声優・歌手の中島愛が、自身初となるベストアルバム『30pieces of love』を6月5日リリース。その制作秘話を聞いたインタビューが、発売中のアニメディア2019年7月号に掲載されている。「超!アニメディア」では、本誌記事内ではお届けしきれなかった部分も含めたインタビュー全文をご紹介する。


アーティスト中島愛の歴史が詰まった30曲の名曲たち

――30歳にベストアルバムリリースしようというのは、いつから決まっていたのですか?

 今年の1月にリリースした『10TH ANNIVERSARY COVER MINI ALBUM ラブリータイム・トラベル』の企画が上がった、昨年の夏とほぼ同時期でした。そのときは具体的なことは決まっていなかったのですが、私は数年前から2019年誕生日6月5日)が水曜日だということに気づいていたんです。“持っている人”は記念日とリリース日が被るイメージがあったので、私にもそんな日がないかなとずっと探していて。CDのリリース水曜日であることが多いので、30歳の誕生日水曜日のこの日に何か出せたらいいなと思っていました。その後、打ち合わせで「6月ぐらいがいいと思う」とスタッフの方に言われたときに、すかさず提案しました(笑)。それから、30歳なので30曲にしようと決まった感じです。

――これまでにシングル12枚、カバーミニアルバムをのぞいてもアルバムも4枚リリースされていますから、30曲に絞るのは大変だったのでは?

 絞るというよりは、選出するというイメージでした。どの曲にも思い入れはあるけれど、今回の代表選手は君たちだよ、みたいな。ただ、30歳での初ベストアルバムは二度たることではないので、自分の独断と偏見で曲を入れるのがいいのかなとも思って選んでいきました。

――『30 pieces of love』の選曲基準はどう決めましたか?

 まず、シングルのA面曲。両A面はどちらも入れたかったので、そうやって選んでいってDisc1の15曲が確定しました。Disc2では、一定の時期やどれかのアルバムをまるごと飛ばしたくなかったので、均等に各アルバムから印象深かった曲を選びました。



――意外とすんなり決まりました?

 決まりました。スタッフの方と選曲会議のようなものもしたのですが、不思議と浮かび上がってくる曲が共通していたんです。ただ、livetuneさんとコラボさせていただいた「Transfer」や、ラスマス・フェイバーさんのCDに呼んでいただいた「Ame(Rain)」は私から提案して入れていただきました。

――全体の曲のバランスは考えましたか?

 企画当初から年代順に曲を並べたいと思っていたんですが、「Be MYSELF」や「Sunshine Girl」は元気な曲なので、そのあとに続く曲はしっとりしたものがいいとか、そういう選曲の仕方をしました。私は割と年代ごとにカラーを決めて活動していたので、アルバムから選ぶだけで自然と曲調もバラバラになりました。

――改めて、デビュー当初の曲を聴くと、どんな印象がありますか?

 まず、声が若い(笑)。今とはまた違った張りがありますね。マスタリングに立ち会わせていただいて、1曲ずつ順番に曲を聴いていったので、声や歌い方の変化がハッキリとわかるなと感じました。「このときはこういう歌い方にチャレンジしたかったんだね」とか「頑張ってるな」とか、客観的な視点で聴いちゃっていますね(笑)

――自分として、転機になったと思う曲はどれですか?

 『たまゆら』関連の曲とかもそうなのですが、やはり「TRY UNITE!」をはじめとする、ラスマスさんとタッグを組んだ曲かなと思います。今までとは全然違う曲調を、海外のクリエイターの方と作るという点で転機だったなと思います。

――Disc1には新曲「Love! For Your Love!」が収録されます。制作のコンセプトは?

 今の年齢にこだわりたかったので、20代のうちに、20代の象徴のような曲を歌っておきたいなって思ったんです。これから先、活動していくなかで、30代以降にデビュー曲「天使になりたい」のころの音楽性に戻れるチャンスはあまりないかもと考え、ファーストアルバムに立ち返って、デビューのころの私が好きだったって言ってくれる人も喜んでくれるような曲を、と考えました。

――具体的には、どんな曲になった?

