東京・池袋で暴走した車にはねられ母子が死亡した事故現場で、実況見分に立ち会う旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長

◆ついに行われた飯塚元院長の実況見分
 東京・池袋での高齢ドライバー暴走死亡事故の実況見分が、加害者である飯塚幸三元院長立ち合いで6月13日にようやく行なわれた。しかし「ブレーキが効かなかった」と言い張ることでまだ解決の見通しはなく、警視庁は飯塚元院長の事情聴取を今後任意で行なうとしている。強制ではなく任意という点にも注目したい。

 これが一般庶民が起こした交通死亡事故であれば対応はまったく違うわけで、上級国民との表現や肩書は与えたくないが、警視庁サイドも過去に地位や名誉があった元院長を守ろうとする上層部と、それに反発し世間の風当たりが厳しくなっていることもあって容疑者として扱いたがっている現場サイドの鍔迫り合いが行なわれている様相がなんとなく伝わってくる空気感。

 現状を察するに、運転していた本人がアクセルブレーキの踏み間違いを決して認めないなど、元院長がプリウスに欠陥があったかのようにしているのだけは感じる。

 そもそも、筆者は、両足が悪いのに東京都公安委員会が何も運転条件を付けずに免許証の更新を許した部分にも不可解なものを感じた。ここは、今後言及されるべきであろう。

◆今までもあった「地位で扱いが違う」と物議を醸した事例
 今回の事故では、加害者の地位などでネットではさまざまな声が飛んでいるが、交通死亡事故を起こしても加害者側にお金だけではなく地位や名誉があると容疑者にはならなかったり、逮捕されなかったりということで批判された事案は元院長だけではない。

 2013年に、駐車場敷地内で死亡事故を起こした千野志麻氏は、父親が市議会議員の政治家だけではなく、夫が福田康夫元首相の孫という輝かしい家族構成だったことが100万円の罰金刑だけで済んだと揶揄されたのはそろそろ風化してきている様子。

 まだ記憶に新しい2018年には、“特捜のエース”と呼ばれていた元東京地検特捜部長で弁護士の石川達紘氏が、78歳の高齢でレクサスを暴走させ、37歳の男性をはねて死亡させた事故が忘れられない。実はこの交通死亡事故は池袋の暴走事故とオーバーラップするほど言い訳はソックリ。石川氏は「レクサスが暴走したので運転ミスではない」と最後まで言い張るも、風評被害を受けていたトヨタは威信をかけて車体を検査した結果、アクセルなどに異常は見つからなかった。

 しかし、石川氏は書類送検されてもレクサスに事故の要因がありと主張し、アクセルブレーキを踏み間違えたと思われる自分の人為的ミスを否認、最終的に今年3月になって東京地方検察庁は過失致死として自動車運転処罰法違反と道路交通法違反の罪で在宅起訴処分。この件でも逮捕はされなかった。

 交通ジャーナリストとしての筆者の見解では、飯塚幸三元院長を石川達紘氏と同じく、東京地検は自動車運転処罰法違反と道路交通法違反の罪で在宅起訴処分で済まされてしまう可能性がある。過去の判例をそのまま適用する場合だが、穏便に済ませるとしたらこのやり方を手段選ばず実行してくる気がする。

◆「踏み間違い防止」に役立ちそうなものが……

ワンペダル

 飯塚元院長の責任については、司法の判断を見守るしかないが、高齢ドライバーに多いアクセルブレーキの踏み間違いに対しての解決策はあるのかと言えば……ある、と思っている。それはナルセ機材有限会社が開発したワンペダルというシステムを導入すれば「踏み間違い」を防ぐことは可能なのだ。

 このペダルの存在は、筆者が毎週発行しているメールマガジン購読者の方から連絡を頂戴し、ワンペダルの存在を教えて頂いたものだ。

◆義足生活だからわかった運転補助装置の有用性

 というのも、話が大きく脱線してしまうので詳細は省くが、筆者は、2007年に信号無視してきた乗用車にノンブレーキで突っ込まれて首頸椎から右半身の神経を痛め、その後遺症に悩まされた結果、昨年6月に右足を50cm切断して実は現在、義足と車イスを共有しての日常生活を送っている。

 このような事故に巻き込まれた経験から被害者の気持ちが強く伝わり、飯塚元院長には逃げず、自ら進んで重罰を受けてもらいたく切に思っている状態なのだが、両足が悪かったら足の不自由な方用にアクセルブレーキを手だけで行なえる運転補助装置のサポート部品も各自動車メーカーは福祉車両への取り組みを積極的に展開している。障害者だけではなく、反射神経が鈍っている高齢ドライバーにも手だけで運転できるよう福祉車両が推奨されていることも知っておくべきだろう。それを怠っていた元院長に身体障害者4級の筆者は声を大にして言わせて頂きたい。

