JR東日本「地震対策の取組み状況について」

1.構造物が壊れないようにする≪耐震補強対策≫【別紙1】

1-1.東日本大震災以降進めてきた耐震補強対策の進捗

阪神淡路大震災以降、高架橋柱・橋脚・駅舎等の補強を進めてきましたが、東日本大震災において広範囲に様々な構造物が被害を受けたこと、また、近い将来発生が懸念されている首都直下地震に備えて、従前からの対策対象に盛土や駅天井等を加え、重点的に進める補強計画を策定し工事を施工してきました。2019年3月末時点で計画していた対策数に対して約95%が完了しました。これらの対策は、2024年3月末完了を目途に引続き施工を進めていきます。

1-2.さらなる耐震補強対策の計画状況【別紙2】

首都直下地震の想定震度が上昇したエリアがあることや新たな活断層が顕在化したことなど、最新の知見に基づき、これまで実施している対策のエリア拡大およびこれまでの地震被害の分析を踏まえた新たな対策の検討を進めることとし、調査・設計が整ったものから順次工事に着手しています。今後、引き続き調査・設計を進め、必要な対策に順次着手し、概ね10年程度(2029年3月末予定)での完了を目標に補強工事を進めていきます。

○対象設備

1.これまで実施している対策のエリア拡大を検討している主なもの

新幹線:高架橋柱、橋脚、山岳トンネル覆工、電化柱(モルタル基礎)等
在来線:高架橋柱、橋脚、桁支点部、盛土(高さ6m以上)等

2.新たな対策として検討している主なもの

新幹線:山岳トンネル路盤、桁支点部、電化柱(砂詰め基礎)、ホーム上家等

在来線:盛土(高さ4~6m)、送電鉄塔、ホーム、ホーム上家等

1-3.耐震補強対策における施工エリア毎の進捗状況【別紙3】

高架橋柱等、主な構造物に対して損傷レベルと施工エリア毎に優先順位を定め耐震補強を進めています。

(1)高架橋柱および橋脚耐震補強

高架橋柱や橋脚は、急激に破壊が進む“せん断破壊先行型”のものから“曲げ破壊先行型”のうち耐震性が比較的低いものへと地震時の損傷レベルの大きなものから順に補強を進めています。

(2)駅舎および駅天井等耐震補強

乗降人員3千人/日以上の駅に対して、駅舎、天井、外壁の補強を進めています。

(3)盛土・切取耐震補強

首都圏在来線を中心に、盛土・切取の高い箇所から補強を進めています。

2.走行中の列車を早く止める≪列車緊急停止対策≫【別紙4】

(1)海底地震計情報の活用

国立研究開発法人防災科学技術研究所が整備を行っている「日本海溝海底地震津波観測網(以下、Snet)」のうち房総沖(S1)から釧路・青森沖(S5)観測網の海底地震計情報を本年1月より本格的に新幹線早期地震検知システムに活用しています。今後は、海底地震計情報の在来線への導入等についても、引き続き検討を進めていきます。

(2)早期検知地震計の緊急停止警報発報までの時間短縮

新幹線の各沿線、海岸、首都圏・内陸部には、地震の初期微動(P波)より直ちに地震情報(震源位置や規模)を推定して、必要な区間の列車を緊急停止させる機能を有する早期検知地震計が配備されています。

このうち、海岸、首都圏・内陸部の地震計50台について、2022年度までに地震情報の推定方法の改良を行い、新幹線に対する緊急停止警報の発報までに要する推定時間を最短2秒から1秒に短縮します。(沿線地震計85台は同機能実装済)。なお、これらの新幹線地震計の緊急停止警報は在来線にも活用しています。

3.脱線後の被害を最小限にする≪列車の線路からの逸脱防止対策≫【別紙5】

新幹線の逸脱防止対策は、すべての新幹線車両へのL型車両ガイド及び脱線対策用接着絶縁継目の設置が完了しており、現在はレール転倒防止装置の整備を進めています。レール転倒防止装置の整備は、2009年度からスラブ軌道への敷設を開始し、その後2017年度からバラスト軌道、2018年度から弾性まくらぎ直結軌道への敷設を開始しています。2019年3月末現在、新幹線全線2,243㎞のうち、レール転倒防止装置の整備済延長は894㎞です。これらの対策は2029年度頃を完了目途に整備を進めていきます。