バス車体を2台つないだ連節バスを、いすゞと日野が発売しました。日本国内で走る連節バスは、その多くが輸入車というなかでの「国産」の新型、事業者からの注目度も高いようです。

ほとんどが輸入車だった連節バス

いすゞ自動車日野自動車は2019年5月27日(月)、共同で開発した国産初のハイブリッド連節バスをそれぞれ発売しました。両社が共同出資したジェイ・バス宇都宮事業所(宇都宮市)で製造する車両を、いすゞは「エルガデュオ」、日野は「日野ブルーリボン ハイブリッド連節バス」として販売します。

連節バスは、2台以上の車体が幌などでつながっているバスのこと。2019年5月現在、日本で走っているのは全長18mから19mほどの2連節車です(海外では3連節も見られる)。国土交通省の「連節バス導入ガイドライン」によると、通常の大型路線バスと比べて約1.5倍の輸送力を持つことから、通勤・通学時の混雑解消などを目的に導入されているといいます。

とはいえ、これまで現行の国産モデルがなかったため、事業者はメルセデス・ベンツスカニアスウェーデン)、ボルボといった輸入車の連節バスを導入していました。そうしたなかで国産の新型を開発した背景を、日野自動車は次のように話します。

いすゞと日野は、商用車メーカーの社会的責務として、ドライバー不足や環境問題といった社会課題の解決に向けて取り組んでいます。こうしたなか、国内の道路事情などを踏まえた国産の連節バスへのニーズも高く、早期の実用化を目指して2017年より共同開発を進めてまいりました」(日野自動車

今回開発された連節バスは全長およそ18m(1万7990mm)、車幅およそ2.5m(2495mm)で、定員は120名(仕様により変動)です。日野によると、「国内の道路事情に合わせたサイズ」とのこと。また、ふだんいすゞや日野の路線バスを使っている事業者やドライバーにとっては、それと同じような操作系で、アフターサービスも同じ販売会社が提供する点などが強みだといいます。

課題多かった連節バス、国産の新型登場で一気に普及へ?

連節バスは全長などで法令上の保安基準などを超えてしまうため、運行には特別な許可が必要です。輸入車の場合はさらに車幅なども日本の路線バスより大きかったり、日本の仕様へ改造する必要があったりと、導入までに必要な手続きの煩雑さや、操作系の違いが課題でした。国産車の登場は、連節バスの導入を従来よりも容易にするといえるでしょう。

「大都市圏に加え、地方都市からのお問い合わせも多くいただいています。工場や大学、団地などを沿線に持つ路線で、朝夕ラッシュ時の大量輸送を想定したニーズが多いです」(日野自動車

技術的な特徴としては、モーターのみによる発進も可能なハイブリッドシステムのほか、いすゞや日野の大型観光バスに2018年モデルから導入された「ドライバー異常時対応システム(EDSS)」が、路線バスとして初めて搭載されたことが挙げられます。ドライバーに急病などの異常が発生した際、乗客やドライバーが非常ブレーキスイッチを押すことで、自動で減速、停止するというものです。

また、路面上の誘導線をカメラで認識し、自動操舵、自動減速によりバス停へ誘導する「プラットホーム正着制御」や、自動車専用道路において先行車との車間距離を制御する「協調型車間距離維持支援システム(CACC)」といった技術にも対応。これらは今後、市場ニーズに応じて実装していくといいます。

現在、東京都では都心と臨海部を結ぶ新しい交通機関として、東京オリンピックパラリンピックに向けて連節バスを使用した「BRTBus Rapid Transit)」の導入を目指しているほか、JR西日本宇部線小野田線山口県)では、沿線自治体などにより鉄道をBRTに切り替えることも検討されています。国産の新型連節バスの登場は、そうした動きをさらに加速させるかもしれません。

上がいすゞ「エルガデュオ」、下が「日野ブルーリボン ハイブリッド連節バス」(画像:いすゞ自動車/日野自動車)。