数年前からブームになっている「御朱印」。神社仏閣で授かるものだが、その認知度の高まりに比例して、転売が行われるなどトラブルも頻発しているようだ。
■特別御朱印が中止に
5月には浅草神社「三社祭」の特別御朱印が頒布中止に。御朱印をもらうための行列で、神職や巫女に対し罵声を浴びせる人がいたことがきっかけだそうだ。
神社側はSNSに「こっちはお客さんだぞと仰る方(こちらは二度と来社されないでください)」という内容を含め、かなりはっきりとした意志を投稿した。
神社にとって守るべきは、神事(祭り)をつつがなく催行すること。当日の混乱を危惧しての苦渋の決断だったのだ。
神職を店員だと思ったり、御朱印をスタンプラリーなどと考えたりと、そんな人はごく一部のようだが、根本の認識が違っていることから起こるトラブルなのかも。そこで、そもそも御朱印とはなんなのか、浅草神社の禰宜(神主)・矢野さんに話を伺った。
■御朱印とは?
御朱印の成り立ちには諸説あるが、元は寺にお経を奉納した「証」としていただく朱印がはじまりと言われているようだ。伊勢神宮など神社では、神様に馬や稲を納めた証だったという話も。
では、現代の御朱印は? 矢野さんによると、現代は「参拝」の証としていただくものとのことだ。そう考えると、転売や罵倒がいかにおかしいことなのか見えてくる。
■御朱印の授かり方
では、御朱印はどのようにいただくのが正しいのか。混んでいたり、急いでいたりすると、つい参拝前に御朱印をいただこうとしてしまうが、前述のように、参拝の証となるとそれは違うのだろう。やはり「参拝したあとに社務所でいただく」が正しいと思われる。
最近では、混雑に対応するため、参拝前に社務所に御朱印を預けることを推奨している神社もあるようだ。ケースバイケースではあるが、いずれにせよ、証をいただくという気持ちを忘れないようにしたい。
■煽ったのは神社?
特別御朱印の中止の投稿に対して、ほとんどが激励の言葉だったが、中には「特別御朱印を宣伝して煽ったのは神社では?」「プリントなどして皆がもらえるようにしたら?」という言葉もあったようだ。
神社は全国に約八万社もあるが、後継者不足や維持費不足で護持(運営)されない神社が増えているのが現状。神社にとって一番大切なことは、土地と繋がり祭祀を行うことで、たくさんの人に足を運んでもらう必要があるのだ。
そのため少しでも興味をもってもらうため御朱印などを提案しているという。決して賑やかしのためのイベントではないのだ。また、「参拝した証」をプリントして誰にでも渡すことは、そもそもの意味が違ってくるだろうし、転売や譲渡を増長するばかりかも知れない。
神社は、神社側と参拝側の両者が、謙虚な気持ちで向き合い、お互いに安心してお参りできる信仰の場とする必要性がある。これまでも丁寧に思い合ってきたからこそ、日本にこんなにも神社が残っているのかもしれない。
様々な想いや偶然で継がれてきた伝統が、少しでも残っていくことを願うばかりである。
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