連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。フィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソンに向け、健康増進や体作りのアドバイスを送る。

 春に行われることの多い健康診断。しかし、日頃、不摂生な生活をしている自覚がある人こそ、少しでも数値を改善しようと1週間前から急にお酒を抜いたり食生活を改善したり、悪あがきをしがち。

 果たして、働く大人は健康診断とどう向き合えばいいのか。中野氏がトレーナーならではの目線で指南する。

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 健康診断が近づくと、急に運動を始めたり、お酒や食事の量を減らしたりする人は、意外と多いと聞きます。

 実は取材でも「健康診断でいい数値を出すにはどうすればいいか?」「1か月、1週間で出来ることはないか?」といった質問を受けることがあります。どうやら皆さん、健康診断の目的が、「今の体の状態を知る」ことから、「少しでもいい数値を出すこと」になってしまっているようです。

 健康診断の結果からわかるのは、生活習慣病という「病」やその兆候です。生活習慣病は心臓や血管に関わる疾患なので、重症になれば命にかかわります。嫌な数値を見たくないという気持ちもわかりますが、その場しのぎの対策で数値を良くすることは、何のプラスにもなりません。嫌な数値の裏には、もっと怖い病気が隠されているかもしれませんし、数値を良くすることで、発見の遅れにつながる可能性があります。

 本来、健康診断は、いい結果を出すためでなく、生活習慣を見直すきっかけを作り、病を予防するためにあります。1年のほとんどを不健康な生活を送り、1か月だけ生活を変えて少しだけ数値を一時的に良くしても、結局、待ち構えるのは生活習慣病。「数値を下げたいから何とかしたい」という相談は、テストカンニングするようなものであまり意味がありません。

 最近も、あるクライアントさんが血液検査によって、食生活を見直したことがありました。

不摂生を実感している人こそ“ありのまま”に健康診断を受けるべき

 彼女は、ちょうど検査の数か月前に、食生活をチェンジ。「健康にいいから」と、沢山の健康食品やサプリメント、アボカド、ビーツ、マンゴーといった野菜や果物を毎日、過剰に摂るようになりました。いずれも、良質の油や抗酸化成分、ビタミンが豊富で体にいいといわれる食材でしたが、その後の血液検査で、高カリウム血症という結果に。実はそれらの食品はカリウムの含有量が多く、腎臓に負担を掛けていたとわかりました。

 面白いことに、運動もやりすぎると、筋肉の破壊が過剰であることを示すCPK(クレアチンフォスフォキナーゼ、またはCK<クレアチンキナーゼ>)の値が上がるなど、数値が悪くなる場合もあります。運動も食もやりすぎれば、体に良かれと思ったことが、マイナスに働くこともあるのです。

 血液検査は人間ドックでもできます。例えばマラソン大会に向けて追い込みをかけている時期など、なかなか疲れが抜けない、調子が上がってこない、などの症状があると貧血になっている場合もあります。ですから、ここぞという時に血液検査を受けると、今の体の状態を数値から見られるので、トレーニング計画の参考にもなるのです。

 私自身も、血液検査の頃に「最近、運動量が少なく、食事量が多かったな」と思っていると、案の定、数値に悪い傾向が出てしまい反省することがあります。でも、そのことで却って身が引き締まり、仕事の仕方や運動量を見直すいい機会になっています。

「体重が増えたし、運動不足が気になる」「パンツウエストがきつくなったかも」「酒を飲む機会が増えたな」と感じている人こそ、普段通りの生活を送ったまま、健康診断を受けましょう。結果、嫌な数値が出てしまっても、積極的に生活を見直す発奮材料にしてくださいね。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライターサッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエットトレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。クルム伊達公子選手の現役復帰にも貢献した。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。主な著書に『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。

働く大人は健康診断とどう向き合えばいいのか