【元記事をASCII.jpで読む】

 3月21日頃から、「Googleマップの品質が落ちた」という指摘が相次いだ。道の形が違う、バス停がない、あるはずのない湖が出現した……。

 地図品質の劣化の原因と指摘されたのは、3月6日に公開されていたGoogle Japan 公式ブログの以下の記事だ。

 地図データが、グーグルによって作られたデータベースにしたもの」へと変わったことが、大きな混乱の元になっている。

 では、その時なにが起こっていたのか? グーグルはなぜデータの変更を決めたのか? グーグル GEO 関連製品担当 バイスプレジデントデイン・グラスゴー氏を直撃した。

 レポートは2回に分け、「なぜGoogleマップの地図は変えなければいけなかったのか」「Googleマップの変化でなにが起きるのか」をそれぞれ解説していきたい。

 今回は前半、「なにが起こったか」を解説していく。

数ヵ月かかっていた「修正プロセス」を
「数時間から24時間」にするのが、新マップの目的

 「新しいマップの導入については、ローカル(日本)のチームと共に、できる限りいいものを、考えながら進めました。しかし、いくつかの部分で想定外の問題があったことは事実。品質については、常に重視しています。継続的にフィードバックを受けて、改善を続けています」と、グラスゴー氏は語った。

 シンプルに多くの人々が疑問に思うのは、「なぜマップデータを変えなければいけなかったのか」ということだ。実は、彼の次のコメントに、答えの一端が含まれている。

 「できるだけ早い修正を心がけています。マップが公開されて24時間で43の高速道路を追加し、(通行できないはずの)私道をミュートし、地形の修正も多数、実施しました」(グラスゴー氏)

 「間違いなのだから直すのが当たり前だろう」と、そう思うかもしれない。だが一方で、「24時間以内に素早く修正を繰り返すという行為が可能になった」ということ自体が、新しいマップデータへの移行の大きな目的だった。

 「従来の日本向けマップでは、変更を加えるために数ヵ月単位の時間が必要でした。しかし、新しいマップであれば、フィードバックを受けてから数時間、数日単位で変更できます。たとえばこんなフィードバックがありました。(グラスゴー氏)

『新しいバイパスが3月10日にできましたが、地図にありません』

 このフィードバック3月20日に受けたあと、地図には3月22日に反映されました。素早く修正できることで、結果的に、正確なマップをみなさんに届けられるようになったのです」(グラスゴー氏)

日本にようやくやってきた「Ground Truthプロジェクト

 現在グーグルは、多数の国で「Ground Truth」と呼ぶプロジェクトを進めている。Ground Truthは、地図や地点情報を提供する協力会社のデータだけでなく、グーグルが持つ空撮画像・衛星写真・ストリートビューデータなどを補足情報として使い、現実世界に近い地図を作ることを目的としている。「素早く短時間で更新できる」という要素は、Ground Truthの特徴のひとつである。

 計画自体は2008年スタートし、2014年には導入国が50を超えた。だが、日本には導入されていなかった。今回の変更は、日本にGround Truthを導入するのが目的だった。

 Ground Truthの導入により、地図データの活用の幅はより広がる。地形や道路は、「全国」に視点を広げると、きわめて頻繁に変更されている。更新の迅速化は、正しい情報を提供するために必要な要素でもある。そして、ARナビや「乗り換え案内」を含んだナビゲーションなどのサービスを高度化するにも、Ground Truthベースとして開発された技術が使われている。

 「他の地域ではオフラインマップが提供されていましたが、日本ではまだでした。しかし、新しいマップに切り換えたことで、オフラインマップもようやく提供が可能になりました」、そうグラスゴー氏は語る。

 この点については、技術的にGround Truthが必要、という話というよりは、地図のライセンス提供に関する条件の問題だった、と筆者は認識している。まあどちらにしろ、新マップによって、オフラインマップを含めた「他国にはあった機能」がようやく提供になった、というのは事実だ。

 だが結果として、地図の品質が落ちてしまったことは、ユーザーの目線で見れば本末転倒に思える。グーグルには改善をお願いしたいし、事実、彼らも対応中だ。「指摘の多い道の形についての違和感なども認識している」(グラスゴー氏)とはいうものの、スタートの時点で、もう少し慎重な配慮が必要だったのではないか。

 今回の地図変更について、ネット界隈では「切替は自動運転のため」とする説が多い。しかし、確認したところ正式にグーグル側から「その意図は一切ない」と、否定のコメントを得られた。実際、自動運転に必要な地図とGoogleマップで「人が見る地図」は大きく要素が違うもので、筆者も「それはあり得ない」と考えていた。その点については、裏付けがとれた格好である。

修正希望は「フィードバック」で!

 ではどうすればいいのか? グラスゴー氏は「気がついたら、ぜひフィードバックを送って欲しい」と話す。

 グーグルSNSをはじめとした多くの情報を見ており、そうした場所で「どうも地図が正しくない」とつぶやかれている情報も、改善には活かしている。ただ、単にSNSでつぶやかれた情報は、内容の正しさの判断が難しい面がある。

 そのため、正式なルートを通した「フィードバック」の方を優先に作業が行われている。だから「間違っている」と思った場合には、以下のリンクに説明されている手順で「フィードバックをするのが正しい」という。

 なお、「Googleマップでは、利用者が移動したデータを使っているので、地図の正確さに関するフィードバックは、(利用者が移動することで)自動的に行なわれる」という言説もあるが、「これは正しくない」グーグル側は説明している。個人の移動履歴はあくまで「個人のデータ」として蓄積されているのであり、マップの改善のためのフィードバックデータとして使っているわけではない、と彼らは説明する。

 そのためもあって「まずはフィードバックを」と、グーグルは働きかけているのだ。すでに説明されている通り、Ground Truthの効果として「フィードバックは迅速に反映できる」ようになっているのが、ある意味で不幸中の幸いである。

 では、「反映の高速化」や「オフラインマップ」など以外に、これからの地図としてのGoogleマップの進化はどうなるのか? その点は、次回のレポートで解説したい。


Googleマップの劣化原因「地図」になにが起こったのか?