昨年5月、突如インスタグラムに現れた“昭和のおじさんをご存じですか?


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 黒縁メガネちょび髭というビジュアルインパクトに加え、サラリーマンの何気ない日常のひとコマを切り取ったような写真からは、現代で撮影されたとは思えないほどの昭和感が漂っていて、昭和を知らない世代からも「なんだか懐かしい」「お父さんの昔の写真みたい」「かわいいなどと注目を集め、瞬く間にフォロワー数6万人を突破した話題のアカウントです。


 アカウント主は、お笑いコンビ「イワイガワ」の岩井ジョニ男さん。4月23日に未公開写真も盛り込んだインスタ写真集『幻の哀愁おじさん』文藝春秋)も発売されたほど、“インスタ映えおじさん”としても人気のお笑い芸人です。令和という新時代を迎えても昭和を貫く岩井さんや、“おじさん”の魅力はどこにあるのか? インスタ映えの秘訣とともに、ご本人にお話を伺ってみました。


◆インスタ人気の秘訣は“自然体”
――インスタグラムのお写真は、どれも現代で撮影しているのに、昭和感を上手に切り取られていますね。インスタ映えのコツなどはあるのでしょうか?



お笑いコンビ「イワイガワ」の岩井ジョニ男さん



岩井ジョニ男さん(以下、岩井)「僕は20代からこのスタイルで芸人をやっていて、普段からこの格好で電車に乗るし、居酒屋にも行くんです。だから、インスタグラムも自然体なんですよ。ただ、時代が私に違和感を持っているから、今の日本の街を歩いているだけでタイムスリップしているような感じに囚われるのかもしれませんね。


 逆に、もしインスタ映えを狙って『昭和のおじさんが過去からやってきた』みたいなコンセプトにしていたら、嘘っぽくなったかもしれません。なので、あえて“インスタ映え”みたいなことはせず、自然体を出すのがいいんじゃないでしょうか。僕の場合は、それが『昭和のおじさん』だったというだけのことかと思います」


おじさんは「かわいくないよ」
――若い女性を中心に「かわいい」と言われていることはどう感じていますか?


岩井よくわからないですね(笑)。子どものころから老けていて、かわいいなんて言われたことがなかったので、自分でもまだ信じられません


 ただ、僕が年齢的にもおじさんになったことで、『本物のおじさんだ!』って思われるくらい、おじさんとして完成したということなのかもしれないですね。このちょび髭も、『本物だったんだ』と言われることはありますが、今は誰にもいじられません。年齢が追い付いたことで、眉毛とかと同じように、違和感がなくなるくらいあまりに自然になってしまったのでしょう」


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――かわいいと言われることで、岩井さんの「おじさん」に対するイメージが変わったりしましたか?


岩井「自分がおじさんに抱いたイメージとはやっぱり違いますよね。それに、昔は『かわいい』と言われても、言っている側が優越感に浸っているような、みじめさや可哀そうに近い印象を受けたのですが、最近の若いかたが言う『かわいい』は、おじさんキャラクターとして見ているように感じます。ただ、おじさんかわいいと言っている人たちに言いたいのは、『かわいくないよ、近くで見たら』ということ。だって、ただのおじさんですから(笑)


◆“おじさん”は子どものころから憧れだった
――岩井さんはおじさんになったことをどう感じていますか?



岩井ジョニ男『幻の哀愁おじさん』(文芸春秋)



岩井「やっとおじさんになれました、憧れのおじさんに。僕ね、子どものころからおじさんのやることすべてがかっこいいなって思っていたんですよ。スーツを着ることも、昼間から酒飲んでるとかも(笑)。それで若いころからおじさんの格好をしていたんです。顔も老けていたから、20代前半でも“おじさん”って言われていてうれしかったのですが、やっぱりまだ20代だから、本当のおじさんじゃなかった。


 でも今は、階段をダッシュで登れないとか、体のあっちこっちが痛いとか、すぐ眠たくなって夜更かしできないとか、生活している中でもおじさんを実感できることばかりで、『おじさんになれて本当によかった!』って思っています」


――年齢を実感する現象はネガティブに捉えがちですが、岩井さんはすごく前向きですね。


岩井「無理ができなくなることで、そんなに頑張らなくてもいいんだなって気づけましたから。若いときは、もっと頑張れとかしっかりやれって周りから言われ続けるし、ダメだからこそ小さなプライドで虚勢を張ったり、ちょっとしたことでクヨクヨしたり、いろいろ大変じゃないですか。


 でも、おじさんになると、とやかく言われることもないし、身の丈がわかって変なプライドもなくなるし、忘れっぽくなって、ツラいことも何を悩んでいたかも忘れちゃって、生きていくのがすごくラクになったんですカッコよさや流行を求めたりもしなくなるし、みんなに愛されるのは難しいとわかっているから、気の合う人と生きていくようになったり、おじさんってそういうものかなぁっていう感じがありますね」


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――おじさんを実感して、変化などはありましたか?


岩井「昔は、すごく稼いで、いい車に乗っていい家に住んで、ジャグジーで水着の美女とシャンパン飲んで……みたいな漠然とした野望がありましたけど、だんだんと、このくらいしか稼げないとか、スーパーで買った半額の総菜をつまみに家で飲みながら、『これ半額だけどすごいウマいじゃん!』みたいな方が幸せだとか、“自分”がわかってきました。見栄=幸せでも何でもないって気づいたんですね


 自分がどういう人間かわかると自然体でいられるようになって、そのうち後輩に頭を下げたり、妻や子どもにも気を遣えたりするようになって、いろいろなことが許せるようにもなりました。今日も(インタビューに)マネージャーが来ないんですけど、まぁしょうがないかって思っています(笑)



 老化現象も喜びに感じるという岩井さん。自然体で過ごす“おじさん”だからこそ、インスタグラムでも人気を集めたのかもしれません。とはいえ、「等身大の自分」を受け入れるのはなかなか難しいもの。そこで次回は、加齢や現実の自分を受け入れる方法をお聞きしてみたいと思います。


<取材・文/千葉こころ


【千葉こころビールと映画とMr.Childrenをこよなく愛し、何事も楽しむことをモットーに徒然滑走中。恋愛や不倫に関する取材ではいつしか真剣相談になっていることも多い、人生経験だけは豊富なアラフォーフリーライター



(画像:岩井ジョニ男公式Instagramより)