ネット上で付き合っていた彼氏に別れを切り出したところ、「お金を返せ」と詐欺師扱いされたーー。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

相談者の女性は、相手に「付き合ってくれたらお金をあげる」と言われ、交際を始めたようです。しかし、次第に相手のことが好きになり、お金をもらうことに罪悪感を感じるようになったといいます。

ところが、いつからか相手から「下着やその写真を送って」などと言われるように。エスカレートする要求を拒否したところ、相手は「自分はお金をあげているのに、なんで何もしてくれないんだ」と怒り始めたそうです。

嫌気がさした女性が別れを切り出すと、相手は「結局金目当ての付き合いだ、今までのお金をすべて返せ」と返金を要求。これまでに女性が受け取ったお金は6万円ほどだといいます。

女性は、名前や顔写真、住まいの情報など、相手に対してすべて嘘をついていたとのこと。「詐欺師なのでしょうか」と心配しています。法的問題について、石井龍一弁護士に聞きました。

●「ネット上だけのバーチャルな交際」であれば問題なし

ーーどのような場合に「詐欺」にあたるのでしょうか

「相手が『本当のことを知っていたら、お金をあげるなんてことはしなかった』といえる状況で、相手に嘘を言って事実と違うことを信じさせ、お金を払わせた場合に詐欺罪が成立します」

ーー相談者は、相手に嘘をついていたようですが…

「相談者は『付き合ってくれたらお金をあげる』と言われたようですね。

ここでいう『付き合う』の意味が、あくまでも『ネット上だけのバーチャルな交際』という意味であれば、女性はそうしたバーチャルな交際はしていたわけですから、嘘を言ったことにはなりません。その後、別れを切り出すことも女性の自由ですから問題ありません。

また、バーチャルな交際では、実在の女性本人との交際ではなく、ネット上のいわば『架空の対象』を相手とする交際になります。そのため、名前や顔写真などすべて嘘をついていたとしても問題にはならないでしょう。

受け取ったお金についても、有効なお金の贈与を受けたものとして、返金する義務はありません」

●ネット上の関係でも慎重な行動を

ーーもし、相手がいう「付き合う」の意味が「バーチャルな交際」をこえたもの、つまり「実在の女性本人と実際に交際する」ということを意味していた場合はどうでしょうか

「この場合は状況が変わってきます。

女性側に実際に交際する意思が全くないにもかかわらず、それを偽って交際を承諾し、相手にお金を出させたということになれば、詐欺にあたる可能性が出てきます。

また、相手が『もし本当の名前や顔写真を知っていたら、お金など出さなかった』という場合も、詐欺にあたる可能性があるでしょう。

もっとも、そうしたことは人間の内心の事柄なので、実際には立証が難しいとは思います。

いずれにせよ、ネット上の関係であっても、お金がからむとトラブルになることが少なくありません。慎重に行動する必要があるでしょう」

【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/

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