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1974年昭和49年)8月、天皇陛下は2週間にわたってオーストラリアを旅行された。14歳にして初めての、お一人での海外旅行だった。

メルボルンの民家にホームステイされて各地を訪問された陛下だったが、とりわけ楽しみにされていたのがエアーズロック登頂だ。本誌は「浩宮さまオーストラリア体験旅行現地取材第2報」(’74年9月12日号)にて、その模様を報じている(以下、《》内は同記事より)。

巨大な一枚岩に挑まれる陛下のいでたちは、水色のシャツに濃紺のセーターとスラックス。黒のカーボーイハットを被り、サングラスをかけていらした。

急な岩の斜面を登る陛下のお姿を上から撮影するため、まっさきにカメラマンが登り始める。

《岩の上に寝ころがって、ハアハアあえいでいると、早くも追いつかれた浩宮さまが、「あれッ、もうダメなの?」そういって、お笑いになった》

いまでは登山家で知られる陛下は、このときも涼しい顔。息をつきながら登る報道陣や随行の侍従たちを見かねて、陛下が「それでは、ここらで小休止にしましょうか」と提案される場面もあった。

頂上に着くと、陛下は登頂記念のサイン帳に“Naruhito”と署名された。報道陣に「どうぞ、みなさん、いっしょに撮りましょう!」と気さくに呼びかけられるなど、終始ニコニコ笑顔。

下山の途中には、侍従が缶入りの飲み物を陛下に差し出した。

《「殿下、ビアーをどうぞ」「えっ、ビールですかあ?」》

驚かれる陛下。しかし、缶の英文字を読んで気づかれる。

《缶のラベル見つめて、「なんだ、ジンジャーだ」と一気にゴクゴク。こちらでは、その飲料を”ジンジャビア”という》

念願のエアーズロック登頂を遂げられた陛下にとって、至福の一杯であったに違いない。