●様々なマシンの混走、そして名だたる勇者たち

6月1日15時に決勝レースがスタートし、翌2日15時チェッカーフラッグが振られる、日本で唯一の24時間レース「ピレリスーパー耐久シリーズ2019 第3戦 富士SUPER TEC 24時間レース」。昨年から「耐久の富士」を謳う富士スピードウェイ開催のレースの中でも特に中心的な存在と言えるレースとなります。

ピレリスーパー耐久シリーズ2019ではこの富士を除けば3時間か5時間というレース時間で、24時間レースというのは3時間フォーマットで8回分、5時間フォーマットで5回分というレース時間となり、それだけリスクも苦労も多くなります。

今年の富士24時間で総合優勝を果たしたGTNET GT3 GT-Rのドライバーの方々の顔をご覧いただければ分かる通り、やり遂げた充実感が溢れかえってきています。

昨年から始まったスーパー耐久シリーズの富士24時間レースですが、スーパー耐久シリーズに年間エントリーしている選手含めて6人まで登録できるということもあって今年は名だたる猛者がエントリーをしていました。

特にルマン24時間レースで優勝を果たしたことで有名な荒聖治選手、そしてルマン24時間レースに頻繁に出場している澤圭太選手もエントリー。

そして注目の的といえばモリゾー選手こと豊田章男氏も24時間レースにエントリーしています。

ピレリスーパー耐久シリーズ2019の中の1戦として開催されるため、FIA GT3マシンから1500ccクラスのコンパクトカーまでが一斉にコースを走ります。

KTM X-BOWというレアなマシンも走ります。

またデミオアクセラなどのディゼルエンジンマシンも走っています。

クラス別とはいえこれだけの性能差のあるマシンが一同に会して24時間後のチェッカーフラッグを目指して走るのですから当然数々のドラマが生まれていきます。

●夜の走りが楽しみな24時間レース

6月1日13時の決勝レーススタートに向けグリッドにマシンを並べる合図は、ピレリスーパー耐久シリーズ2019イメージガール「FRESH ANGELS」らによるカウントダウンから始まります。

そのカウントダウンの後、各マシンが一斉にコースインし、マシンをグリッドに並べていきます。

お祭りムードもあって一見華やかに見えるスターティンググリッドですが、24時間という長丁場を控え緊張感も大いに漂ってきます。

そんなお祭りムードや緊張感が混ぜ合わさった6月1日15時、いよいよ24時間レースのスタートとなります。

24時間もレースをするとは思えないハイペースな序盤。クラス分けのせいもあってクラスごとの間隔が如実に現れていきます。ポールポジションは300号車 TAIROKU RACING GT-R GT3

今年一番話題の多いTCRマシンを使ったST-TCRクラスのポールポジションはModulo CIVIC TCR。

スタートから18時まではデイタイムセッションとなりライトオンなどの指示はありません。視界が良好なデイタイムのうちはペースが上がってくるのは当然と言えるでしょう。

そして18時から始まるナイトセッション。コース上の外灯も点灯しマシンもライトオンとなります。またメディアは反射材入りのゼッケンタバードを着用しなければコースサイドでの撮影ができないなど、ナイトレースならではの安全策を講じながらレースが進んでいきます。

しかしレース自体はハイペース。特にFIA GT3マシンを使ったST-Xクラスのトップ争いは熾烈で、日産 GT-R NISMO GT3の2台が抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げていったのです。

耐久レースにトラブルはつきものと言っては言いすぎでしょうか?しかし必ずどこかのチームでトラブルは起きます。

マツダディーゼルマシンを走らせるTEAM NOPROは、デミオディーゼルのトラブル対応中にアクセラディーゼルもトラブルでピットに戻ってきましたが、デミオディーゼルのトラブルを解決しなくてはアクセラディーゼルガレージに入れることができないという状況で、ピットロードでマシンが待機するという非常事態!

