Ourasphaira giraldae/Credit:Corentin Loron et al

Point

ベルギー・リエージュ大学は、およそ10億年前の菌類の化石を発見したと発表

■その菌類は現代の菌類と同じような特徴をしており、予想よりずっと前から地球に真核生物が存在していた可能性を示す

地球上に初めて誕生した「菌」なのかもしれない。

ベルギー・リエージュ大学の研究チームは、およそ10億年前に生きていたと思われる菌の化石を発見したと発表。

これまで確認されている最古の菌はおよそ4億年前のもので、今回の発見により6億年も更新されたことになる。

研究の詳細は、5月22日付けで「Nature」に掲載されている。

Early fungi from the Proterozoic era in Arctic Canada
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1217-0

現代の「菌類」と同じ特徴を持っていた

「Ourasphaira giraldae」と名付けられた菌は、カナダ・ノースウエスト準州にあるグラッシーベイ累層にて発見された。菌の化石は累層から出土した頁岩層に保存されていたという。

研究チームは菌を「走査型電子顕微鏡」を用いて解析作業を行なった。電子ビームを菌に当てることで跳ね返ってきた電子を検出し観察する方法だ。これにより花粉のような微細な物質もハッキリと識別することができる。

「走査型電子顕微鏡」を用いた花粉の図/Credit:ja.wikipedia

その結果、「Ourasphaira giraldae」は現在の地球上に存在する菌類と似たような構造をしていることが判明した。

例えば、細胞壁には「キチン」の存在が特定されている。「キチン」は菌類の細胞壁を作るために必要な繊維状の物質である。この他にも菌類が探索をするための「菌糸」なども見つかっているようだ。

さらに放射性年代測定により、菌の化石はおよそ10億年前のものであると判明した。

これを受けて、主任研究員のコランタン・ローロン氏は「O.giraldaeが10億年前の菌類であると特定されたことで、その他の真核生物の出現時期も原生代中期にまで遡るかもしれない」と指摘している。

原生代はおよそ25億年前〜5億4100年前を指し、中期は15億〜10億年前に当たる。

世界は「菌」を中心に回る

地球上の生命の大躍進は「菌類」の活躍なしではありえない。

その代表例が植物の繁栄だ。植物は今からおよそ4億年前に水中から陸上に進出してきた。

ところが陸に上がってまもない植物には土に生やす根っこがまだ存在しなかったため、栄養分を補給することができなかった。そこで菌類をパートナーにして、互いに栄養分を交換する方法を採用したのだ。

Credit:pixabay

菌類は有機酸を分泌することで岩石を溶かし、その内部に貯蔵されている栄養素を抽出して植物に送る。反対に植物は光合成で生産された栄養素を菌類に与える。こうした協力関係により植物は徐々に生息範囲を広げていったと考えられている。

他にも菌類は生物の死骸を分解するという非常に重要な生物学的役割を担っている。要するに「菌類」がいなければ地球は円滑に回らないというわけだ。

つまり今回の発見は、9〜10億年前にも動物が存在していたことを示しており、これは世界の認識を塗り替えるものだ。10億年前など気の遠くなる過去だが、研究者は「こうした遠い過去は、私たちが考えていたよりもはるかに現代的だったのかもしれない」と語っている。

 

地球は思っていたよりずっと前から、菌類によって回されていたのだろうか。

キノコは気候を操っている? 菌類の持つふしぎな役割

reference: vicetheconversation / written & text by くらのすけ
最古の菌類の化石が発見 10億年前は思ったより「現代的」かも…