カサブランカオフサイドの判定に猛抗議 オン・フィールド・レビューを求め試合が中断

 アフリカ大陸のクラブ王者を決めるCAFチャンピオンズリーグ決勝エスペランスチュニジア)vsウィダード・カサブランカモロッコ)の第2戦が、現地時間5月31日にエスペランスのホームであるチュニジアで行われた。試合は判定に不服を示したカサブランカが試合続行を拒否したため、エスペランスが今季のアフリカ王者となった。このことに対して、カサブランカの地元メディア「モロッコ・ワールド・ニュース」は、「アフリカサッカー史上で忘れられないスキャンダル」と、その内容を報じている。

 第1戦をホームで迎えたカサブランカは1-1で引き分けて、敵地に乗り込むことになった。第2戦では、前半42分にエスペランスアルジェリア代表FWユセフ・ベライリにミドルシュートを決められ、先制を許してしまった。

 なんとしても追いつきたいカサブランカは、後半14分に相手ゴールネットを揺らすことになった。左からのクロスにモロッコ代表MFワリード・エル・カルティがギリギリで相手の最終ラインから飛び出し、頭で合わせて同点に追いついたかのように思われた。しかし、副審の旗が上がっておりオフサイドの判定となった。

 その後、エスペランスの間接FKで試合は再開されたが、直後にエスペランスファウルで試合が止まると、カサブランカの選手やベンチが審判員たちに抗議を始めた。それぞれが主審や第4の審判員などに詰め寄ってオン・フィールド・レビューのジェスチャーをして、VARにアドバイスを求めるようアピールをしていた。

 試合を進めようとした主審が両チームのキャプテンを呼んで説明したが抗議はヒートアップ。熱くなったファンがスタンドから侵入してくるなど、会場は一時危険な状態となった。試合は中断されてCAF(アフリカサッカー連盟)の役員たちも交えた話し合いが繰り返されていたが、中断からおよそ90分後に試合再開を拒否したカサブランカは棄権と見なされ、エスペランスの勝利が告げられることになった。

試合中断の真相は「VARシステムに問題があった」と地元メディア報道

 この事件に対し「モロッコ・ワールド・ニュース」は、VARシステムに問題があったことを明かしている。カサブランカの選手がVARへのアドバイスを求めて抗議している時に、オン・フィールド・レビューが故障で見られないことが発覚。カサブランカは、このシステムが直るまで試合再開を拒否すると言ってボイコットしていたという。

 ピッチ脇で映像を確認するオン・フィールド・レビューは、ハンドなど審判の主観的に判断されるファウルの時に使われるものであって、オフサイドなど誰が見てもファウルと分かるものはVARからの進言で終え、オン・フィールド・レビューは使われない。そういう意味で言えば、カサブランカ側はルールの理解を怠っているが……導入されたテクノロジー自体が壊れていたのであれば、VARの導入自体も疑問視される。根本的に技術を信用できなくなったという意味では、十分に同情できる出来事と言えるだろう。

 世界的にもVARが注目されるなかで起きたこの事件は、今後もしばらく騒動を巻き起こしそうだ。(Football ZONE web編集部)

アフリカ王者決定戦で前代未聞の事件が起きた【写真:Getty Images】