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 人間の場合、母親が不安になると赤ちゃんは敏感にそれを察するとよく言われているように、人間間には、相手の感情が伝染する「感情伝染」が起こる。

 感情伝染とは、ある人の感情状態が他人のそれに影響を及ぼし、その後に他の人々への一連の影響が続くことを意味する。

 特に感情伝染は、負の感情の時に起こりやすいという。例えば1人が不機嫌になると群衆全体が不機嫌になるほどの影響を与えるというわけだ。

 今回、そのようなネガティブな感情伝染がカラスの間でも生じることが、オーストリアやアメリカ、スイスの研究機関と提携した研究チームによって明らかにされた。

 感情と社会的行動を調べるための「認知バイアステスト」が鳥類に使われたのは、この研究が初めてだそうだ。

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ワタリガラスに行った認知バイアステスト

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 今回研究者らは、8羽のワタリガラスをペアにして、カラスの好きなチーズが入った箱と何も入っていない空箱を用意し、カラスがどちらの箱を選ぶかを実験した。

 どの箱に何があるかをカラスに何度も認識させると、やがてカラスはチーズの入った箱と空の箱がそれぞれどれであるかを学んだ。その後、3番目の箱を提示してカラスの反応を見ることにした。

 これは3番目の箱の中には何か好きなものが入っているのか、もしくは空なのかを知ったカラスがどのように反応し行動するか、つまりカラスの悲観主義もしくは楽観主義のレベルを測定するための認知バイアステストの1つとして行われたものである。

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ネガティブな感情が別のカラスに伝染


 次に、ペアのカラスを実演側と観察側に分け、実験した。

 実演側となるカラスに、苦手とする生の人参が入った箱と好きなドッグフードが入った箱をそれぞれ与えてみたところ、ドッグフードを見たカラスは頭と体を動かせてポジティブな反応を見せた。

 ところが、人参を見たカラスは不機嫌そうになり、箱をなかなか開けず、他の場所を蹴ったり引っ掻いたりするネガティブな反応を見せた。

 その間、引き離されたペアの片方であるカラスたちは、相手の反応を見ることはできるが、どんな食べ物を与えられたのかを見ることまではできない。

 その後、観察側となっていたカラスが実演側になると、先ほどのカラスがネガティブな反応を示したように、箱を開けるまでにかなりの時間を要した。

 一方で、ポジティブな反応を示したカラスを見た時は、相手のカラスもすぐに箱を開けていたという。

 これにより研究者らは、仲間のカラスがネガティブに振舞うのを見て、その行為から相手のカラスもネガティブな感情的影響を受けていることに気付いた。その反応はポジティブなそれよりもはるかに大きかったようだ。

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Ig0rZh/iStock

ポジティブな感情よりもネガティブな感情の方がより伝染する


 この実験で、カラスも人間のようにネガティブな感情に共感できる能力を持っている可能性があることが判明した。

 オーストリアウィーン大学で比較心理学を研究しているジェシーエイドリアンス博士は、次のように話している。

感情は、私たちの行動の極めて重要な推進力ですが、それらが実際にどのように動物の脳に働きかけるのかということは、未だ明確はなっていません。

何が動物の行動を動機づけるのかということを理解するには、私たち研究者は動物の感情をより深く掘り下げる必要があるでしょう。 


 この研究結果は、5月20日発行の『Proceedings of the National Academy of Sciences(国立科学アカデミー論文集)』で報告された。

References:Bad moods could be contagious among ravens | Science News/ written by Scarlet / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52274699.html
 

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