職場にいる間、業務上の緊張やストレスで高血圧の状態が続く「職場高血圧」が、体に悪影響を与えるとして注目されています。高血圧の状態が長時間、継続的に続くため、高血圧がリスク要因とされる脳梗塞心不全の発症率が通常の高血圧よりも高まるそうです。「職場高血圧」のリスクや対策について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

30~40代も要注意

Q.そもそも「職場高血圧」とは、どのようなものですか。

市原さん「職場高血圧とは“隠れ高血圧”の一種で、家庭や健診では高血圧と判定されないのに、職場でだけ高血圧になってしまう病態です。血圧はさまざまな環境で上がりますが、仕事中の緊張状態やストレスが要因で高血圧になると考えられます」

Q.どのような年代のどのような人が、職場高血圧になりやすいのでしょうか。

市原さん「高血圧を強く意識するのは、一般的に、50代近くの中高年になってからです。しかし、職場での緊張状態やストレスはどの年代にも起こり得るので、職場高血圧は30代や40代の若い世代であっても注意が必要です。緊張しやすい、ストレスに弱いと自覚のある人は特に注意しましょう」

Q.職場で高血圧の状態が続き、悪化するとどのような症状が出ますか。

市原さん「通常、高血圧によって自覚症状が出ることは少ないです。しかし、血圧が極端に高くなると頭痛や吐き気、めまいが起こることがあります。これらの症状が出ている場合、早めの治療が必要です。症状が出ているのに高い血圧を放置すると、脳出血のリスクが高まります」

Q.自分が職場で高血圧かどうかは、なかなか分かりません。どのようにして発見したらよいですか。

市原さん「職場で血圧を測定することが一番です。通勤途中からすでに血圧が上がる場合や、職場での仕事内容によって血圧が上がる場合など血圧上昇は個人差が大きいため、一概にいつ測ればいいとは言えませんが、一般的には、出勤した時やトイレ休憩の時など自分でタイミングを決めて定期的に測ってみるとよいでしょう。職場に血圧計がない場合は、家庭用血圧計を購入して職場に持参しましょう。家庭用血圧計は、3000円台から購入できます。手首で測る血圧計よりも、腕で測る血圧計の方が誤差が少ないのでお勧めです」

Q.治療する必要があるのは、どの程度の数値ですか。

市原さん「『高血圧治療ガイドライン2019』によると、高血圧の診断は、病院での血圧の数値で上が140、下が90以上、家庭で上が135、下が85以上です。これらを上回っていれば、治療する必要があります」

Q.職場高血圧を緩和する方法を教えてください。

市原さん「血圧は、深呼吸することで下がります。また、職場で軽く体を動かすことも有効です。運動をすると一時的に血圧は上がりますが、定期的有酸素運動をすることで血圧の改善が期待できることが分かっています。職場のストレスや緊張の原因を除去することは難しいですが、仕事に支障が出ない範囲で息抜きをしたり、好きな香りや物を使って意識してリラックスする環境を整えるなど工夫が必要でしょう」

オトナンサー編集部

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