SING LIKE TALKINGのニューシングル「Spiral」が5月29日(水)に発売される。
表題曲「Spiral」は、玉木宏が主演を務めるドラマBiz「スパイラル~町工場の奇跡~」(毎週月曜夜10:00-10:54ほか、テレビ東京系ほか)の主題歌で、SING LIKE TALKINGのメンバーがドラマの原作を読み制作に取り組んだ、書き下ろしの楽曲だ。
今回は、SING LIKE TALKINGのボーカル・佐藤竹善にドラマの現場を訪れたときのエピソードや楽曲について話を聞いた。
――「スパイラル~町工場の奇跡~」の原作をお読みになっていかがでしたか。
みんなで頑張って乗り越えていくという話が大好きなので、面白かったです!連続テレビ小説「マッサン」(2014年、NHK総合)を全話見ていたのですが、今回「スパイラルー」の脚本を担当されるのが「マッサン」と同じ脚本家の方なので、それもすごく楽しみにしていました。
――現場にも見学に行かれたそうですが、いかがでしたか。
初めて撮影現場に行きましたが、映らないところまで完璧にセットが作られていました。後ろはハリボテなのかなと思っていたら全然違うんです!プロデューサーの方ともお話ししましたが、今回はとくにセットにもこだわっているそうです。壁の汚れやカレンダーの汚れも「付けたんですか?」と聞いたら、「これはコーヒーを使って汚れを再現するんですよ」とおっしゃっていました。
また、監督の指示によって同じせりふがどんどん変化していき、リアリティーが増していくのは、音楽の作り方に似ているなと思って見ていました。
■ 脇役の人が脇としての“主役”じゃないといけない
――音楽の場合ですと、メンバーと音を合わせていくうちにどんどん演奏が変わっていくということでしょうか。
そうですね。「自分の中にどういうイメージがあるのか」ということを一緒に演奏してくれる人たちに伝えないと、みんなそれぞれの価値観で演奏してしまいます。それを統一して1つのアンサンブルにしていくというのは、誰が船頭なのかが明確じゃないと散漫になっていきます。それぞれの方法論は全て正しいので、その正しさを自分が求めていくものにどうやって集約するのかということになります。
ドラマの現場では、監督さんがそれに当たるのかな。そこに向かって役者さんがいろいろな引き出しを引っ張り出してお芝居をするというのは、ミュージシャンがスタジオで音楽を作っていくのと同じだと思います。
――演奏するときは、メロディーパートを引き立てるために他のパートは抑えたりすると思いますが、ドラマの場合だと、そのシーンでの自分の役割を理解し、誰がこのシーンの“主役”なのかということを頭に入れておく必要がありそうですね。
ただ、脇役の人が“脇”になってしまったら、つまらないものになってしまいます。脇役の人が脇としての“主役”じゃないといけないわけで、それはアンサンブルを作るときも同じです。お客様はまず歌を聴いていますから、歌にリアリティーが出るには演奏者がそうであることがものすごく大事になってくるわけです。
――歌のリアリティーとはどのようなものなのでしょうか。
例えば「Spiral」の歌詞の中に「希望」「正義」という言葉が入っていますが、「希望」や「正義」ってみんなが小さいころから習うことですよね。でもそれがいくつになっても大切なんだということを伝えられる表現がなくてはいけない。その言葉自体が輝くために、前後の文脈や、メロディーやボーカルとどういうふうに一体になるのかで「希望」という言葉が届きます。それが歌のリアリティーだと思います。
■ 10年経ったときもファンの心に残っているように
――詞はどのように作っていかれますか。
(メンバーの藤田)千章は、あまり詞のことは語らないので、心の中のことは分かりませんが、昔から時折言うのは、「答えを出さない」ということ。千人いたら千種類の答えを聞いた人それぞれが見つけてくれるよう、歌詞の中で限定した表現をしないというのを心掛けているようです。
僕から、どういう方向にしたいかという話は、細かく文章で書くときもあれば、一言で終わる場合もあります。
――今回はいかがでしたか。
今回は、「全部日本語で書いてくれ」とだけ伝えました。音やメロディーに言葉が埋没して、なんとなくかっこよく響いてしまう感じにはしたくなかったので、日本語を良いグルーブに乗せながら、しっかりとメッセージを伝えていくことを大切にしました。言葉が流れていく楽しさの音楽もあるのですが、今回の曲はそうではない。それから、今回はプロデューサーさんの要望もありました。
――どのような要望だったのでしょうか。
「希望」をテーマに書いてほしいと言われました。
――「希望」と一言で言っても、いろいろな表現の仕方がありますよね。
原作を読んでいましたので、原作の中でどのように人は闘って、どのように挫折し、時にはどのように崩れてくのか。何かを追いかけ越えていくという冷酷なくらいに厳しいストーリーの中で、たどり着くのが「希望」というシンプルな言葉。(原作者の)真山仁さんはそれを「スパイラル」と表現したのかなと思います。
「スパイラル」という言葉はネガティブな印象で使われることも多いですが、小説が最後に「希望」にたどり着くことを、真山さんはなぜ「スパイラル」という言葉に当てたのか。それを僕らが一生懸命考えて歌にするということで、あえて同じ「Spiral」というタイトルにしました。
また、「Spiral」という楽曲として10年経ったときもファンの心に残っているように…という思いで、この曲を「Spiral」というタイトルにしても、ドラマとは独立して伝わっているようにとも考えました。
■ 経験や思考の積み重ねが大事
――「スパイラル~町工場の奇跡~」には「あきらめない限り、希望はある」というテーマが込められていますが、ご自身にもそのような経験はありますか。
それでなんとかやってきたようなものです。プロの世界なので、その時代その時代を越えて行かなければ次が作れません。やっぱりお金も絡んでくるお仕事なので。その上で、自分たちの理想も曲げずに実現していかなければいけない。でもそれが上手く運ばないときもたくさんあります。そこで諦めないでやっているうちに、何か見えてきます。ずっと考えているよりまず動いた方がいいというのは、経験を通してすごく感じています。
――失敗しながらもそこからヒントが見えてくるということでしょうか。
考え過ぎて「よし、これならいけそうだ」とやってみても、上手くいくことってあんまりないんじゃないかと思うんです。動きながら考えることで、どんどん微調整されて良い結果に向かっていく。
「諦めない」「希望」と言っても、10歳の子が捉えるのと70歳の人が捉えるのでは全然違います。言葉にどこまで意味合いを持たせることができるのかというのは、経験や思索の積み重ねが大事なんだという事を、歳を重ねるほど実感しています。(ザテレビジョン)
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