しかもただ待機していたわけではなく、チームスタッフの移動用に乗ってきたナンバー付きのアクセラから部品を外して用意していたのです。スーパー耐久、特に富士の24時間では予想外の場所が壊れることもあります。

そんなときのために多くのチームは道路を走る法律に触れない範囲でレース用のマシンと同じエアロや足回りなどを組んだ公道走行可能なナンバー付きのクルマを乗ってきて、いざという時はそこから剥ぎ取ってレースマシンを修復することもあるのです。

そんな戦いがコース上で行われているさなか、グランドスタンド裏では様々な楽しみ方ができるイベントが盛り沢山に用意されていました。特に子どもたちに人気のヒーローショーやピレリスーパー耐久シリーズ2019イメージガール「FRESH ANGELS」のライブステージは大盛況

そんなイベントの中の締めくくりが21時ころから始まった花火!この花火が終わるとナイトセッションもいよいよ深夜時間帯に突入します。

ナイトセッションも含め24時間という長時間に渡るレースではドライバーやスタッフの休憩も重要。食事以外にもおやつは必須項目で、すぐにエネルギーになるようなものを各チームとも用意しています。

圧巻は童夢がCIVIC TCRのカスタマーチームのために用意したCIVIC TCR CAFEというホスピタリティブース。ここではサーキットの安全基準に合わせた専用の焼き機で作る童夢焼きが名物!小倉、レモンクリーム、カレーなど味もなんと4種類。筆者がいただいた中でも小倉餡にレモンピールをまぶしたレモン味は絶品でした。

ナイト・セッションではライトアップされたコースを走るマシンを堪能できます。富士スピードウェイのコース上の照明はかなりこだわりを持って設置されていて、ただ明るくするだけではなくブレーキディスクがブレーキング時に赤く光る様子がしっかり見えるような色温度や明るさになっているのです。

いくつかのチームのドライバー諸氏に伺ったところ自車のヘッドライトや補助灯のおかげでコース上での夜の暗さはさほど気にならないとのこと。コース上の外灯も明るさがよく考えられていて走行の邪魔になるような視界への入り方はないとのことです。

筆者が見たところコース上の外灯は昨年に比べるとかなり増えており、コースサイドからコースの様子がよく分かるという印象でした。

夜の暗さによるトラブルよりも、そもそものレース時間の長さに起因するトラブルが多かった印象あります。スタートから6時間が経過した花火の直後からトラブルを抱えるチームが増えだしたことは否めません。

夜明けからもドラマの連続な24時間レース

夜が明ける4時30分ころ、ナイトセッションが終わりここから次第に富士スピードウェイは明るくなってきます。

明るくなってきたら安心なのか?いいえそんな事はありません。夜が明けてくると日差しの眩さにドライバーもピットクルーも疲労度が徐々に増してくるのです。疲労度が増してくるのはマシンも同じこと。タイヤが脱落し、そのタイヤがコース上を転がることもあります。上の写真はその転がってきたタイヤですが、不幸中の幸いでコースサイドのフェンスに当たって止まったので黄旗対応でレースを中断することなく回収されて事なきを得ました。

24時間レースで重要なのは諦めないこと。これを体現したのがアクセラディーゼル17号車 DXLアラゴスタNOPROアクセラSKY-D。2時間近いピットインで同クラスのトップとは60周以上の差がついておりクラス最下位。

しかし同クラスのマシンにトラブルが発生し、何度もピットに入り修復をしながら走行しているライバルがいたのです。

このライバル、6号車 新菱オート☆DIXCELエボⅩのトラブル修復のピットインの間もアクセラディーゼルは淡々と走り続け、残り30分というところで3位に浮上したのです。しかし3位に浮上した周に 新菱オート☆DIXCELエボⅩはピットアウト。速さに勝るエボXは再び3位に浮上します。しかし諦めることなく走り続けたおかげで一瞬でも表彰台の光明が見えたことは言うまでもありません。24時間レースならではのドラマではないでしょうか。

そんな過酷なドラマを繰り広げてきた富士SUPER TEC 24時間レース。そのドラマチックなレースで総合優勝を果たしたGTNET GT3 GT-Rの総合優勝はピレリスーパー耐久シリーズ2019のどのレースの優勝よりも喜びが大きいのではないかと思います。

キャンプBBQなどで思い思いに過ごしてきた来場者数のべ3万人以上の観客も、コース開放された暫定表彰式には一斉に集まり大歓声で祝福を上げます。走る側も見る側もともに24時間を戦い抜いたという一体感が表彰式を包む……2年目にしてもはや完全に定着したのではないかと思われる富士の24時間レースはこれからもずっと続いていくことを望んで止みません。

(写真・文:松永和浩)

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【スーパー耐久2019】富士SUPER TEC 24時間レースは瞬間の全てがドラマチック!(http://clicccar.com/2019/06/08/839100/)