世界の舞台で勝つための鍵は…「守備時の追い方とどこで自分たちがボールを取るのか」

 INAC神戸レオネッサのDF鮫島彩は、2011年のドイツ大会、15年のカナダ大会に続き、女子ワールドカップに3大会連続で臨む。2大会連続出場だけでもすでに快挙だが、彼女はドイツカナダの両大会と、その間に挟まるロンドンオリンピックと合わせて、3つの世界大会でファイナルピッチに立っているのだ。

 高倉麻子監督が指揮を執る今回のチームでも、立ち上げ当初から現在まで、主力メンバーを務め、キャプテンのDF熊谷紗希(リヨン)とともに、チームの屋台骨を支える存在だ。「前回とはメンバーも、スタッフも変わっているので、もちろん(細かい部分ではいろいろと)違います。でも、今まで積み上げてきた部分も確実にあります」とは鮫島の言葉だ。10年近く同じ期間を過ごしてきた前回のチームに完成度では及ばずとも、準備段階での手ごたえがないわけではない。

 女子ワールドカップのメンバー23人に選ばれた選手たちは高倉監督の下、大会までの短期間で、チーム戦術を細部まで詰めなければいけない。鮫島が指摘するのは「守備時の追い方と、どこで自分たちがボールを取るのか」という部分だ。

 強靭な欧米の選手が蹴り込むクロスへの対応は、重要なテーマだ。相手のサイド攻撃に対し、鮫島は自らの優れたスピードと状況判断能力を活かして、同サイドであればクロスの出どころにプレッシャーをかけ、逆サイドから入るクロスのこぼれ球にも、いち早く対応してきた。それでも、各人がマッチアップする相手との局所的なスピードの違いを埋めるだけでは、守り切れるものではない。

「やはり、あれだけスピードがある選手たちに対して『1対1で、絶対に離さないように』と言われたら、それはたぶん違うと思う。ボールのあるところに2人、3人と人数をかけていけるのが、日本の強みだと思うので。その人数をどれだけ集中してかけられるかというところ。前線からの追い方によって、みんなが狙うべきところを一つに絞れる。絞れるからこそ、そこに人数をかけられる。前線からのボールの追い方というのが、一つ重要なポイントになってくるのかなと思います」

フランスはかつてプレーした地も大きな会場は未知…「芝の感触などは日本と全然違う」

 ゴールに近い場所での水際戦術でなく、解決策はその前の部分にあるということだ。そして、そうした課題への対策として、鮫島が期待しているのは、この国内合宿で予定されている、男子学生とのトレーニングだと言う。

「この間のドイツフランスとの練習試合もそうですけれど、スピードの速い相手とやるうえで、とても良い練習になると思います。そこで、自分たちがどれだけ質を上げてプレーができるのかという部分。今までの合宿でそれほど男子とやる機会がなかったので、そこは取り組んでいきたいなと思っています」

 過去には、アメリカからフランスへ渡り、モンペリエでプレー。クラブチームで戦った地へ、今度は代表チームの一員として乗り込んでいく。「フランスプレーしていたのは、だいぶ前のことですからね」と鮫島は笑う。

モンペリエは決勝に出たりするほど強いチームではなかったので、そんなに大きなスタジアムで試合をした記憶はありません」

 アルゼンチンとのグループリーグ初戦が行われるパルク・デ・プランスや、準決勝、決勝の舞台となるパルク・オリンピック・リヨンは、未体験ゾーンだ。それでもフランスで戦った経験は、しっかりと自分に還元されている。

「芝の感触などは日本と全然違う」

 日本では固定スパイクでできても、向こうは土の部分から持っていかれるから、ミックスでないと踏ん張れない。そうした一つひとつの違いを知っていることは、フランスで戦ううえで、見えない力になるだろう。

 昨夏のアジア大会では「本当は、アジアで勝つのは簡単なことではないけれど、日本の皆さんは『アジアなら勝って当たり前』と思われている。それならその期待に応えるしかない」と有言実行。女子アジアカップとの二冠を達成してみせた。

 フランスW杯でも、「なでしこなら、世界一に返り咲ける」と信じる者が多ければ多いほど、鮫島はその期待に応えるべく、最善の努力をしてくれるだろう。(西森 彰 / Akira Nishimori)

日本代表DF鮫島彩【写真:Getty Images】