 飯塚元院長は両足が悪いということだが、特に右足に問題があったとの情報も伺い、であればワンペダルを導入しても良かったのではなかろうかと。

 右足だけではなく左足でも使えるので、それこそ右足を切断してしまった筆者もメルマガ読者の方から教えて頂いたワンペダルを導入したかったのだが、入院中のリハビリ施設では左足に吊り下げ式(釣鐘式)でのアクセルペダルでドライブ・シミュレーターを操作して訓練していたこともあり、残念ながらワンペダルの導入は見送らせて頂いた。

◆「ワンペダル」使用の様子を見てみると
 さて、右足が義足になったことで推奨して頂けたそのワンペダルだが、メルマガ読者の木村さん(仮名)ご自身も70代の高齢者でワンペダルを導入しているとのお話を伺ったので、実際にご本人のところへ出向き、助手席に座らせて頂いて運転している様子を拝見させてもらってきた。

ワンペダル仕様になっている木村さん(仮名)の車 (筆者撮影)

 自分の目で確かめるまで1つのペダル操作だけで可能なワンペダルだと、むしろ急ブレーキとか急アクセル発進とかしないのかと最初は心配だったが、木村さんの柔らかい運転でその不安は完全に払拭。足を右に傾けるとアクセルで踏めばブレーキという分かりやすいシステムなので、確かに身体障害者だけではなく、反応が鈍くなっている高齢ドライバーには最高の運転方法と実感した。

「このワンペダルの凄いのは、アクセルをかけたままでペダルを踏み込んでもクラッチが外れアクセル操作が効かなくなってクルマそのものの暴走も防げるんです」と木村さんは説明してくれる。「私がワンペダルを導入したのは、歳を重ねると共にブレーキタイミングが遅れてきている感覚が分かったんですね。そこでアクセルペダルとブレーキペダルが独立している運転席よりもこのワンペダルだと足の踏みかえが必要ないし、踏み損ないも発生しないのでブレーキを踏む反応が今までより格段に上がったんです」と。

◆踏み変え不要で反応が抜群に早い
 木村さんが導入したワンペダルは右足専用のシングルタイプ(両足兼用のダブルタイプもある)だったので筆者の義足の右足で踏み込むには不安が募ったことで運転を差し控えさせて頂いたが、これは素晴らしい技術と体感したのが、信号のない横断歩道で主婦がママチャリで一気に駆け抜けてきた際(飛び出しに近いかな)即座にブレーキ反応を味わえた瞬間だろう。文字だけでは伝わりにくいが、通常のアクセルブレーキのペダルがセパレートになっているクルマよりも足元を踏みかえる必要がなかったからか、止まる反応の早さにワンペダルには今後加速する高齢化社会かつ、高齢ドライバーの増加で事故を未然に防げる未来が見えた。決してオーバーな表現ではなく、20万円程度の費用で改造可能なので、交通事故を起こしたくない高齢ドライバーには激しくオススメしたい。

 ちなみに、ワンペダルの導入は見送ったものの、筆者の愛車も障害に対応した改造を行っている。奇しくも、筆者の愛車はプリウスだが、吊り下げ式のアクセルペダルなので、退院後に福祉車両として左にアクセルペダルを装着し、左足で踏み込むサイドブレーキは運転中に間違えて踏んでしまったことが何度かあったため、手動で使えるように改造してもらった。身体障害者4級では最大10万円まで国から出る補助金がなぜか福祉車両への改造では受けられず(右足の義足でアクセルペダルを踏んで運転したこともあるが反応が遅く危険なのに絶対おかしい)結局自費で運転席の足元を改造したのである。

【吉田武 a.k.a. ジャンクハンター吉田】
交通ジャーナリスト、映画コラムニスト。交通関係では三才ブックスラジオライフ』を主軸に執筆しつつ、『WEB CARTOP』『週刊プレイボーイ』『FRIDAY』『Abema Prime』などへ登場の他、まぐまぐのメルマガにて『疑問だらけの道路交通法』を毎週金曜に発行中。映画関係ではBS10スターチャンネルで放送中の映画情報番組『映画をもっと』にレギュラー出演など。

東京・池袋で暴走した車にはねられ母子が死亡した事故現場で、実況見分に立ち会う旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長