間もなくG20が日本で開かれ、世界を動かす首脳たちがやって来る。会議の合間を縫って安倍晋三首相との首脳会談もセッティングされる。

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 本来は真っ先にセットされるべき日韓の首脳会談であるが漂流していると聞く。

 当然であろう。何を決めても政権が代われば反古にする国を信用できないし、首脳会談で相互の不信感を拭い去り、過去にとらわれない未来志向を取り決めても「元の木阿弥」であることが自明だからだ。

 いまだに華夷秩序に雁字搦めで事大主義を信奉している韓国は、日本より道徳的に高みに立ちたいばかりに、国際法を無視してまで日本を悪の国家に仕立てる歴史を捏造して世界に流布する悪どさである。

李栄薫ソウル大学名誉教授の勇気

 2004年ソウル大学経済学部の李栄薫(イ・ヨンフン)教授が「慰安婦の強制連行」を否定すると、社会的な非難を受け、慰安婦たちの前で土下座させられた。

 こうしたことから韓国の有識者の間で、これまでの歴史観にとらわれない新しい歴史教科書を作ることになり、李教授も「自分自身が民族主義の検閲に引っかかり、ひどい目にあった不快な記憶から解放されたかった」気持ちで編集に参加する。

 そして2006年2月、「脱民族主義という観点から解放前後史を再解釈した国内外のすぐれた学術論文を一書にまとめ」た『解放前後史の再認識』を出版してフォーラムが開かれる。

 ここで教授が「朝鮮時代末期から植民地時代までを経済史的観点から再検討し、日本による土地と食糧の収奪を強調する従来の歴史教育を否定する発表を行う」と、反対する勢力から殴る蹴るの暴行を受けたのだ。

 こうした数々の嫌がらせや暴力に屈することなく、教授は2007年に『大韓民国の物語 韓国の「国史」教科書を書き換えよ』を上梓した。

 まえがきに相当する「書の扉を開くにあたり」で、教授は次のように記している。

 「(私に加えられたような)騒ぎの過程を見守りつつ私は、韓国社会が、つまりこの社会を支えている多数の中産層が、この五十年間、民族・民衆・階級などという、彼らの日常生活と乖離した歴史によってどれほど苛まされてきたのかを、そして、自由と信頼による法治の文明として明るく描かれた、新しい歴史をどれほど渇望しているのかを痛感した」

 実際、『大韓民国の物語』の中で、「韓国の歴史教科書の内容は事実ではない。内容が誇張されていたり、誤って解釈されたものが大部分だ。そのような話しはすべて、教科書を書いた歴史学者の作り出した物語である」と、忌憚なく指摘し一蹴する。

 李教授も書くように、韓国では「民族主義」が横暴な検閲官となって人民裁判式に責め立て、「裁判にかけられた者は謝罪をしたり、隠遁したり、逃げ出すしかない」し、「出版された書籍が青少年有害図書として指定され、無理矢理に回収された場合もある」のだ。

 よく知られているのは、作家の金完燮(キム・ワンソプ)氏が書いた『「親日派」のための弁明』である。

 歴史的経緯を紐解きながら、竹島は日本の領土といったことも書かれている。著者はさんざん脅迫され一時的とはいえ拘束され、書籍は青少年有害図書に指定された。

 また、近年では『帝国の慰安婦』が話題に上った。

 著者の朴裕河(パク・ユハ)女史は世宗大学日本文学科教授で、良い悪いの水かけ論を脱して慰安婦の根源に迫ろうとした。

 しかし、韓国では慰安婦たちの人格を冒涜したなどの批判を受け、慰安婦たちが名誉棄損で提訴し、裁判沙汰にさえなった。

 本書については肯定派と否定派などからいろいろな評価がなされているが、田中明彦東京大学名誉教授は「慰安婦問題についての、全面的、実証的、理性的、かつ倫理的な分析である」とし、「本書ほど、この問題のすべての側面を理性的に検討した本はない」と毎日新聞アジア太平洋賞受賞に際して選評している。

徴用工でも真実をつく果敢な発言

 現在はソウル大学の名誉教授となっている李栄薫氏はネット講義で次のように語っている。

 「韓国最高裁は1941年から43年の間に日本製鉄で労務者として働いた者とその子女に対して日本製鉄が1億ウォンの賠償金を支払えという判決を下しました」

 「この判決は当時、日本製鉄で働いていた労務者たちが奴隷として連行され奴隷として酷使されたという事実を、言い換えると世界が憤怒し時効なしに処罰する普遍的な反人権的犯罪の被害者であることを前提としています」

 「しかし、この前提は全く事実ではありません。多少強く表現すると、真っ赤な嘘だといえます」

 李教授の弟子である李宇衍(イ・ウヨン)・落星台研究所研究員らは、「慰安婦と労務動員労働者銅像設置に反対する会」(以下「反対する会」)を結成し、釜山の日本総領事館前に労働者像が建てられることに反対する運動も行っている。

(「産経新聞令和元年5月9日付「正論」、西岡力教授「戦時労働者問題で国際広報急げ」を参照)

