笑いと涙をほどよくブレンドした、異色の「余命モノ」を再演。

後藤“大王”ひろひとと言えば、かの「パリッと歯ごたえ旅がらす♪」な「群馬水産高等学校」校歌を始め、作品中で必ずと言っていいほど、群馬県をネタにしてイジリ倒している。その後藤作品が、ついに因縁の地? 群馬県に初上陸することに!

上演するのは、2018年に「プロジェクトKUTO-10」で発表した『財団法人親父倶楽部』。関西のベテラン俳優・工藤俊作が企画&出演する名物プロデュース公演で、シリアス目の作品が多いKUTO-10が、初めて本格的なコメディに挑戦して話題になった舞台でもある。余命宣告をされた3人の中年男性たちが「財団法人親父倶楽部」なる謎の組織の助けを借りて、人生で悔いの残っていることを解決していく……という内容だ。

プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部~死んだと思って生きてみる~』2018年初演より。 [撮影]クリス(500G Inc)

プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部~死んだと思って生きてみる~』2018年初演より。 [撮影]クリス(500G Inc)

後藤の「死を扱っても、悲しくはない話に」という狙い通り、予想外の展開とハチャメチャなギャグで悲惨さを払拭し、最後はしんみりしつつも爽やかな笑みが浮かぶような世界。後藤ならではのシュールな笑いとハートフルな面が、バランス良く盛り込まれているので、大王芝居の初心者にはもってこいの一作だろう。

プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部』2018年初演PV。

取り分け後藤ワールドには欠かせない、久保田浩の演じるキャラ「羽曳野の伊藤」のニヒルな狂いっぷりを観るだけでも、足を運ぶ価値は大いにある。「我が故郷をイジリ倒す後藤とはどんなものか?」という挑戦的な意思を持って来た人も、文字通り「笑って泣いて」状態になるとともに、大王のちょっとヒネた群馬への愛を感じて、イジリを許す……どころか「いいぞもっとやれ」な気持ちになる、かも?

参考記事→プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部』工藤俊作×後藤ひろひとにインタビュー

文=吉永美和子

プロジェクトKUTO-10『財団法人親父倶楽部~死んだと思って生きてみる~』キャスト。(左から)長橋遼也、保、工藤俊作、久保田浩、後藤ひろひと、藤本陽子。