北朝鮮金正恩委員長は昨年11月、中国との国境に面した貿易の要衝・新義州(シニジュ)市を大きく生まれ変わらせる「新義州市建設総計画」をぶち上げた。現地ではその後、住宅建設など各種事業が進められているもようだが、この計画の一環として、10万人の市民を強制移住させるプランが存在するという。

平壌の内部情報筋は、デイリーNKに次のように伝えてきた。

「まず、新義州から追放されるのは中国に不法滞在した経歴がある者、薬物関連犯罪に関わっている者、不純物録画物(韓流ドラマなど)所持をしていた者や、ほかに当局から取り締まりを受けた前歴がある住民だされた経験がある人などの犯罪歴がある住民だ」

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脱北や覚せい剤の乱用、韓流ドラマの蔓延はいずれも北朝鮮当局が頭を悩ませている問題だ。

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「実際のところ、こうした条件で抽出するなら、わが国民の半分が対象になるだろう。人口36万人の新義州で、10万人を選り分けるのは難しいことではないはずだ」(情報筋)

また、平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も「昨年、元帥様(金正恩氏)が現地を訪れた際、不純分子を追放するようにとの内容の指示が下された」という。不純分子の追放に続き、素行が「良好」とされた他地域の住民が市内に移住させられるもようだ。

言うまでもなく、強制移住のプランは現地住民には伏せられている。情報筋は「このプランは、2020年から本格的に進められる予定だ。そのため当局は、住民に悟られないようにしている」と述べている。

このようなプランが伝われば当然、住民からは反発が出る。

だがいずれにせよ、大規模な都市再開発には老朽化した建物の解体が大量に行われるため、強制退去させられる住民から反発が出る。当局としては、「不純分子の追放」をそうした反発を抑え込む口実として利用する考えもあるのかもしれない。

北朝鮮で幹部の地位にあった脱北者は「過去にも、当局の必要に応じて住民を追放することがしばしばあった」とし、「1960年代に平壌市の人口過密が問題になった際にも、『疎開事業』の名の下に、相当数の住民を追放した。2000年代初頭に羅先(ラソン)市が特区として開発される際にも、薬物犯罪者や不純分子の追放を行っている」と述べた。

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では、追放された人々はどうなるのか。

「幸運な一部の人だけが、新義州の郊外に新たな居住地を得られるだろう。あとの大部分は平安北道からも出され、まったく縁のない土地に追いやられるはずだ」(前出・脱北者)

だが、こうした行いが過去にも繰り返されていたとは言っても、なし崩し的な市場経済化の中で大なり小なり私有財産を持ち、生き方の自律性が高まっている最近の北朝鮮国民である。強制移住で生じた不満は後々までため込まれ、いずれ体制を脅かす火種にならないとも限らない。

またそれ以前に、経済制裁下での難局の中で、大規模な都市再開発が本当に可能かどうかが問題だろう。

金正恩(キム・ジョンウン)氏