最速153キロ右腕・太田龍が都市対抗予選初先発 高校時代に燕・梅野、オリ・山本、阪神・浜地と九州BIG4形成

 多くの視線がマウンド上の男に向けられていた。社会人野球・JR東日本が23日、東京・府中市民球場で行われた第90回都市対抗野球大会東京都二次予選に出場。昨年の都市対抗野球ベスト4のセガサミーを10-3で破った。先発したのは今秋のドラフト1位候補でもある太田龍投手(れいめい)。190センチの身長から、最速153キロを投げる右腕で、この日が都市対抗予選初先発だった。

 ネット裏にはNPBのスカウトが多数集結し、投球を見つめていた。直球と変化球をうまく織り交ぜた太田だったが、5回までに2本塁打を浴びるなど、5回途中7安打3失点。セガサミー打線につかまってしまった。その後をリリーフした2番手の右腕・西田光汰投手が1安打投球。味方の大量援護も受けて、昨年敗れた相手に勝利を収めた。

「緊張しました。自分自身としてはもう少し投げたかったというのはあります。まだまだ自分のボールではなかったです。チームが勝てばいいので、次は1点でも少ない投球をして、自分の役割を全うしたいと思います」

 圧巻のピッチングとはいかなかった。本来の投球からは程遠くても、これまで多くの選手をNPBに送り込んだ実績のある堀井哲也監督は太田の投球をねぎらった。

「初戦と考えればよく投げたと思いますよ。これまではものすごく状態よかったですから。今日は緊張しているな、というのが見えました」

 名将にはお見通しだった。

 指揮官は試合当日の朝に先発投手へ登板を通達する。太田は言われる前から堀井監督曰く「挙動不審だった」。落ち着きがなく、なんだか顔も疲れているようにも見えた。監督が「お前、眠れたのか?」と心配して声をかけたほどだった。

 実際に太田は緊張していた。エースとしての自覚はあるため、この日先発する心構えはできていた。それでも、社会人の名門を背負って投げること、昨年負けた相手との初戦の重圧は計りしれなかった。

 堀井監督はそれも見越していた。

プロに進んだかつての好投手たちも歩んだ道 緊張と重圧を経験して真のエース

「(JR東日本OBオリックスの)田嶋も(ソフトバンクの)板東も通ってきた道。大変なんでしょうね。彼は柱になれる存在ですから。若い子なんで自信つけてほしいですね」

 交代時、指揮官は直接マウンドに行って「強力なセガサミー打線を3点までよく抑えた」と声をかけて太田をマウンドから下ろしていた。このまま投げさせていたら、どうなっていたか……というのも堀井監督には見えていたのかもしれない。自信を失ってほしくなかったから、ケアをする意味でもそのように伝えていた。

 田嶋や板東のように、太田はプロで戦える素材であることは間違いないと確信している。緊張と重圧を経験し、乗り越えてこそ、真のエースになるとを指揮官は期待している。今日の登板はその一歩を刻んだと言っていい。

 また、太田には刺激を受ける存在がいる。高校時代に九州“四天王”と呼ばれたヤクルト梅野雄吾(九州産業)、オリックス山本由伸(都城)、阪神・浜地真澄(福岡大大濠)といった自分以外の3人だ。太田は高校最後の夏に肩を痛めたため、プロ志望届を出さずに、投手として成長するため、JR東日本の門を叩いた。順調に段階を踏み、今秋のドラフト1位候補に挙がる。

「嫌でも(同級生)情報は入ってくるので意識はします。同年代頑張っているんで、頑張らないといけないとは思います」

 ライバルとは言わなかった。今、太田に見えているのはプロの世界ではなく、目の前の試合に勝ち、チームを都市対抗野球に導くこと。同級生たちと切磋琢磨するのは同じ舞台に入ってからでいい。太田の芯の強さがそこには感じられた。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki

都市対抗予選のセガサミー戦で先発したJR東日本・太田龍【写真:楢崎豊】