皇室と英国王室、互いに長い歴史と伝統を有する日本とイギリスという国で生まれ、育まれたセンチュリーとファントム。そしてSクラスとプラットフォーム&ボディを共有するとはいえ、依然としてハイエンサルーンとしての高いポテンシャルとネームバリューを誇るマイバッハ。ここでは、そんな世界のショーファードリブンの頂点に君臨する3台のコクピットまわりやユーティリティ、そしてスペックを比較検証してみたい。 REPORT●山本晋也(YAMAMOTO Shinya)(身長=163cm)

h2トヨタ・センチュリー
全幅:1930mm
荷室開口高:690mm ミラー・トゥ・ミラー:2205mm
全長:5335mm ホイールベース:3090mm 全高:1505mm

日本専用のショーファードリブンとしてセンチュリーらしさを再解釈してデザインされたボディ。守るべき伝統的スタイルの中に、ハイブリッドを示すCピラーのエンブレムやウインカー内蔵ドアミラーなどが、現代的にアップデートされたことをアピールする。後席の窓枠は、乗員の姿が美しく見えるよう黄金比(1対1.618)となっているのはさすがだ。

ボタン類はプロフェッショナルドライバーが肩を浮かせることなくスマートに各種操作を行なえるようなレイアウトとなっている。メーターはオーソドックスな二眼式+7インチのマルチインフォメーションディスプレイで、表示内容はステアリングの十字キーによって切り替えられる。大柄なボディだが見切りはよく、取り回しやすく感じるほどだ。

フロントシート高:600mm

運転席は10ウェイ電動調整式。ステアリングのチルト&テレスコピックも電動で調整できる。乗降時にはシートが後方にスライド、ステアリングも自動チルトするため、非常に乗りやすい。シート自体は腰を包む込むタイプとなっている。

リヤシート高:640mm

フロントよりステップが低く、開口部も広いため和服でも自然に乗り込めるのは日本のショーファードリブンらしい。標準状態では姿勢よく座るが、スライドとリクライニングを調整すれば極上のリラックス空間になる。座面長は480㎜。

5.0ℓ V8エンジンに2モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用。EVモードもあり、VIPに相応しい静かでスムースな走りを可能としている。
最小幅:1120mm 奥行き:930mm

センチュリーのニーズを考えれば、必要十分なトランクを確保。容量は484ℓ(VDA式)を実現し、9.5インチのゴルフバッグ4個が収まる。

フラッグシップに相応しくタイヤはブリヂストンのレグノGR001。専用アルミホイールにはノイズリダクション機能が備わる。標準サイズのスペアタイヤ&ホイールをオプションで選べる。
h2メルセデス・マイバッハSクラス
全幅:1915mm
荷室開口高:680mm ミラー・トゥ・ミラー:2130mm
全長:5465mm ホイールベース:3365mm 全高:1495mm

メルセデス・ベンツSクラスに対して200㎜も延長された超ロングホイールベースのシルエットは、ベンツとは異なる「マイバッハ」としての風格につながっている。ボンネット上には、お馴染みのスリーポインテッドスターを掲げるが、グリルとC ピラーにはマイバッハのエンブレムを配する。前後バンパーやBピラーに施されたクロームパーツも特徴的だ。

メーターとナビ画面にワイド液晶をダブルで並べているコックピットの風景はSクラスと同様。さらに、高性能な運転支援システム「インテリジェントドライブ」も搭載する。ショーファードリブンでありながら、こうした先進安全装備を備えるのはメルセデスらしいところだが、ドライバーズカーの延長にあることも感じさせる。

フロントシート高:590mm

運転席からの眺めもSクラスだが、ボンネットマスコットのおかげでノーズ位置は確実に把握できる。ドイツ車らしく大柄なシートにはマッサージ機能や空調機能を装備。大型アームレストの内部にはスマホの非接触充電を用意している。

リヤシート高:600mm

ロングホイールベースのおかげで足元は広く、後席の乗降性レベルは高い。ファーストクラスパッケージ装着車はセパレート型(オットマン付き)となる。リクライニングやスライドは、ドアに置かれたスイッチで直感的に調整できる。

