サラリーマンにとって一世一代の買い物といえるマイホーム。そして、マイホームの購入において切っても切れないのが住宅ローンだ。しかし住宅ローン金利には、「変動金利」、「固定期間選択型」、「全期間固定金利(フラット35含む)」といったさまざまなタイプがあるため、迷う人もいるはず。

そこで今回は、住宅ローンに詳しい千日太郎さんに、2019年に住宅ローンを借りた人の世帯年収別アンケートの結果に基づき、住宅ローンにおける金利タイプ選択の傾向について話を伺った。


■世帯年収400万円以下の人はリスクの高い固定期間選択型を選ぶ傾向がある?

低金利時代である今、低所得サラリーマン層も不動産を購入しやすいと耳にするが……。



「世帯年収が400万円以下の場合、一番多いのが固定金利選択型で43%、次に多いのが変動金利の31%です。今は特に各銀行で、10年固定金利と変動金利が低金利を競っています。どちらも0.5%前後という低金利です。よって、世帯年収が400万円以下の人にとって、最初の期間で住宅ローンの毎月返済額を低く抑えられる10年固定金利と変動金利は魅力的です」(千日さん)

収入が低いうちは、やはり毎月の返済負担を抑えたい。ところで、10年固定金利と変動金利にはデメリットはないのだろうか。

「この二つはどちらも、金利の上昇リスクを負うので注意が必要です。10年固定金利については、当初10年の金利が固定されていますが、11年目からは店頭金利が適用となります。金利の引き下げ幅が少なくなるのが通常の見方です」(千日太郎さん)

金利が上昇するリスクは、静観できるものではない。対策はないのだろうか。

「金利が上がった場合の最も効果的な対応方法は、多額の繰上げ返済です。しかし繰上げ返済する資金の裏付けがなく、金利の上昇リスクを負っている人が多いのが実情でしょう。したがって、金利が固定されている10年の間に、最低でも1,000万円の貯金を作るくらいの覚悟が必要です」(千日太郎さん)

住宅ローンを返済しながら、10年で1,000万円の貯金とは……。なかなかのハードルだ。

■世帯年収400万円超1000万円以下の人はリスクのある変動金利を選ぶ傾向がある?

次に、家を購入する人のうち最も人数の多いゾーンである、世帯年収400万円超1000万円以下の人の傾向だ。



「世帯年収400万円超1000万円以下の場合、固定期間選択型を選ぶ人は30%未満に減少し、その代わりに変動金利を選ぶ人が50%弱を占める結果となっています。変動金利は6か月(又は毎月)ごとに店頭金利が見直されます。したがって6か月後には、金利が上がってしまっても決して不思議ではない住宅ローンです」(千日太郎さん)

変動金利はリスクが高いと聞いていたが、どうしてこのようなアンケート結果になったのか気になるところだ。

「このアンケートを取った時点の金融情勢を鑑みると、当分の間は今の低金利が続くのではないかという見方が強いのでしょう。ただしその当分の間というのは、概ね5年が目安です。金融市場というものは、大きな事象が発生したら、明日にでも現在の前提条件が180度ひっくり返っても不思議ではないです。住宅ローンは最長で35年ですから、自分が住宅ローンを借りている間に金利が上昇するリスクは想定しておくべきでしょう」(千日さん)

35年間に渡って返済することを常に念頭に置き、その間のリスクを考慮しておきたい。

■世帯年収1000万超からはリスクを取らない全期間固定金利を選ぶ人が増える

では、世帯年収で1000万円超の家庭ではどうだろう。最近では、妻もフルタイムで共働きというパターンが多く、世帯年収で1000万円を超える人たちが増えているという。



「こうした人たちの特徴は、収入が多い上に、十分な自己資金を貯めていることです。中には即金で購入できるけど、住宅ローン減税のためにあえて住宅ローンを借りるという人もいます。資金力の裏付けがある上で、変動金利を選ぶというケースが多いのです。ちなみに、世帯年収1000万円超1500万円以下では50%が変動金利を選択しています」(千日さん)



即金で買えるのに、税金対策のために敢えて住宅ローンを組む人がいるという。

「もう一つの特徴が、全期間固定金利(フラット35を含む)を選ぶ人の割合も多いということです。全期間固定金利は、住宅ローンの全期間に亘って金利が固定されているので、金利の上昇リスクを負いません。つまり、お金を持っている人ほど、金利の変動リスクの面で安全な住宅ローンを選んでいるともいえるのですね」(千日さん)

お金を持っている人はそれなりに金融知識もあり、選択の余地もあるということなのだろう。

■収入の低い人ほど高いリスクの住宅ローンを選んでいる

最後に、全体的な傾向についてまとめてもらった。



「住宅ローンの金利タイプと金利変動リスクの高低の関係は上記の表のようになります。
年収が最も低いグループの人たちほど変動金利と固定期間選択型を選んでいる割合が高い結果です。今の金利は低いけど金利変動リスクが高い金利タイプを選んでいるということになります」(千日さん)

金利変動リスクのある金利タイプで借りる場合には、お金の準備はもちろん、心の準備も必要だと千日さんは付け加えた。収入に合わせ、金利と金利変動リスクのバランスを取る必要がありそうだ。

マイホーム購入で失敗は避けたいところ。物件選定もさることながら、住宅ローンの金利タイプも慎重に検討したい。

●専門家プロフィール:千日 太郎(せんにち たろう)
オフィス千日LLC.代表社員、公認会計士。正しい住宅ローンのノウハウを広く発信することをライフワークとし、自身のブログで一般の人からの相談に無料で答えるほか「ナビナビ住宅ローン」など多数のメディアで記事執筆と監修を行っている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

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