 「反対する会」は、5月10日にも徴用工像が放置されている総領事館近くの講演で集会を開き、「『像設置は歴史を歪曲しており、最悪の日本との外交破綻を招く』とする声明文を読み上げた」(「産経新聞」同月11日付)。

 「反対する会」は、徴用工らは「自主的に金を稼ぐために玄界灘を渡った」、像設置は「韓国も加盟するウィーン条約に反している」などとも訴えている。

 ここでいうウィーン条約とは「外交に関するウィーン条約」で、第22条2項で次のように規定しているからである。

 「接受国は、侵入又は損壊に対し使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」

 西岡教授によると、国家総動員法に基づく募集、官斡旋、徴用は「戦争遂行に必要な産業へと組織的に導こうとするもの」であったが、終戦時に日本にいた朝鮮人200万人の中、「戦時労働の枠で管理されていたのは、労働者32万人、軍人軍属11万人(の計43万人)」で、約2割に過ぎず、それ以外は「出稼ぎ労働者とその家族」であった。

日本人労働者を朝鮮人徴用工と偽る傲慢

 韓国人女性は慰安婦として、男性は徴用工として「強制連行」されたかのような宣伝が国際社会で広まっているが、慰安婦の強制連行がなかったことや韓国人女性よりも日本人女性が多かったことが分かっている。

 日本人慰安婦たちが韓国人のように騒ぎ立てないのは、世間体ということもあるが、それ以前に家族のやむにやまれない事情や、女衒の口車に乗せられたというような、国家の強制とは直接関係ない状況で生じた結果であることがほとんどであったからだ。

 同様に、朝鮮人慰安婦も、朝鮮人による募集や女衒らによるものであったことが分かっている。しかも、その実態も、カネを貯め込んで送金していたなど、奴隷(状態)などでなかったことも確かだ。

 朝鮮人徴用工も同様に嘘にまみれている。

 5月10日午後、釜山市草梁洞(チョリャンドン)の日本総領事館から180メートルあまり離れた所の広場で開かれた「反対する会」の集会で、スピーカーを手にした李宇衍代表が語ったことは次のようなものであった。

(本項はJBpress掲載(2019.5.16)李正宣「韓国で徴用工像の設置に『反対』する人に聞いてみた」参照)

 「徴用で日本に行ってきた方々は、今まで2回にわたり韓国政府から賠償金を受け取りました。その時、彼らが徴用の証拠として裁判所に提出した資料のうち最も多かったのが写真でした」

 「彼らが提出した数千枚の写真のうち、どの写真にもあそこの銅像のように痩せ細った姿はなかったのです。みんな壮健な元気な青年の姿ばかりでした」

 「それにもかかわらず、民主労総と韓国労総、挺対協は政治的利益のために歴史を歪曲し、一昨年から徴用工像建立推進委員会を結成し、全国に銅像を作っています」

 「(中略)あそこにある痩せ細った徴用工像は、朝鮮人ではなく日本人労働者をモデルにしてでっち上げたイメージです・・・」

 李正宣氏の質問に対し李宇衍代表は「慰安婦問題も同じですが、いわゆる徴用工と呼ばれる『労務動員労働者』問題は、学問研究の領域では未だ合意した意見が得られていません。反日感情を煽るため、一つの『見解』が左傾化した歴史学界で『通説』として受け止められ、政治的に利用されているだけです。われわれはこの事実を韓国国民はもちろん、マスコミや教育界にも理解してもらうために努めているのです」と語っている。

 徴用工とは全く関係ない日本人労働者の写真を「朝鮮人徴用工」として教科書に載せるなど、杜撰で、ただ反日感情を植え付け煽っているだけである。

 このように反日とあれば、どんな間違った写真でも記事でも許されるというのは、中国の「反日無罪」や「愛国虚言」と全く同じである。

 間違った内容の慰安婦記事や徴用工写真を載せる韓国の教科書こそが、青少年有害図書以外の何ものでもなく、倒錯していることは今や明々白々であろう。

お手上げ状態の韓国?

 韓国政府の悪どさは際限がなく、空いた口が塞がらない。慰安婦問題では日韓は先の韓国政府と「国際社会でお互いに批判をしない」と最終合意をしたはずであった。

 しかし、韓国は「紛争下の性暴力対応のための国際協力」を目的に掲げ、(慰安婦問題での韓国の経験)を「国際社会と共有して国際的な共感を広げる」として、「慰安婦問題」を国際社会で認知させる為の予算を計上し、成立したことが分かった(「産経新聞平成30年12月12日付)。

 そして今は徴用工問題である。

 康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官は5月2日韓国人記者との会見で、日本企業の韓国内資産売却が推進される状況について、「韓国国民の利権行使が行われているものであり、政府が介入する事案ではない」「被害者に治癒が大切だ」などと発言している。

 そして、韓国政府の対応策のとりまとめを担当してきた李洛淵(イ・ナギョン)首相は5月15日に、韓国メディアとの討論会で「いろいろ議論をしたが、結論は限界がある」(「産経新聞5月21日)と述べた。