 100%前向きな曲です。さびしいけど頑張るとか、つらいけど前を向くとかではなく、“100%最高!”という世界観を歌いたくて、(プロデュースの)北川勝利さんにオーダーしました。人生の先輩である北川さんに“大人って楽しい”と肯定してもらえるような曲を書いてもらいたかったんです。それから、アニバーサリーソングなので、今までの自分のCDタイトルや曲名を盛り込んだパーティーソングにしてほしいこともお願いしました。

――たしかに、ものすごく前向きです。

 北川さんの職人魂を見せていただけました。私は好き勝手に自分の希望を言っていただけでしたが、それを全部キャッチしてくださって。この曲のレコーディングが終わって、ミックスをしているときに、横にいた北川さんに「この曲でデビューするアイドルがいたら、CD買います」という謎の感想を言ったくらい(笑)。そのくらい好きだったんです。自分の思うアイドル像が具現化された曲だったので、歌うのも楽しかったです。

――ということは、レコーディングスムーズでしたか?

 この曲はセリフが多いこともあって、そこは何回かトライさせてもらいました。なかなか振りきったところでセリフを言うのが難しかったです。でも、個人的には明るくあっけらかんとしたセリフのうしろで大人っぽいコーラスを入れているので、そのギャップにも注目してほしいです。

――ファーストアルバムのころに近い音楽性ということで、デビュー当時の歌い方を意識したりはしましたか?

 思い出しながら歌ったところもあります。ただ、今のニュアンスを全部押さえつけてしまうのもつまらないかなと思って。フレッシュだったころの自分をただなぞるだけではあまり意味がないとも感じたので、セルフオマージュのような気持ちも持ちつつ、フレーズごとに細かく歌い方は設定しました。

――年齢感にピッタリの大人っぽい歌を歌うという案もありましたか?

 ここで大人っぽい曲が来ると、あまりにも予定調和かなと思ったんですね。一連の流れを想像してくださる方もいるかもしれないですが、それを一度裏切っておかないといけないなと。やけになっているわけではないのですが、「1回若返りたいんです!」って言っちゃったほうがスッキリしそうですし、やれるだけ元気な私を表現できて、すごくやりきった感はあります。

――新曲はMVも撮影されていますね。

 こちらは正面から今の年齢を切り取ったものがいいんじゃないかと思って、すごくストレートなものになりました。ジャケット写真の持つパーティー感だけが共通していればいいのかなと。

――ジャケットも含めて、とてもキラキラした感じですよね。

 カバーミニアルバムベストアルバムを同時にやろうと言われたからかもしれませんが、派手なパーティー感は両方に共通していますね。アートディレクターも同じ方にお願いしているので、一連のプロジェクトみたいに捉えているのかもしれません。

――笑顔がめちゃくちゃ幸せそうですね。

 撮影がすごく楽しかったので(笑)。だって、私はバースデーガールとして、座ってニコニコしていたらOK、みたいな撮影だったんですよ! このケーキは撮影が終わったら食べられるのかなとか(実際に終わったあと食べました)、飾り付けがすごいなとか、それを考えていただけで終わったなと。もともとあまりポジティブに物事を捉えるタイプではないのですが、今回はあっけらかんとしたビジュアルにできたので、大成功ですね。

――バースデーガールとはいえ、パーティードレスではないんですね。

 日常のなかでうっかり祝われちゃったくらいがいいなと思って、やや派手さを抑えたツーピースにしてもらいました。あとは、毎回CDを出すときには色のコンセプトを考えているのですが、カバーミニアルバムからの延長で今回はピンクにしてみようと思って。スカートピンクにしています。

――初回限定盤に収録されるBlu-rayには、フィリピンで撮影された特典映像が入っています。

 昨年9月に『Cosplay Mania 2018』というフィリピンイベントに参加させていただいたのですが、そこでのライブバックステージ、それからちょっとしたドキュメンタリーも撮影しました。10人くらいスタッフの方がいて、多くの方に自分の故郷を見ていただけて、すごく楽しかったです。

――この特典映像では、タガログ語楽曲「Kailan」のカバーも聴けるんですよね。

 そうです。この曲は、片思いの曲で、私が生まれたころのフィリピンヒット曲なんだそうです。子どものころ、フィリピンに遊びに行ったときに車のラジオから流れていて知った曲です。タガログ語はネイティブじゃないので、母をスタジオに呼んで、発音指導をしてもらいました。母が仕事場に来ることはないので不思議な感じでしたが、それも含めてちょっと面白い体験でした。

――タガログ語は難しいですか?

