戸松遥が歌う、TVアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』の主題歌「DELUXE DELUXE HAPPY」(原作コミック第6巻の特装版にコミックCDとして付属)。名古屋を舞台に名古屋あるあるを描いた作品で、自身も八十亀最中役で出演している戸松は、この曲をどんなふうに歌ったのか。愛知県出身だからこそわかる驚きが盛りだくさんだったという歌詞や、制作について聞いた。


愛知代表に選ばれた気分だった八十亀ちゃん役

――まず、作品について聞かせてください。八十亀ちゃん役が決まったときの感想はどうでしたか?

 名古屋では書店の店頭の一番前に並べてあるくらいの人気作だったので、作品のことは以前から知っていました。ですから、八十亀ちゃん役のオファーをいただいたときは、本当にうれしかったです。愛知代表に選ばれたみたいな気持ちでした。

――原作は、愛知出身の戸松さんからすると「あるある」ばかりでしたか?

 共感ばかりでしたね。「わかる、わかる」の連続で、原作の安藤正基先生に、「この作品を書いてくださって、ありがとうございます!」と感謝しました。コミックスをほかの撮影現場などに置いておくと、スタッフのみなさんが面白がって読んでくださるんですね。それで名古屋について誤解していたことを知ったり、理解を深めてもらえたりするので、愛知県民としてはありがたさしかなかったです。



――演じられている八十亀ちゃんの魅力は?

にゃー」とか「みゃー」という言葉をよく使うので、小動物っぽくてすごくかわいいなと思います。ビジュアル的にもネコのようですし「シャー!」って相手を威嚇しているような姿もキュートですね。

――演じる際はどんなことを意識していますか?

 まず動物っぽい愛くるしさを出せるように。これまで小動物系の役は演じたことがなかったのですが、主人公の陣くんが彼女のことを「かわいい」と言ってくれるので、そのかわいさは意識しました。あとは方言をいかにかわいく言うか、です。名古屋弁って、一歩間違えるとおばちゃんがしゃべっているみたいになるんです。ですから、名古屋弁を知らない方が聞いたときにもかわいいと思ってもらえるように、でもネイティブさも残す、というバランスにこだわりました。

――八十亀ちゃんはかなりコテコテの名古屋弁を使いますよね。

 選ばれたという誇りがありましたから、ふだんは封印している名古屋弁を徹底的に出していこうと思いました。ただ、職業柄、なまりというのは出てはいけないものなのと、ふだん方言が出てしまうと、戻すのに時間がかかるので、封印を解いてしまったことで、名古屋弁でしか話せなくなったらどうしようかという不安もありました。でも、半端にやって、愛知の方が観たときに「違う」と思われたらダメだと思って、勝手にプレッシャーを感じながらアフレコに臨みました。

――戸松さんの世代だと、どのくらい方言を話すものなのですか? 

 祖父母が「やっとかめ」(久しぶり)を使う世代で、両親もかなり使うほうですね。私は、そこまでではなかったかな。どちらかというと、自分では標準語を話しているつもりなのに、イントネーションがなまっているタイプでした(笑)。ただ、曲のタイトルにもなっている「でら」(すごく)はよく使っていました。

――ということは、八十亀ちゃんほどはなまっていない?

 そうですね。私からすると、八十亀ちゃんは、祖父母くらいの話し方をする感覚です。でも、なじみはあったので、話すことは苦ではなかったです。私くらいの世代だと、1話にあった「ちんちんだがね」(熱いね)くらいは使うんじゃないかな。逆に「だぎゃ」とかは言わないんですよ。

言葉遊びが巧みに盛り込まれた歌詞にビックリ

――主題歌の「DELUXE DELUXE HAPPY」を歌うことが決まったのは、役が決まったあとだったんですね。

 そうなんです。主題歌があるとは聞いていて、せっかくなら愛知に縁のある方に歌っていただきたいなと思っていたんです。ですから、自分が歌わせていただけると決まったときは、本当にありがたいなと思いました。タイアップがつくときは、その作品のどんなところにそった歌詞がくるのか、いつも楽しみにしているんですね。『八十亀ちゃん』であれば、間違いなく名古屋が強調されるだろうと思っていたので、まず、歌詞が届くのをワクワクして待っていました。

