今年10月に予定されている消費増税。政府が景気判断を下方修正するなど延期論が燻(くすぶ)る中、財務省の一枚岩にも綻(ほころ)びが見えているという。

「3月末に成立した19年度予算は、当初予算で初めて100兆円を突破しました。目立ったのは、キャッシュレス決済時のポイント還元策を柱にした2兆円超の増税対策。これを仕切った経産省の新原浩朗経済産業政策局長(84年入省)は、“安倍ファースト官僚”の一人です」(官邸関係者)

 制度設計の杜撰さが指摘されてきたポイント還元策。それでも新原氏の下、調整に奔走してきたのが、財務省の太田充主計局長(83年入省)だ。

「森友問題では理財局長として国会答弁を凌ぎきった。首相も『佐川(宣寿・理財局長=当時)より全然いいね』と評価していました」(同前)

 ただ主計局長と言えば、本来は財政再建路線の旗振り役。ところが太田氏は「財政ばかり考えても増税は上手くいかない」と口にし、経産省と歩調を合わせてきた。その姿を世耕弘成経産相も「太田は信頼できる」と絶賛している。

「太田氏は昨年10月公明党幹部に低所得者・子育て世帯向けのプレミアム商品券の発行まで提案し、実際に予算に盛り込まれました。主計局長が“バラマキ”の片棒を担ぐなど従来では考えられなかったことです」(同前)

そんな太田氏を「恥ずかしい」という財務省幹部

 その太田氏について、「恥ずかしい」と周囲にこぼす財務省幹部がいる。矢野康治官房長(85年入省)だ。

「矢野氏は一橋大卒で、菅義偉官房長官の元秘書官。言うべきことを忖度せずに言う点を、菅氏は高く買ってきました。一方で、矢野氏は首相が前回の解散の大義に掲げた増税分の使途変更に批判的でした。教育無償化はワンショットではなく、いわば恒久的な政策。財政再建が後回しにされることに苛立ちを見せていたのです」(財務省関係者)

 そんな矢野氏にとって、経産省的な“バラマキ”を容認するような太田氏のやり方は苦々しく映ったのだろう。

100兆円超の予算にもかかわらず、首相周辺から増税延期を匂わす発言が飛び出すなど、財務省への圧力が続いています。これには矢野氏も『100点満点で115点を取ったのに、120点じゃないから怒られているようなもの』などと嘆いていました」(同前)

 最強官庁は遠くなりにけり。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年6月6日号)

次期次官候補の太田氏 ©共同通信社