 感情をどうやって表現すればいいのかが難しくかったです。でも、練習を何度もしていったら、母から「思いのほかできている」と言われました。普段あまり褒めない母が肯定的に言ってくれたので、ほっとしています。とにかく、自国と違う言語の歌を歌って感情を入れられる人を尊敬しました。あと、ライブでもカバーしていた時期があったので、今回音源が残せたのがうれしかったです。

――同日にはアナログ盤『8 pieces of love』もリリース

 レコードアナログで聴きたい曲、アナログで映える曲を選びました。生演奏の曲のほうが温かみも出るかなと思いつつ、デジタルな雰囲気の曲をアナログ化するのにも意味があるのかなと考えて、今回は生音の曲とデジタルの曲を半々で入れました。

――ランカ・リーとして歌った「星間飛行」が収録されています。

 CDはA面だけで15曲埋まったこともあり、キャラクターソングキャラクターに寄り添った曲は意図的に入れませんでした。いつか「キャラソンベスト」みたいなものを出せるまで頑張りたいなという思いもあってのことですが、「星間飛行」だけはどうしてもレコードで聴いてみたかったんです。

――ほかの7曲はどのように選んだのでしょうか?

星間飛行」「TRY UNITE!」「Transfer」「サタデー・ナイト・クエスチョン」の4曲はクラブでDJの方にかけてもらいたくて選んだ曲です。残りの4曲は生音のよさを感じてほしいなと思って入れました。

――実際にレコードを聴いた感想は?

 スタジオでカッティングに立ち会い、針を落として曲を聴かせてもらって、空間の広さを感じました。まるで、レコーディングスタジオに入って歌ったときのようで、お菓子ミルフィーユのように層が厚くなったという印象です。デジタル曲も同じように空間の広さも感じたので、やっぱりレコードで流す曲は独特なんだなと思います。

――大きなジャケットも、アナログ盤ならではですよね。

 私もレコードプレイヤーを持たずに、ジャケット目当てでレコードを集めていた時期もありましたし、飾るだけでも楽しいので一度手に取ってみてほしいです。自分のジャケットがここまで大きくなるのは初めてなので、自宅のレコードの棚に早く並べたいです。

――7月21日には、アニバーサリーライブも決まっています。

 アルバムタイトルをそのまま使うと、ベスト盤の曲しか歌わないんじゃないかと思われそうで、いろいろ考えた結果の「Best of My Love」というタイトルにしました。ベスト盤を中心に、ベストオブベストな選曲をするつもりです。みんなそれぞれに期待する曲が違うと思うので、正直セットリストアルバムの選曲より悩みます……。でも、ここは開き直って、中島愛視点での10周年を振り返るような、そんなセットリストにすればいいのかなと思っています。でも、今考えるとデビューのころは、曲が足りなくて同じ曲を2回歌ったりもしていたので、歌えない曲があると悩めるのは本当にぜいたくなことですよね。

――アルバムタイトルの『30 pieces of love』はどのように決まったのでしょうか?

「30」を付けたい一心でした(笑)。それから、自分の名前「愛」にちなんで「love」は入れたいなと。結果、初回限定盤のアートワークにも反映されているようにパズルのピースを愛のかけらに見立てるという、ロマンチックな方向で決まりました。

――先ほどからお話をうかがっていると、ものすごく「30歳」を押しますよね。

 なんでこんなにこだわっているのかというと、「30歳」って否定的に捉えられることが多いと思うんです。「もう30歳なのか」みたいな。私としては30年間頑張ってきたんだから、そう言われるのはイヤなんです。だからこそ、あえて年齢を押し出して、こんなに頑張ってきましたと大声で言いたいなと思って。私としては、20代もよかったけど、30代はもっといいものにするんだという決意表明的なところもあります。

――そんな中島さんは、30代になって何をやりたいですか?

 収録曲を見ていて、こんなにたくさんタイアップをいただけていたんだなということがうれしかったんです。なので、このアニメのOPやED、挿入歌を中島愛が歌ったらいい作品になりそうだなって思ってもらえるような、そんな30代になりたいですね。タイアップがついてない曲も制作は楽しいんですが、タイアップのある曲は、自分以外にアニメスタッフの方や多くの関わる方の思いが込められている分、よりいっそうやりがいがあるんです。ですから、そういう曲を任せてもらえるようになりたいです。私にとってタイアップに選ばれることは、役をいただけるのと同じくらいうれしいことなんです。ですから、自分の頑張りをこれからも歌に込めていきたいです。

