日本・フィンランド外交関係樹立100周年を記念し、アニメ映画サンタカンパニー~クリスマスの秘密~」「コルボッコロ」の2作品が、2019年12月に全国劇場公開(同時上映)されることが、2019年6月10日フィンランド大使館にて開催された「劇場版製作プロジェクト発表会」において発表された。

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サンタカンパニー~クリスマスの秘密~」は、日本を代表するアニメーション監督・宮崎駿さんの弟子にあたる糸曽賢志さんにとって初の劇場アニメ作品。2014年に短編アニメを糸曽監督みずからが出資して制作。当時はまだ珍しかったクラウドファンディングを用いて制作された。

今回、本作の物語を広げて、より多くの人に届けたいという思いから、新たなシーンを多数追加し、より深みのあるストーリーを描いた作品に作り直されることが決定した。

また「コルボッコロ」は、東京都の支援により誕生したアニメクリエーターを発掘・育成する事業「動画革命東京」で、第一期支援作品に選定された作品。2007年にほぼ個人作業で制作された後、カンヌ映画祭にて紹介上映。その後、東京アニメアワード受賞をはじめ国内外で高い評価を得た作品である。今回は本作も全面的にリニューアルされ、「サンタカンパニー~クリスマスの秘密~」とのつながりも明らかになるようシナリオが改変されるという。

 

登壇した糸曽監督はプロジェクトの紹介に先立ち、恩師・宮崎駿さんとのエピソードを紹介。1998年スタジオジブリが公募した「東小金井村塾」に参加した糸曽監督は、そこでスタジオジブリの次世代を担う演出家を育成する講習会に参加。当時、大学1年生だった糸曽監督は宮崎さんの別荘に通い、さまざまな企画を宮崎さんやほかの受講生とともに考えていたという。

そこで一番学んだことが「考える」ということ。

採用前の集団面接の際に、ほかの受験者は、宮崎さんが「こうだ」と言ったことに対してそのまま受け入れていたのに対して、糸曽監督は自分の意見を返すやりとりをした結果、自分ひとりだけが合格した、というエピソードを語ると、会場からは驚きの声があがった。

 

 

そんな糸曽監督の新作アニメーション映画である「サンタカンパニー~クリスマスの秘密~」について、自主制作版がリメイクされるほか、本作を通じて生まれるさまざまなビジネスモデルが提示された。

従来通り、映像作品の放送・上映・ネット配信・Blu-ray/DVD販売といった展開のほか、グッズ展開、関連商品の販売、体験型イベントの実施などが行われる。また本作は著作権が完全に糸曽監督個人に帰属するということで、本作を利用した実践型教育プログラムの開発、産学連携といった多角的な展開を国内外で予定しているという。

「アニメでできた素材を、教材として二次利用したい」と糸曽監督は語った。

 

また、本作を応援する「Tokyo Otaku Mode 」の小高奈皇光CEO、NPO法人チャリティーサンタ」代表理事・清輔夏輝さんが登壇。「Tokyo Otaku Mode 」は、同社が運営するオタク文化の発展をコンセプトとする仮想通貨「オタクコイン」のサービスを通じて、また「チャリティーサンタ」は、本作を通じてより多くの人が同法人の企画に参加、また企画参加者が映画を見に行くといった相乗効果を期待すると語った。

また、ソニー銀行の投資型クラウドファンディングSony Bank GATE」でも支援者からの出資をつのるとのこと。このクラウドファンディングでは、キャラクターの命名権、出演権など、特別なリワードを用意することも発表された。

 

そのほか、本作に出演する声優について、主人公・ノエル役が現在休業中の藤村歩さんから花澤香菜さんへとバトンタッチされるほか、梶裕貴さん、釘宮理恵さん、戸松遥さん、櫻井孝宏さん、近藤雄介さんら豪華な顔ぶれが参加。このほか、有名芸能人もキャスティング予定という情報が公開された。

 

さらに自主制作版の映像を使った最新の特報映像も公開。現在、制作の進捗状況は必ずしもかんばしくはないそうだが、クリスマスシーズンに公開せねば意味がない作品、ということで、現在鋭意制作進行中だと糸曽監督はコメント。

10月末の完成を目指しているという。

そのほか、詳細情報は公式サイトでご確認いただきたい。

 

なお本作品の発表会の後、アキバ総研は監督の単独インタビューを敢行!