――作詞は本作の原作者・安藤先生と、担当編集のアダチさんによる共作です。

 最初にTVサイズ尺の音と歌詞をいただいて、その後フル尺のレコーディングをしたのですが、まずタイトルを見たときは、パーティーソングかと思いました。でもこう書いて「デラデラハッピー」と読むんだと気づいたときには、いい意味でヤバいなと。名古屋の血がふつふつしてくる感覚を覚えましたね。その後、TVサイズの歌詞を見たのですが、名古屋の要素が詰め込まれまくっていて、先生とアダチさんは本当に天才だなと思いました。ご当地出身の方が見たら、絶対にわかるし、感激するポイントが押さえられているんですよ。その後、フル尺の歌詞をいただいて、あまりにも感激しすぎて大笑いしました(笑)。最初から最後まで、油断できないくらい名古屋の要素が詰まっているので、歌っていても本当に幸せでした。個人的には、名古屋のご当地ソングにしてもいいくらいだし、たくさんの人に聞いてもらいたいです。

――歌詞を見て、とくにツボに入ったポイントはどこですか?

 ストレートに場所や地名を挙げているのではなく、さりげなく情景描写で示しているところにときめきますね。たとえば、「時計の下」というワードが出てくるのですが、名古屋駅の待ち合わせの名所に「金時計」というのがあるんですね。というか、むしろそこしか待ち合わせ場所がないんですけど(笑)名古屋の人が「時計の下」といえばそこのことなので、それを「金時計」と言わずに「時計の下」と言っているところはさすがでした。それから「ひつまぶし」や「エビフライ」「ういろう」「手羽先」という名古屋名物が、まったく違うワードで盛り込まれていることにビックリしました。実際に歌詞を見たときと、曲を聴いたときとで、言葉の情報量が全然違うんです。ですから、何回聴いてもすごく楽しめます。

――たしかに「ひつまぶし」や「エビフライ」は歌詞カードでは気づきませんよね。

 そうなんです! 歌詞を見てから聴いても楽しいし、曲を聴いてから歌詞カードを見るのも面白い。一度で二度おいしい曲になったと思います。

――でも、曲調はすごくおしゃれですし、戸松さんのこれまで歌ってきたソロ曲のなかに入れても何ら違和感がないですよね。

 コテコテすぎる曲が来ると、戸松のソロというよりは、キャラクターソングみたいになってしまうかなとも思ったんですね。でも、すごく素敵な曲で、まさにソロとして成り立つ曲になっていたので、本当にありがたかったです。作詞はもちろん、たむらぱんさん(田村歩美)のポップキュートな曲、古川貴浩さんの見事な編曲もあって、絶妙のバランスになったなと。この曲ならライブセットリストに入っていても全然、違和感がない、奇跡みたいな曲になりました。

さらっと聴いてもらえるような歌い方に

――レコーディングでは、言葉遊びの部分はどう歌おうと思いましたか?

ひつまぶし」「エビフライ」系のワードの部分は、どう歌ったら伝わるのかということをすごく意識しました。言葉の発し方についてレコーディングで考えたのはこれが初めてでしたね。そういう意味でも、今までとはちょっと違ったレコーディングになりました。曲も歌詞も楽しいから、普通に歌っていても楽しいんですが、サーフィンみたいに聴き始めたらサーッと最後までいけるような、そんなナチュラルさも意識しました。あんまり力を入れて「こう歌っています!」と出してしまうと、聴く側もエネルギーがいりそうだなと思ったので、さらっと聞き流して、ふと「ういろう」とかのワードが耳に留まればいいなと。この曲のレコーディングは、デビューのときから担当してくれているディレクターの方が録ってくれたのですが、今まで見たことがないくらいに楽しそうで(笑)レコーディング中も「こんなに楽しいのは久々だ」とおっしゃっていたので、まさに“デラデラハッピー”な気分になれたレコーディングでした。

――レコーディング中にディレクションもほぼなかった?

