「年金は100大丈夫だから積み立てましょうと国は推進した。それが年金だけでは老後、2000万円不足という。年金詐欺みたいなもの」

 人気落語家の立川志らくがテレビでこうコメントするなど、大混乱に陥っている金融庁報告書が浮き彫りにした「老後2000万円不足」問題。ネットでも「ふざけるな!」「自分で老後に備えろと政治家が口にするな!」など怒り大爆発だ。

 50%台の高支持率をベースに夏の参院選、もしくは衆参ダブル選挙勝利を目論む安倍政権には、あの悪夢再来が忍び寄っている。2007年の第一次安倍政権時、「消えた年金記録」で参院選はボロ負け、退陣に追い込まれた。今回の2000万円問題炎上に、安倍政権は「表現が不適切だった」と火消しに躍起だ。

 「事の発端は、金融庁金融審議会が6月に公表した『高齢社会における資産形成・管理』の報告書です。それによると、人生100年時代、年金だけでは老後の資金を賄うことができない。例えば、95歳まで生きるには年金以外に夫婦で2000万円の貯えが必要と唱えたのです」(経済部記者)

 総務省2017年家計調査報告、厚労省2018年統計などを基にした金融庁報告書の詳細はこうだ。夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の一般的な年金生活世帯で、1カ月の収入は約21万円。支出は約26万円。収入より約5万円支出が多く赤字となる。

 「だから年金資金のほかに今後20年で1300万円、30年で2000万円が必要と試算。その上で、公的年金は老後の柱だが、若いうちから資産運用に取り組むべきとしたのです」(同)

 庶民が怒るのは当然だ。
2004年、当時の小泉内閣は年金保険料を値上げした。そして、現役時代の6割程度もらえるはずの年金支給額は大幅カット。そうした“痛み”に耐えれば『年金は100年安心』と国が太鼓判を押し、国民は我慢してきた。それが今度は“2000万円不足するから、その分は自分で何とかしろ”ですからね。年金ドロボーと言いたくなりますよ」(野党関係者)

 さらに、火に油を注いだのは金融庁トップの麻生財務相の態度だ。
「『おれが生まれた頃の平均寿命は47歳でそれが100歳ってんだろ。人生設計を考える時に、100歳まで生きる前提で退職金を計算してみたことあるか? きちんとしたものを今のうちから考えておかないといかん』と横柄な上から目線の発言を繰り出す始末。案の定、批判が高まると、麻生氏は『豊かな老後を送るため、上手に資産形成する意味で、不足額の赤字表現は間違い』と釈明した。菅官房長官も『表現が不適切』と火消しに追われた。政権の№2、№3が金融庁報告書の内容を否定するのは極めて異例です」(政治担当記者)

 対する野党は徹底追及の構えを見せている。
「現状では次の参院選で野党はほぼ全滅と強い危機感を抱いていた野党唯一の政治家小沢一郎自由党代表です。そこに飛び込んできたのが2000万円問題。小沢氏はこの問題が野党を勝利へ導く千載一遇のビッグチャンスとして動き出しました」(同)

 その戦略を小沢氏周辺関係者が明かす。
「安倍内閣の支持率はJNN系列の最新6月調査で59・1%と、5月より1.7%もアップし、ますます強固になりつつある。しかし、小沢氏はそこに安倍内閣の弱点を見つけたわけです」

 安倍内閣の高支持率を支えている中心は、18歳から30代の男性層というのは多くのマスコミ調査でも明らかになっている。背景は就活が超売り手市場など、アベノミクスの継続を望む世代が多いからだという。

 しかし、今回の2000万円問題は支持層を根底から覆すことになりそうだ。今年初め、都市銀行系金融機関が30〜40代という社会の中核を担う世代にアンケート調査したところ、実に2割以上の人が貯蓄ゼロと判明した。割合は対前年比で5%以上増加。金融広報中央委員会の’18年調査でも貯蓄ナシは2人以上世帯で22・7%、独身では38・6%にも上るのだ。

「“年金以外に2000万円貯めろ”などは現状の若年世代では、到底無理な話です。そして、貯蓄できない最大の理由は実質賃金が上がらないのに、物価は上がっていくばかりだからだ。若い世代、中核世代が老後を迎える頃、半数近くは破綻寸前で生活できなくなることを安倍政権が認めたわけですから、支持離れが巻き起こるのは自然な流れです」(前出・野党関係者)

 安倍自民参院選大敗の兆しはある。
トランプ大統領の国賓訪日で、米農産物関税の大幅引き下げを密約した可能性がトランプ大統領ツイッターからプンプン漂う。地方の農村部を中心に不安が膨張し、反自民と化すはず。一方、都市部では2000万円問題への不安から年金大規模デモが起きる可能性も高まっています。小沢氏はこれらを見据え、改めて小沢7選挙戦術を徹底してくる。つまり、(1)川上から川下へ(2)日50カ所の辻立ち(3)ポスター3000〜5000枚貼る(4)演説よりも1対1(5)ミニ集会徹底(6)路地裏選挙カー(7)ノー悪口。2000万円問題は国民へ訴える格好の争点です」(同)

 第一次安倍自民党は消えた年金問題で、参院選は改選64議席から37議席へ激減、大敗を喫した。国民生活に直結する2000万円問題は大きなうねりとなる。