 日本は今年1月、協定に基づく2国間協議を求めたが、韓国政府要人の発言は上述のようなものであった。

 そこで、日本政府は去る20日、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を韓国政府に要請し、国際司法裁判所(ICJ)への提訴も念頭に置いた手続きを進めることにしたのだ。

 韓国の経済専門紙『毎日経済』は、「裁判所が決定したことだから、外交部は知ったことじゃないという責任回避と傍観の姿が感じられた。・・・万が一、日本の報復措置で日本の部品を使用する国内工場の生産活動が中断されたり、ビザ発給中断と不法滞在者の調査で日本留学生や生業に携わっているわが国民が強制送還されたりする事態が発生したら、誰がどう責任を負うのか。また、被害者の治癒とは、最高裁判所の判決どおり日本企業から1人当たり1億ウォンづつ強制的に金を取れば済むものだろうか」と怒りを発したと、李正宣氏は書いている。

 日本人にも我慢の限界がある。

 日本企業へ実害が出たら対応措置を取ると日本政府が繰り返し表明してきた。麻生太郎副総理兼財務相は3月12日の衆院財務金融委員会で、関税引き上げ、送金停止、そしてビザ発給停止を例示している。

 専門家はほかにも特定品目の輸出禁止や投資制限などを挙げているが、こうした対抗措置を取るには法律の改正が必要になることもあるようであるが、そうした動きは見られないと指摘するのは西岡教授である。

 教授はもう1つ、国際広報の不足を挙げる。

 慰安婦問題でも朝日新聞は誤報を認めながら、外国人が単純に検索できないようなタグをつけていたと批判されている。

 政府の国際広報も必要であるが、誤報は積極的に広報し、ましてや慰安婦問題などは国内よりも米国や韓国などでの誤報の訂正が不可欠である。

 しかし、市民が気づくまで放置されていたとは情けない。新聞社に第一の責任があろうが、外務省は何をしていたのか。まさかと思いたいが、日本の名誉を散々貶してきた外務省だ、他人事と思っていたのではなかろうか。

まずはソウル大の廃止から

 文在寅大統領は以前の革新政権にも増して「親日残滓の清算」を訴えて、戦前日本の残影払拭に尽力している。

 慰安婦問題や徴用工問題は韓国の指導部(国民与論をくみ上げてか否かは判然としない)が、日本が統治時代にやったことは半島人の独立自主を阻害し、また人権蹂躙したと非難することで、国家と国民の自律性を回復したい願望から来ているのであろう。

 1995年に解体された朝鮮総督府の破壊がその象徴的なものであった。

 国民はきっと快哉!を叫んでいるのであろう。しからば総督府などで働く国家の人材育成の本陣であった京城帝大(現ソウル大学)も統治の残滓ではないのだろうか。

 東京帝大、京都、東北、九州、北海道と明治19年以降、日本政府は国家の人材を育成するために帝国大学を造ってきた。

 そうした中で台北帝大(台湾・昭和3年・1928)や大阪、名古屋帝大よりも先に朝鮮に京城帝大(大正13年・1924)を造ったのである。

 大学本部のほかに法文・医・理工の3学部であったが、医学部長は赤痢菌の発見で知られる志賀潔(のち総長)、法文学部長は安倍能成(のち文部大臣、学習院長)であった。

 これだけでも人材を重視したことが分かるが、年間の学校運営費は300万円(現価60億円前後)以上であったという。

 朝鮮人エリート、今日のキャリア官僚は朝鮮唯一の帝国大学である京城帝大から生み出されてきた。そこに至る多くの教育機関も日本が建設し整備した。

 京城帝大は日本の敗戦により米国の軍政下で、今日のソウル大学に発展的解消させられた。

 すなわち、帝大の法文学部の法科は京城法専と合併して法科大学となり、医学部は医専と合併して医科大学となり、これらの単科大学を学部として編入した国立ソウル大学ができたのだ。

 いまでは「智の源泉」になっている各級の学校、そしてソウル大の前身の京城帝国大学にこそ、旧日本の残滓が刷り込まれている。

 総督府は朝鮮人エリートが働く官庁であったろうが、彼らを教え育んだのは京城帝大であり、その影響―韓国流には残滓か―はソウル大学を経由して今に及んでいることになる。

 総督府は日本が一時的に行政を行った建物でシンボル化していたかもしれないが、それは「器」でしかない。

 その器に入れるべき「容」すなわち、自由や民主主義、人権や法の支配などの普遍的価値観と称される思想や科学技術の重要性などは、伝統としていまに至るまで受け継がれているに違いない。

 こう考えると、「器」のシンボルである総督府より先に、日本の影響を「伝統」、すなわち「容」として今に繋いでいる「ソウル大学」こそが取り壊されるべき「親日残滓」そのもののように思えてならない。

 統治者と被統治者が同じ歴史観を持つことは不可能と言われる。

 悪政の代名詞宜しく「日帝時代」が使われるが、「容」の取り壊しを真剣に考えるに及んで初めて、民族主義的な歴史観抜きの日帝時代の評価が可能になるのではないだろうか。

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