撮影車の4.0ℓ V8ツインターボは気筒休止システムの採用で環境性能とパフォーマンスを両立。6.0ℓ V12ツインターボを積む「S650」も用意。
最小幅:1000mm 奥行き:800mm(中央部610mm)

基本的なトランク容量に不満はないが、シャンパンクーラーの張り出しが大きく、使いづらく感じてしまう。中央部の奥行きは610㎜。

マイバッハ専用にデザインされたディッシュタイプの20インチアルミホイールを履く。タイヤはグッドイヤー・イーグルF1。ボディサイズの違いもあり、このライバルの中ではタイヤが薄く見える。
マイバッハには専用ホルダーにピタリと収まるROBBE &BERKINGのシルバー製シャンパングラスがオプション設定されている。奥にはシャンパンクーラーも設置。
左右がセパレートした後席はゆったりと座ることを最優先したデザイン。その思想はセンチュリーロールス・ロイスとは異なっている。座面長は525㎜と長い。
ダッシュボード中央にはIWCアナログ時計が埋め込まれる。その文字盤は、職人の手によって磨かれ、塗られているという。
Burmesterハイエンド3Dサラウンドサウンドシステムをオプション設定。ネット部も工芸品のように美しい。
h2ロールスロイス・ファントム
全幅:2020mm
荷室開口高:730mm ミラー・トゥ・ミラー:2150mm
全長:5990m ホイールベース:3770mm 全高:1645mm

フロントグリルをはじめ、ひと目でロールス・ロイスであることを実感できるアピアランス。上品に2トーンに塗り分けられたボディも、庶民とは別世界のクルマであることを感じさせる。ステップは前後とも375㎜と低いがフロアは高く感じられ、SUV的に足から乗り込む印象を受ける。ショーファードリブンにおける文化的背景の違いを感じさせられる。

ノーズは長いが、ボンネット先端のマスコットによりノーズ位置を把握しやすい。メーターはオーソドックスな三眼タイプ、ナビ画面を格納することもできる。インパネ全幅を強化ガラスで覆ったスペースをギャラリー的に使うこともできる。エアコンはマニュアル式、キャビンの快適性はショーファーが担うというプライドを感じさせる。

フロントシート高:680mm

運転席は電動で微調整もできるが、スッと座っただけでも身体を包む込む感覚が強く、最高の仕事場といった印象を受ける。後席から見えるシートレール部などはメッキ処理され、細部に至るまでロールス・ロイスの世界観を崩さない。

リヤシート高:720mm

観音開きで後ろヒンジのリヤドアは電動開閉式。後席乗員が重いドアを操作する機会はないだろう。シートポジションは立ち気味で沿道に向けて、背筋を伸ばした姿を見せられる。Cピラー内側の鏡を使い、常に身だしなみを整えられる。

バンク角60度のV12ツインターボエンジンは完全にバランスされたもので、パワフルながら、振動を感じさせない。2.7tのボディをあっという間に加速させる。
最小幅:780mm 奥行き:1320mm(中央部1110mm)

大きめのオーバーハングゆえ余裕がある。中央にはシャンパンクーラーの張り出しが見えるが、その位置でも1110㎜の奥行きとなっている。

ボディが巨大なためタイヤは大きく見えないが、実際には前後とも22インチコンチスポーツコンタクト5を履く。幅広いタイヤだが、アシストは十分で指一本でステアリング操作ができるほど。
意外にも後席は3名掛けとなっているが、センタートンネルも大きく、中央部のアームレストを降ろした状態で使用するのがデフォルトだろう。座面長は500㎜。中央にシャンパンクーラーを内蔵。
ダッシュボードのガラスで覆われたギャラリースペースに高級車の象徴であるアナログ時計を内蔵。静か過ぎるキャビンに響くのは秒針の音だけという逸話もあるほど。
後席ドアには専用アンブレラが内蔵されている。ドアを開け、ボタンをプッシュすることで取り出せ、不意の雨でも後席のVIPを濡らすことはない。
ロールス・ロイスのユニークなオプションが天井いっぱいに広がるプラネタリウムだ。注文時に好みの日(奥さんの誕生日など)の星空を選べるという。内外装だけでなく、演出に対するこだわりも最高峰だからこそ為せる業だ。