高度成長期やバブル経済グローバル化を経験した日本経済。市場は既に成熟し、新しいビジネスが生まれにくい土壌と見る目もある。そんな平成不況の真っ只中では、大企業が目を向けないニッチなビジネスが注目されていた。そんな規模だけが優位にならないビジネスは、今後も創設されていくのだろうか。「教えて!goo」でも、「規模が優位にならない商売って何がありますか?」という質問が寄せられていた。

そこで小規模ビジネスの現状について、「比企起業塾」の運営や起業支援を行う、関根雅泰さんに話を聞いた。

■規模が優位にならないビジネスとは?

ビジネスでは規模が大きいほど優位になる傾向がある。規模が優位にならないビジネスとはどのようなものだろう。

「規模が優位にならないとは、拡大しない道を選ぶビジネスになります。個人事業主や小規模企業レベルで行っている小さなビジネスで経営者個人にお客様がついているのが特徴です。私達が運営する『比企起業塾』では、そのような小さなビジネスを行う事業者をミニ起業家と呼び、『職人型』、『先生型』、『場主型』の3つに分けています」(関根さん)

ミニ起業家の3つの分類にはどのような違いがあるのか聞いてみた。

「職人型は、ミニ起業家自身の『ワザ』を使って稼ぐビジネスです。例えば、整体師の栗原直道さんは、東京都シンガポールで月1回の頻度で整体サービスを提供しています。デザイナーの久保田ナオさんは、グラフィックレコーディングという技術を使い会議や研修内容を記録する仕事をしています。建具職人の袴田さん夫婦は、お客様宅に足を運び、飼い猫に破られない網戸の張替等を行っています。これらは、ミニ起業家自身が身体を運ばないと提供できないビジネスであるため拡大しにくいのです」(関根さん)

なるほど、自らの技術を使ってビジネスをする場合は、規模の大小は関係ないといえるのだろう。

「先生型は、『ノウハウ』を人に教えることで稼ぐビジネスです。例えば、元俳優の林博之さんは、役者時代の経験を活かした研修を東京の企業を対象に販売しています。現役看護師の工藤瞳さんは、健康意識の高いご年配の方々にアロマを使った健康管理の方法をセミナーで指導しています。これも、ミニ起業家自身が登壇しなければならないので拡大は難しくなります」(関根さん)

講師としてビジネスをする場合も、規模の大小ではなく、その人自身の力量で稼げるかどうかが決まってくるのだ。

「場主型は、ミニ起業家が持つ『場』にお客様を招くタイプのビジネスです。例えば、自宅の庭でキャンプ民泊を行っている青木さん夫婦は、アウトドア経験が少ない若いカップルを対象にアウトドアの指導をしています。自分でリフォームした古民家で民泊を行っている福島だいすけさんは、欧米豪からのインバウンド客を対象に山歩きや田舎での過ごし方等、ゲストの好みに合わせてホストとして活動しています。アーティストの菅沼朋香さんは、昭和レトロな『ニュー喫茶幻』のスタイルに共感するお客様のみをお店に招くというビジネスを行っています。これらも、その場にミニ起業家がいないと成り立たないので拡大がしにくいのです」(関根さん)

経営者個人の技術等に依拠してビジネスを行う場合は、小さい企業でも十分に勝負していけるようだ。

■規模が優位にならないビジネスで大切なことは?

そんな小規模ビジネスで成功するコツを聞いた。

「規模が優位にならないビジネスでは、小さく始め、大きくせず、長く続けることを重視します。その為、大勢のお客様を創るというよりも、自分と合うコアなお客様との長期的な関係を大事にします」(関根さん)

短期間で馬力をかけて広くマーケティングを行うのではなく、ニッチでコアなマッチングを重視するのが長期の関係を生むのだ。

「更に、ランチェスター弱者の戦略に基づき、商品、客層、地域の絞り込みを行います。拡大しない分、狭く、濃く、深い関係をお客様と築いていくのです。ミニ起業家本人がいないと回らないビジネスだからこそ、規模が優位にならない状態を作れるのです。その分、拡大できない、代替できないというデメリットもありますが、『~さんでないとダメ』というお客様の支持が得られれば高単価でも買って頂けるというメリットがあるのです」(関根さん)

ランチェスター戦略とは、各市場の地位別に戦略を持ち、ビジネスを成功へ導く手法だ。属人的にならないようにすることでリスクヘッジしている大規模ビジネスとは対照的に、小規模ビジネスは、属人的かつ専門性を追求するところに価値を生むことを目指しているのだろう。

これから小規模ビジネスを目指したい人は、今回の記事の中にヒントをみつけられただろうか。時代が変わったばかりの今は、新しいビジネスを始めるによい機会なのかもしれない。

●専門家プロフィール:関根雅泰
1972年埼玉県生まれ。1995年、州立南ミシシッピー大学卒。2005年、企業研修会社(株)ラーンウェルを設立。一部上場企業の人材育成を支援。2013年、東京大学大学院 学際情報学府 修士号取得。2016年、地域活性会社ときがわカンパニー(同)を設立。地域でのミニ起業を支援。「比企起業塾」塾長を務める。4児の父。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

規模が優位にならないビジネス…どんなのがある?