 なかったですね。多少、もっと遊んでいいとか、しゃべっている感じでとか言われましたけど、そのくらいでした。私がエネルギーを使いきって、ガス欠を起こす前に録りたいと思ったのかもしれません(笑)

――安藤先生やアダチさんからは、何か感想がありましたか?

 安藤先生から「戸松さんが歌うと、ちゃんと戸松さんの歌になりますね」ってすごく褒めていただきました。仮歌は先生のお知り合いの愛知にいらっしゃる方が歌ってくださっていたので、名古屋ニュアンスがすごく伝わってきて、とてもありがたかったです。

――ジャケットも、とても‟名古屋”ですね。シャチホコもいますし。

 ふだんのアーティスト活動でこの髪飾りを付けることは絶対できないですよね(笑)。今回の企画でしかできないことをビジュアル面でもやらせていただいたので、たくさんの方に見ていただきたいです。ちなみに、ビジュアルはあえてメイクもヘアスタイルも衣装も普通にしていただいて、しれっと“やつら”がいるのがポイントです(笑)。特典として付いてくる名古屋ステッカーは、エビフライのイヤリングを付けたりして、ちょっとおふざけな感じにもなっているのでチェックしてみてください。そして、ゲットした方は、ぜひ自分のパソコンなどに貼ってください。

――撮影はどうでしたか?

 楽しかったです! ちなみに注目のポイントは、しゃちほこの向きです。八十亀ちゃんは外向きに付けているのですが、名古屋城は内向きなんですね。それでいろいろ考えて、「自分を名古屋城にたとえると、やっぱり内向きかな」というところに落ち着きました。上に付けすぎるとツノみたいになり、横過ぎると宇宙人のようになってしまうこともあり、バランスを大人たちが真剣に考えている姿は、とてもシュールでした(笑)

――コミックCDという形態のリリースも、新たな試みですね。

 この曲も含めて『八十亀ちゃんかんさつにっき』の第6巻になっているような雰囲気で、本当にありがたいです。自分が声優であることはもちろん、愛知に生まれていなければ、こういったご縁はなかったと思うので、愛知に生まれたことに大感謝ですね。

――ところで名古屋といえば「名古屋飛ばし」(コンサートイベントツアーで、名古屋では開催されないこと)もありますよね。

 ありますね~。でも、私は愛知出身ですから、ツアー名古屋を飛ばしたことはありません! 飛ばしません!

――熱いメッセージありがとうございます! では最後に、読者へメッセージをお願いします。

 この作品に出演して、主題歌を歌わせていただいたことをきっかけに、名古屋を盛り上げていけたらいいなと思っています。名古屋在住の方は「あるある」がたくさん詰まっていますので、まずは歌詞をフルで見ていただきたいです。そして名古屋在住ではない方は、これをきっかけに名古屋に興味を持ってもらえたらうれしいです。おいしいものもたくさんありますし、けっこう便利な街なので、すぐに行けますよ。旅行がてら、いかがですか? ぜひ「DELUXE DELUXE HAPPY」を聴きながら、遊びに来てください!

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

※画像ギャラリーはこちら(https://cho-animedia.jp/anime/94543/)
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PROFILE
戸松遥【とまつ・はるか2月4日生まれ。愛知県出身。ミュージックレイン所属。2008年シングル「naissance」でアーティストデビュー。これまでにシングル19枚、アルバム4枚、ベストアルバム2枚をリリース。声優としての主な出演作は、『ソードアート・オンラインシリーズ アスナ役など。7月からスタートする『女子高生の無駄づかい』で菊池茜役、『魔王様、リトライ!』でキラー・クイーン役として出演する。

リリース情報
『DELUXE DELUXE HAPPY
REXコミックス八十亀ちゃんかんさつにっき 6巻 特装版』にコミックCDとして付録。
一迅社より発売中。
2,000円(税別)
※同日には、各種配信サイトで配信予定

イベント情報
『八十亀ちゃんかんさつにっき』6巻特装版 同梱コミックCD発売記念イベント
7月20日(土)愛知県アニメイト名古屋(第三太閤ビル)、AKIHABARAゲーマーズ本店にてトークミニライブを開催。応募方法などの詳細は、公式サイトにて。

戸松遥公式サイト
https://www.tomatsuharuka.com/