改めて本作にかける意気込みや、師匠である宮崎駿さんへの思いを語っていただいた。

 

 

糸曽賢志監督インタビュー

――本作では、糸曽監督個人がすべての著作権を持たれています。アニメというと、近年は委員会が著作権を持つようなスタイルが主流かと思うのですが、今回の試みに至った経緯を教えてください。

 

糸曽 スタジオジブリって、外から見ていると宮崎駿さんが自由にやれているように見えて、うらやましいなと思っていたんです。それでいざアニメ業界に飛び込んでみたら商売のことを考えたら当然なんですが、原作物の作品が多くて。さらにオリジナル作品を作った人も権利とかは全然持っていなくて、たとえばサッカーアニメを作って数年経った時に、「今、ワールドカップで盛り上がっているから、このタイミングでこの作品を改めて出したい」と思ったとしても、自分に権利がないから作品を動かせないということを何度も聞いていたんです。

そこに違和感があったので、自分がやるなら自分でお金を出して自分で作るしかないというところに行き着き、1回完全に自己資金のみでやっていたんです。

今回、そこからもうちょっと大きい規模でやりましょう、というお話が来た時に「権利だけは僕のところにおいてやりたい」という話をプロデューサーにしたところ、「面白いので、そこに乗ってくれる方とやりましょう」という話になって、難航しながらもうまく着地点が見つかったといったところですね。これが新しい試みになるといいなと思っています。

 

 

――その制作体制におけるメリットとデメリットは?

 

糸曽 メリットは、基本的に自己出資のみで作っていると出せる金額が決まってしまいますが、その金額をもう少し広げられることです。また、全部自分だけで作っていたらプロデュース作業までできないので、やれることの幅が狭まることを解消できるのもメリットです。デメリットについては、現状僕の目につくものはすべて排除していて、特に何か困ることはありません。権利を分散させることもなく、僕に一番指揮権を持たせていただいていますし、お金を出してくださる方が、出資金に応じてバックをもらうのは当然だと考えているので、その比率も提示させていますから。

 

――あえていうなら、一緒に動いてくれる企業や個人を見つけるのが大変?

 

糸曽 そうですね。すごく大手の企業さんだと、逆に「何それ?」という反応が返ってくることが多いですね。協賛・出資してくださるところはアニメ業界の方もいるんですが、どちらかというと個人投資家の方をはじめ、フットワークの軽い方が参加してくださっている印象です。

 

ベル(CV:梶裕貴

 

――今回、「サンタクロース」というモチーフを選ばれたのは、なぜでしょうか?

 

糸曽 僕自身、1年間のイベントの中でクリスマスが一番好きなんですが、子どもの頃、サンタクロースの正体を知った時ってやっぱりショックだったんですよ。いまだにそんなことはないと信じていたいんですけど(笑)、そのいっぽうで、どうやってひと晩でプレゼントを配っているのとか、サンタってクリスマス1日しか働かずにどうやって生きてるのとか、大人になってお金を稼ぐことを覚えた時に、解決しなきゃいけない問題がいくつか立ちふさがってきたんです。それを解決するためのアイデアを何年も考え、なんとなくまとまったのでアニメにしたいと思ったんです。

 

――糸曽監督にとって、やはり宮崎駿監督は今も憧れの存在なのでしょうか。

 

糸曽 僕が宮崎監督から一番学んだこと、影響を受けたことって、「宮崎駿を目指しちゃダメだ」ということなんで。宮崎監督は唯一無二の才能だし、僕が憧れたところで追いつけない。あの作風は、もうあの人ならではのものなんです。だからそこを憧れて真似しても何も生むことはないと思います。むしろ宮崎監督がやったことをやらないというのが、宮崎監督からの正しい影響の受け方かなって思うんですよね。とはいえ好きなものは出てきちゃうので似てくる部分はあるとは思うのですが、できるだけ意識しないようにしています。

 

――ありがとうございます。映画の完成、楽しみにしています!


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「宮崎監督を目指さないことが、正しい影響の受け方」宮崎駿の弟子・糸曽賢志監督が語る劇場用アニメ「サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密~」で目指すものとは