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 永久凍土のおかげで、その獣の頭部にはまだ脳が残されていた。

 ロシア、サハ共和国北部のアビー地区を流れるチレフチャフ川の岸辺で、世界初となる更新世のオオカミの成体の完全な頭部が発見された。

 推定では死後4万年が経過しているというのに、被毛はほとんどそのまま残され、立派な牙だって生えている。

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成体のオオカミの頭部はこの地域で初めての発見

 オオカミ頭部は切断された状態で地元住民が発見し、サハ共和国のマンモス研究施設に持ち込んだ。

 頭部の長さは40センチほどで、現在のオオカミの胴体の半分もある。またオオカミは当時2~4歳程度の成獣だったと考えられている。

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 これまで、オオカミの子どもの凍結した死骸は発掘されたことがあるが、成体のオオカミの頭部が見つかったのは初めてだという。4万年たった今でも軟組織は保全されており、今後の研究に大いに役立つことだろう。

 研究施設は脳と頭蓋骨(ずがいこつ)内部のデジタルモデルを作成してさらに詳しく調べる予定で、DNAもスウェーデン自然史博物館で解析される予定だ。

ホラアナライオンの赤ちゃんも発見

 オオカミの頭部と併せて、きわめて保存状態の優れたホラアナライオンの赤ちゃんも発見されている。

 「スパルタク」と名付けられたライオンの赤ちゃんは、体長40センチ、体重800グラムほどで、出産後間もなく死んだようだ。

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 ホラアナライオンは2015年と2017年にも3頭が発見されているが、今回の発見はそれに続くものとなる。

 CTスキャンで調査した東京慈恵会医科大学の鈴木直樹史によると、それらの筋肉や内臓、脳までもが良好な状態で残っているという。

 現生のライオンオオカミと比較して、その身体的な特徴や生態について調査したい、と鈴木氏はコメントする

温暖化による永久凍土の融解

 なお最近、このあたりでは温暖化のせいで永久凍土が解け、こうした動物の遺体が発見されるケースが増えている。

 たとえば4月には、同じく4万年前の永久凍土によって保存されていた子馬の死体から、尿や血液といった体液が採取された。

 2016年には、シベリア西部で流行した炭疽菌について、75年前に死に、そのまま凍りついていたトナカイの死体が解けたことが原因と指摘する研究も発表された。

References:Still snarling after 40,000 years, a giant Pleistocene wolf discovered in Yakutia/ written by hiroching / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52275437.html
 

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