――スタッフの方とタッグを組むのがタイアップですが、組むといえば、2月に行われた「犬フェス!」では、May’nさんと一緒に「ライオン」を歌われていましたね。

 やっと歌えたな~という気持ちがすごく大きいです。May’nちゃんは逆で、歌うことでこの曲を守ってくれていると思うのですが、私はふたりで歌うことでこの曲を守りたいと思っているのでソロのライブでは「ライオン」を歌わないんですね。それもあって、“ふたりで歌う”という願いをかなえることができてうれしかったです。

――May’nさんはステージではクレバーな印象があるので、終わったあとにハグに行かれたのに驚きました。

 私も同じ印象を持っているので、ビックリしました! たぶん、あのときの私は、驚きすぎてへっぴり腰だったんじゃないかな……(笑)。「ライオン」の落ちサビで彼女がウルウルしているのもわかって、歌い終わったあとに「うまく歌えなくてゴメンね」っていう連絡が来たんです。私、彼女がこんな風にステージで感情を露わにするところは、初めて観たかもしれないくらいだったので、驚きの連続でした。でも、お互いに当時からどんどん経験を積んでイッテイルノデ、その経験をお互いにぶつけ合えて本当に楽しかったです。

――「犬フェス!」のソロのステージはどうでしたか?

 フェスは自分のことを知ラナイ人もいる場所なので、そういう方にアピールできるという意味でも楽しい場所でした。でも、出ていったら緑のペンライトを振ってくれている方も多くて安心しました。あとは、ずっとニヤニヤしていました。この後「ライオン」歌うんだよって(笑)

――イントロが聞こえたときのざわめきはすごかったですよ。

 イヤモニを外して聞きたかったですね(笑)

――ジャンルとして、30代で歌ってみたいものはありますか?

 10代、20代のころは周りの人がいいと言ってくれるものをやりたかったんですね。みんながいいと思う自分になりたかったし、そういう自分を試したいと思っていて。でも、これからはどうしたいかに向き合う場面も増えるのかなとも思って、今後についてはじっくり考えながら活動していきたいですね。たぶん、いままでとは違う方向に走りたくなることもあるんじゃないかなと思うんです。でも私もアイドルファンなので、「●●ちゃんと言えばこれ」という定番を求める気持ちもわかります。ですから、新しい挑戦はするけれど、このベストに入っている雰囲気をまとったまま大人になりたいなと思います。とかいっておいて、急に路線変更していたら、温かく見守ってやってください(笑)

――では、最後に読者にメッセージを。

 昨年から続いてきた10周年イヤーが締めくくりに入りました。多くの方に盛り上げていただけて、とても楽しかったです。このベストを出して7月にライブもあります。また新しい1年が始まりますので、ぜひCDを聴いて、ライブに遊びに来てください。

取材・文/野下奈生(アイプランニング)

PROFILE
【なかじま・めぐみ6月5日生まれ。茨城県出身。e-stone music所属。2009年シングル「天使になりたい」でアーティストデビュー。以後、シングル12枚、アルバム4枚、カバーミニアルバム1枚をリリースした。声優としては、アニメ聖闘士星矢 セインティア翔いるか座の美衣役などを担当。

『30 pieces of love
発売中
フライングドッグ

初回限定盤:5,500円
通常盤:3,500円
アナログ盤『8 pieces of love:3,000円(各税別)

※画像ギャラリーはこちら(https://cho-animedia.jp/music/98140/)
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 中島愛の初めてのベストアルバム。CD2枚組で、Disc1にはシングルのA面曲を15曲と新曲「Love! For Your Love!」の全16曲、Disc2には自身がセレクトした全14曲を収録。初回限定盤には、「Bitter Sweet Harmony」や「Love! For Your Love!」のMVなどを収録したBlu-rayを同梱する。アナログ盤『8 pieces of love』も同日にリリース

ライブ情報
中島愛 10th Anniversary LiveBest of My Love~』
公演日:2019年7月21日(日)
開場:16:00 開演:17:00
会場:東京・恵比寿ザ・ガーデンホール
チケット代:6,800円(税込) ※ドリンク500円別途必要

中島愛公式サイト
http://e-stonemusic.com/mamegu/


中島愛公式サイトフライングドッグ
https://www.jvcmusic.co.jp/flyingdog/-/Artist/A021733.html


中島愛公式Twitter
https://twitter.com/mamegu_staff