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こんな植物を見たことがないだろうか。

「ああ、近所の空き地にいっぱい生えてるやつ」 そんなふうに思った人は多いだろう。

この植物は「イタカアワダチソウ」といって、すっかり日本の風景に溶け込んいるが、実は北アメリカ原産の侵略的外来種だ。

ススキなどの日本の在来種は彼らに脅かされる存在だ。

空き地や河川敷などが、今までススキ野原だったのに、久しぶりに散歩に出たらセイタカアワダチソウばかりになっていた。そんな光景を見かけることも多いのではないだろうか。

なんで彼らはこんなにも強力に増える事ができるのか?

花粉症の原因とか侵略的外来種だとか、何かと悪いイメージで見られる彼らだが、実は知ると意外と可愛いやつ…いや、むしろドジっ子と思える意外な素顔がある。

そんな散歩していてよく見かけるけど、意外と知らない植物「セイタカアワダチソウ」について解説しよう。

花粉症の原因という濡れ衣の被害者

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イタカアワダチソウは、見た目がブタクサに似ているために、「すっごい花粉飛ばしそう」と思う人が多いようだ。

しかし彼らは花粉を飛ばさない。虫を媒介にして受粉を行う虫媒花と呼ばれる種類の植物だ。

風に乗せて花粉をばらまく奴らは風媒花という。セイタカアワダチソウはそんなバラマキ犯ではないのだ。

だから花粉症の人たちは、あらぬ誤解で彼らに敵意を向けないようにしてあげよう。

敵は毒殺だ! 恐怖のアレロパシー効果

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植物の中には、他の植物の成長を阻害するために毒を放出する能力者がいる。これをアレロパシー効果という。

植物のくせにそんなえげつない真似をするの? と驚いてしまうが、セイタカアワダチソウもそんなアレロパシーを有する植物だ。

彼らは根から「cis-DME」という化学物質を放出する。これがイネやススキの成長を阻害し、セイタカアワダチソウの勢力圏を拡大する一因となっているのだ。

実はドジっ子?

2016-10-15 Solidago canadensis,IN Sasayama,Hyogo セイタカアワダチソウ(篠山市) DSCF1299

ところが、この「cis-DME」はイタカアワダチソウにとっても有害なのだ。この化学物質の土中濃度が上がっていくと、セイタカアワダチソウ自身に対しても強い発芽障害を起こしてしまう。

馬鹿じゃないの? と思ってしまうが植物のすることなので仕方がない。

結果、一時期盛大に繁殖するのだが、しばらくすると数を減らして、ススキに再び勢力を巻き返されてしまう

久しぶりに散歩に出たらススキ野だった空き地がセイタカアワダチソウに取って代わられていた。だけど、また久しぶりに散歩したら元のススキ野に戻っていた。

何を言っているのかわからねえだろうが、そんなことも実は多いのだ。

ほのぼのと眺めていた風景の中で、実はそんな熾烈な植物たちの勢力争いが繰り広げられていたりする。

もし散歩中に彼らを眺めることがあったら、今回の話を思い出して植物の勢力図がどのように変化していくか、観察してみてほしい。

そして花粉症の原因じゃないかと疑いの目を向けられたり、侵略的外来種と言われつつ最終的に自分の毒でススキに負けてしまう、そんな間抜けな彼らを見かけたら温かい目で見てあげてほしい。

岩を溶かして成長する植物が発見される

reference:nukada,jstage/written by KAIN
空き地によく生えているアイツは毒を操る能力者だった