「病気やけがで倒れた人を見かけた場合、どうすべきか」を巡ってSNS上で議論となっています。倒れているのが見知らぬ人であっても、救急車が来るまでの間に「応急手当てをした方がよい」という声の一方、「万が一、応急手当てをして相手をけがさせたり、死なせたりしてしまったら…」と、ためらう声もあります。応急手当てに失敗した場合、罪に問われたり、賠償義務が発生したりするのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

一般人に求められる「注意義務」とは?

Q.一般人が応急手当てをしようとしたものの失敗し、相手にけがをさせたり、死なせたりしてしまった場合、罪に問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「刑法209条の『過失傷害罪』(30万円以下の罰金または科料)、または刑法210条の『過失致死罪』(50万円以下の罰金)に該当する可能性がありますが、過失があったかどうかは『注意義務』を尽くしていたかどうかが判断の基準になります。

緊急事態で一般人が行う応急手当てにおける『注意義務』は、医療行為とは違い、高い『注意義務』が要求されることはありません。例えば、『救急車を呼んで救助を待つ』『大量出血していれば止血に努める』『寒い路上に放置され、凍死の恐れがある人は建物の中へ移動させる』など、一般人に要求される通常の『注意義務』を尽くす限り、過失は認められず、刑事責任を問われる可能性は低いと思われます」

Q.遺族などから賠償請求される可能性はありますか。

牧野さん「応急手当てにミスがあれば、基本的に民法709条の『不法行為』で責任を負うことになりますが、民法697条の『緊急事務管理』における『急迫の危害を免れさせるため』に該当する場合、悪意があったり、重過失があったりしたケースを除いて責任を負いません」

Q.では、人が倒れている現場にたまたま居合わせたのが医師の場合、応急手当てに失敗してけがをさせたり、死なせたりしたら、どうなりますか。

牧野さん「医師も専門分野があるので一概には言えません。刑事・民事とも、応急手当てで要求される『注意義務』は一般人より高度なものを要求されることになります。そのため、一般人に比べて過失が認められる可能性が高まります。例えば、医師の場合は一般的に、『脳出血と思われる人を無駄に移動させてはいけない』『呼吸が停止していれば人工呼吸を試みる』といった注意義務が要求されると思います」

Q.失敗を恐れて救護しなかった場合、罪に問われる可能性はありますか。

牧野さん「救護活動が必要な人を放置した場合、『保護責任者遺棄罪』(刑法219条、3カ月以上5年以下の懲役)に該当する可能性があります。『保護責任者遺棄罪』とは、扶助が必要な人物に対して生存に必要な保護を怠ることです。扶助が必要な人に対する保護義務があるのは、一般的には親権者や事故の加害者などですが、見ず知らずの人でも、いったん救助しようとすると保護義務が認められるケースが多くなります。

一方で、道端で倒れている人を見つけたものの、何もしないで立ち去ったような場合にまで、刑法上の保護責任を問うことが難しいのも事実です」

Q.それでは、道で倒れている人がいたり、苦しんでいる人を見かけたりした場合、どうすべきなのでしょうか。

牧野さん「救急車や警察をすぐ呼んで救助を待つべきだと思います。さらに、自分の分かる範囲で応急手当てをするのが理想ですが、それが無理なら通報だけでもすべきでしょう」

オトナンサー編集部

もし、応急手当に失敗したら…?