日本全国で販売されている駅弁のなかには、見た目や中身で人を驚かせるような趣向を凝らしたものが少なくありません。地域色も豊かな「サプライズ駅弁」を5つ紹介します。

あの俳優も驚いた「日本一のサプライズ駅弁」

駅弁のなかには、中身だけでなく見た目にもこだわったものが少なくありません。なかには、驚きを誘うような趣向のものや、地域色を追求した結果かなり大胆な見た目になってしまったものも見られます。以下に紹介する5つの駅弁は、その好例かもしれません。

新潟駅「えび千両ちらし」

「えび千両ちらし」は、新発田駅(新潟県新発田市)の駅弁事業者から、のちに新潟駅へ進出した新発田三新軒の看板駅弁で、東京駅などでも売られています。手のひら大の容器のふたを開けて登場するのは、ふわふわの厚焼き玉子4枚と、真ん中に海老のそぼろのみ。厚焼き玉子は箸で持つとずっしり重いですが、これを持ち上げた瞬間に「サプライズ」が待ち構えています。

厚焼き玉子の下には、酢飯の上に盛りつけられたウナギ蒲焼きや、酢で締めたコハダ、ほんのり醤油味の蒸しエビ、イカの一夜干しと、新潟の海の幸がズラリと並んでいます。駅弁ファンとしても知られる俳優の高島政宏さんが「日本一のサプライズ駅弁」と評し、感激のあまり新発田三新軒に感謝の手紙を書いたというエピソードもあるほどです。この駅弁は2002(平成14)年の発売から徐々に人気を得て、ついにはファンの投票で決めるJR東日本の「駅弁味の陣2017」で最高賞の「大将軍」に輝きました。

広島駅「広島名物 お好み焼風豚玉めし」

「広島名物 お好み焼風豚玉めし」の紙のスリーブ(厚紙のカバー)から容器を抜き取ると、そこには青のりが振りかけられた薄い卵焼きがドンと1枚。この下に、お好み焼きの豚玉風にアレンジされたソース味のチャーハンが隠れているほか、少し多めのオタフクソース製「お好みマヨネーズ」が別についています。その見かけと味わいは、まさに広島のお好み焼きをほうふつとさせます。なお、この駅弁の製造元は、岡山駅の駅弁事業者である三好野本店。広島駅だけでなく、岡山駅でも同様に販売されています。

「サバまるまる1本」駅弁!?

駅弁のなかには、その土地の郷土料理モチーフにしたものが少なくありませんが、それゆえに、駅弁らしからぬビジュアルになってしまったものもあります。

中村駅(土佐くろしお鉄道)「姿寿司」

「姿寿司」は足摺岬周辺で水揚げされる「清水サバ」をまるまる1尾使った姿寿司で、開いたサバの身のなかに、ご飯がぎっしり詰まっています。このような姿寿司は高知駅などでも販売されていますが、中村駅(高知県四万十市)のものの特徴は、その大きさです。ワインボトルほどの箱のなかに、ひと切れのすだちとともに、1尾がサバの姿のままラップにくるまれて収まっています。

高知県では「皿鉢(さわち)」という大皿料理の文化があり、このようなサバなどを1尾まるまる使った押し寿司が出されることは珍しくありませんが、本来は複数人で食べるものをひとつの駅弁としているだけあって、2~3人前かと思うくらいの重さです。身の味わいは尾と腹などで違うほか、季節によっても風味が異なります。なお、購入には中村駅へ3日前までに電話で予約が必要です。

八戸駅「八戸小唄寿司」

八戸駅青森県八戸市)の「八戸小唄寿司」は、サーモンやサバなど、八戸沖の魚を使った押し寿司ですが、実は箸がついていません。代わりに入っているのは、なんと津軽三味線のバチをモチーフとしたもので、押し寿司を切り分けて食べます。この駅弁は、昭和30年代に当時の八戸市青年部の若者が「地元の名物になる商品を」と開発したロングセラー商品です。ちなみに、このバチで津軽三味線が弾けるかは不明ですが、試したところギターピック代わりになる程度の強度はあります。

鹿児島中央駅「桜島灰干し弁当」

鹿児島中央駅の「桜島灰干し弁当」は、細長い長方形の容器に、干物の魚をはじめ様々な料理がバランスよく盛りつけられたもの。これまで紹介してきた駅弁のような見た目のインパクトはありませんが、大きな特徴は、魚の干物の作り方にあります。一夜干しした魚にフィルムをかぶせ、桜島の火山灰で包んで水分を吸わせる「灰干し」という、この地域ならではの製法によるものです。なお、干物を含め具材の内容は定期的に入れ替わりますが、この駅弁の人気自体は不動のものといえ、数々の人気投票で1位を獲得しています。

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このように「サプライズ駅弁」の多くは、地域色を追求した結果といえるでしょう。中身だけでなく、容器で地域色を出すような駅弁も少なくありません。

「えび千両ちらし」。一見、玉子焼きだけが盛りつけられた弁当に見えるが、下に海の幸を使った数々の料理が隠れている(2018年1月、宮武和多哉撮影)。