っていた新庄を迎え、巨人ベンチは当然のように満塁策を選択する。



 だが、守護神・槙原寛己が投じた2球目は、敬遠球にしては高さ、コースともに外しきっていない甘い外角球となってしまう。次の瞬間、しなやかに全身を伸ばした新庄が大根切りのようにバットを振ると、打球は前進守備のショート二岡智宏の左を転がり、レフト前へのサヨナラヒットに。試合時間4時間41分の激闘の幕切れは、今でも語り継がれるまさかの劇的決着となった。



◆代打の神様の真骨頂、切り札八木裕の逆転満塁ホームラン! 2002年7月30日 対横浜ベイスターズ戦(4-2)



 阪神の歴史上、“代打の神様”と呼ばれた選手は何人か在籍していたが、その中で間違いなくNo.1の存在感を放っていたのが背番号3を背負った仕事人八木裕である。その最大の見せ場となったのがこの日の試合だ。



 本拠地・甲子園球場での対横浜戦。3回表に横浜に2点を先制されると、相手先発の福盛和男の前に5回までわずか3安打と抑えられてしまっていた。



 だが、6回裏に2死無走者から6番・平下晃司レフトヒットで出塁すると、7番・関本賢太郎が死球、8番・矢野輝弘も四球を選び、満塁のチャンスを掴む。ここで9番・投手の井川慶の代打として登場したのが八木だった。同時に横浜は先発の福盛から二番手の横山道哉にスイッチ。その初球の内角高めの直球をフルスイングした八木の打球は左中間席の最前列へと飛び込む、劇的な代打逆転満塁ホームランとなったのだ。代打の神様がひと振りで試合を決めた、まさに面目躍如の試合であった。



◆18年ぶりのリーグ制覇へ、赤星憲広、劇的サヨナラ打! 2003年9月15日 対広島東洋カープ戦(5-4)



 この年の7月8日マジック49が点灯。1985年日本一以来、18年ぶりのセ・リーグ制覇を狙う阪神はそのマジックを残り2まで減らし、地元・甲子園球場へ凱旋。この日のデーゲーム広島戦に挑むこととなった。



 試合は先発した伊良部秀輝が3回表にシーツに先制2ランを許したものの、5回裏に沖原佳典タイムリーで1点差とすると、8回裏には片岡篤史が執念の同点弾。



 そしてあの歓喜の9回裏が訪れる。1死満塁の一打サヨナラチャンスを作り、打席には小兵の赤星憲広。その赤星の一打がライト頭上へと飛ぶ。殊勲打を放ったヒーローナイン全員からもみくちゃにされ、闘将・星野仙一監督からもきつく抱きしめられ、祝福されたのだった。



 この勝利でマジック1とした阪神に18年ぶりの待望の瞬間が訪れたのは、それから2時間8分後だった。マジック対象チームだったヤクルトスワローズが敗戦したのだ。時に19時33分のことだった。



◆9回裏2アウトランナーなしからの怒濤の5連打で鮮やかな逆転サヨナラ! 2009年4月30日 対横浜ベイスターズ戦(3-2)



 本拠地・甲子園球場で横浜を迎え撃ったこの試合。阪神は5回表に梶谷隆幸に一発を浴び、2点を先制されてしまう。反撃したい打線も横浜投手陣の前に8回を終えて、わずか散発の4安打に抑えられていた。



 迎えた最終回の攻撃も2死でランナーなし。完封負けまであと1人。それでも逆転を諦めなかった猛虎ナインが、崖っぷちから猛反撃を開始する。代打・今岡誠から1番・平野恵一、2番・関本賢太郎、そして3番・鳥谷敬が執念の4連打を放ち、まさかまさかの同点劇を演じたのだ。なおも2死一、三塁とチャンスは続き、ここで打席に入ったのが4番・金本知憲だった。



 対するマウンドには横浜の守護神・石井裕也。そのカウント1-1から投じた3球目の外寄り140キロ直球を、金本のバットコンパクトにとらえる。打球はセンター返しとなって横浜のセカンド・梶谷が飛びつこうとするその先を痛烈に抜けていった。9回裏2死からの怒濤の5連打大逆転劇。その歓喜の締めはやはり頼れる“アニキ”のバットであった。



◆4連勝でクライマックスシリーズ初制覇、鮮やかな下克上、完成!! 2014年10月18日 対読売ジャイアンツ戦(8-4)



 この年のシーズンで2位となった阪神は、同3位の広島東洋カープとのクライマックスシリーズファーストステージを1勝1分けで突破し、リーグ覇者の巨人が待つファイナルステージへ。敵地・東京ドームでの決戦となったが、ここでも初戦から一気の3連勝。無敗でのクライマックスシリーズ突破が現実味を帯びてきた。



 その勝負の一戦。阪神は巨人の先発・小山雄輝の立ち上がりをとらえ、5番・マートンの3ランと6番・福留孝介のソロホームランで初回に4点を先制。2回表にも1番・西岡剛に2ランが飛び出し、序盤で6-0と完全に主導権を握った。



 投げては先発・能見篤史が巨人打線に9安打を浴びるも、5回を投げて2失点とゲームを作る。すると7回表に4番・ゴメスが2点タイムリーを放ち、突き放すことに成功。最後は4連投となる抑えの呉昇桓が2本のソロアーチを浴びたものの、8-4で逃げ切りに成功。敵地東京ドームで宿敵に完勝となる4タテを食らわせて、クライマックスシリーズ初制覇を果たしたのである。



 セ・リーグに同制度が導入された2007年以降、阪神は5度、クライマックスシリーズに進出するも、すべてファーストステージで敗退。鬼門となっていたが、初めて進んだファイナルステージ宿命のライバル相手になんと一気の4連勝。鮮やかな下克上日本シリーズ進出を決めたのだった。



 平成の世に数々の名勝負を繰り広げてきた阪神も昨シーズンは’01年以来、実に17年ぶりの最下位転落となった。矢野燿大新監督のもと、猛虎の逆襲を期待する。<文/上杉純也>





画像:野村メモ(日本実業出版社)