アニメマンガ作品における定番ジャンルでもある「妖怪」のことを、ちょっとだけアカデミックに解説する「アニメ妖怪よもやま話」。アニメ雑誌「アニメディア」で連載していた本コーナーが「アニメマンガ妖怪よもやま話」としてWEBで復活。今回は、現在放送中の『ワンパンマン』に登場する「ガロウ」にも当てはまる‟怪人”という存在について奈良県在住の妖怪文化研究家・木下昌美が語る。
  

  どんな敵でも「ワンパンチ」で倒してしまうヒーローサイタマが活躍する『ワンパンマン』のアニメが(2019年5月現在)放送されています。あまりに強すぎるため、やりがいがなく無気力な日々を送るサイタマの姿にクスリとせずにはいられません。
 
 作中ではヒーローに倒される“怪人”がわんさか登場します。怪人がどのようにして生まれるのかは明らかではありませんが、多くが生まれたときから怪人であるのでしょう。しかし、なかには人間が怪人化してしまうケースもあるようです。
  
 ヒーローばかりが勝つ世の中に不満を持ち、ヒーローに戦いをふっかけてまわる「ガロウ」がそうです。もとは人間である彼が、ただ単に自ら怪人を名乗っているにすぎないのか、それとも本当に身も心も怪人と化したのか……そのあたりは現時点のアニメでははっきりしませんが、作中では怪人という扱いを受けています。
  
 人がバケモノになるパターンは、古くから日本でも見られます。たとえば「橋姫」が、そのひとりです。軍記物語『平家物語』の異本のひとつである『源平盛衰記』には、嫉妬のあまり、自ら望んで「鬼」と化す橋姫が描かれています。もとは人間だった橋姫。妬ましい女を殺すために貴船の大明神のお告げどおり、髪を5つに分けて角にして顔には朱をさし、体には丹を塗って全身を赤くするなどして宇治川に浸り、鬼になるのです。結果的にねたんでいた女やその周囲の人を殺すことに成功します。
 
 ガロウは世の中に対する不満が、橋姫の場合は女に対する嫉妬心がパワーになり、人ではない何かになってしまいました。橋姫は話によっては、神として扱われることもあります。ガロウは今後、戦いのなかで、どのように変化していくのでしょうか。生粋の悪人というわけではないように見受けられますので、どうか彼に明るく楽しい未来が待っていればいいなと思います。

 

解説:木下昌美
【きのした・まさみ】妖怪文化研究家。福岡県出身、奈良県在住。子どものころ『まんが日本昔ばなし』に熱中して、水木しげるマンガのんのんばあとオレ』を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。現在、奈良県内のお化け譚を蒐集、記録を進めている。大和政経通信社より『奈良妖怪新聞』発行中。
 
●挿絵/幸餅きなこ