パプアニューギニアと聞いて思いつくのは、機動戦士ガンダムパプア補給艦か、南国少年パプワくんといったところだろうか。第二次世界大戦時には旧日本軍が占領したこともあったが、現在では『地球の歩き方』(ダイヤモンド社)も10年前に刊行したきりで、日本ではなかなか話題に上がらない、日本語アクセスできる情報に乏しい国である。

 オーストラリアの北に位置し、世界で2番目に大きい島であるニューギニア島の東半分と周辺の小さな島々で構成されるパプアニューギニアには、原始的な生活を送る800以上の部族が現存し、地球最後の秘境とも呼ばれている。かつては人食い族なる恐ろしい部族もいたらしい。EXILEも驚きのトライブじゃないか。今回はそんな謎多き部族達に会ってきた。

 東京からパプアニューギニアの玄関口である首都ポートモレスビーへ向かう現実的なルートは、大まかに分けると以下3つ。

(1)ニューギニア航空/直行で10万円~/7時間(2019年6月現在運休中。7月より運行再開予定)
(2)フィリピン航空/マニラ中継で7万円~/13時間
(3)LCCレガシーキャリア/マニラ・ケアンズ中継で6万円~/時間はキャリア次第

 東京から同じ距離のクアラルンプールまでLCCエアアジアを使えば往復2万円程度(セール価格)で飛べるが、パプアニューギニアにはLCCが就航しておらず、どのルートを選んでもお財布に優しくない。

 私の本業はごく普っ通~の会社員である。本業で稼いだお金をなんとかやりくりし、会社勤めをしながら年間約20回海外をふらふら放浪する生活が日常化している。そのため、1回あたりの渡航費が安いに越したことはなく、限られた予算を航空券代だけで一気に消費してしまうパプアニューギニアは旅先候補には上がらない。

 そう思っていた矢先、ニューギニア航空の旅行業割引が発表された。当時勤務先がJATA(一般社団法人日本旅行業協会)に入会しており、社員は旅行業者向けの各種割引というチート技が使えた。成田⇔ポートモレスビーの直行便に、今なら国内線ポートモレスビー⇔ゴロカもお付けして、総額なんと55,190円。レガシーキャリア+直行便+相場の半額=買っておしまいなさい、の旅行沼ルールに則りあえなく購入。

部族その1 アサロ渓谷のマッドマン

 パプアニューギニアの中心に位置するゴロカ周辺には、様々な部族の村が点在しているという。パプアニューギニアに来たからには部族に会わねばならぬと、首都ポートモレスビーでプロペラ機に乗り換えゴロカへと向かった。ゴロカから更に車で40分ほどのアサロ渓谷へ向かい、まずはパプアニューギニアで最も有名な部族マッドマンに会いに行く。村に着くなり、遠方から全身に泥を塗りたくり大きなお面を被った部族が出現した。

 ゆっくりと無音で動きながら、ヘンテコな格好の人たちがジリジリと間を詰めてくる。なにこれ、むちゃ怖い。

 そう、相手を怖がらせて敵を追い払うのがマッドマンの狙いだ。なぜなら彼らは戦いを好まず、敵に襲われると逃げてしまうほどのビビリだから。襲われて逃げた先の泥沼で転んで立ち上がったところ、泥だらけになった姿を敵が亡霊と勘違いし逃げたことがマッドマンの由来だという。そう言われるとなんだか可愛く見えてくる。

部族その2 美しい衣装のチンブー族

 さて翌日、ゴロカから西にあるチンブー地方へ車で2時間ほど移動。ここでは南国のイメージ通りのファッションに身を包んだチンブー族が住んでおり、美しい花々で彩られた村で彼らのライフスタイルを見せてもらえる。お互いに塗り合う鮮やかなフェイスペインティング、伝統的なビルムというバッグ作りの実演、可愛らしい集団見合いの儀式「カリムレック」、どれも素敵な風景でうっとりする。悪夢に出てきそうな昨日のマッドマンとは大違いだ。

部族その3 ヒマカベ族と人食いの洞窟

 チンブー地域から車でコレコレト村へ移動し、3つ目の部族ヒマカベ族に会いに行く。ジャングルの中を歩いていくと、突如目の前に現れるTシャツジーンズ姿のお兄さん。我々に気づくと「しまった!」とばかりに走って消えた。お兄さんが消えた先にガイドが案内すると、小さなコレコレト村に到着。

 しばらく待っていると、全身白塗りでおなかに腹芸のようなペインティングを施し、草木でできたふんどしをつけたヒマカベ族が隊列を組んで登場した。よく見るとさっき出会ったTシャツジーンズのお兄さんも混ざっている。どうやらお兄さんは、原始的な伝統生活を捨てて洋服で生活し、観光客が来る時だけ部族の格好をしているのを隠そうとして慌てて逃げたようだ。硬そうな草木のまわしよりは柔らかい洋服のほうがいいに決まっているから、現代化も仕方ない。

 軍隊のように規律正しく動きながら近づくヒマカベ族から、聞こえるか聞こえないかくらいの低く小さい声が。耳を澄まして聞いてみると…

 モコッ! モコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコ

 腹芸ペインティングだけでも十分面白いのに、モコモコ言ってて笑ってしまうではないか。隊長が「モコッ!」と言うと、それを合図に全員が指示された方角へ向き直し、モコモコ言いながら次の指示があるまで小走りで移動する。この独特の民族舞踊はモコモコダンスという名前らしい。おなかに描かれた絵が幽霊のようなので、別名ゴーストダンスとも呼ばれるそうだ。

 モコモコダンスのお次は、ヒマカベ族の案内でグルポカ山トレッキング。1時間登った先にある山頂近くには、部族が人の死体を切り裂いて食べる儀式を行っていたという恐ろしい洞窟がある。洞窟の入り口がかなり小さく、同行者はお尻がつっかえそうだからと中に入るのを諦め、ガイドと2人で別ルートから山頂を目指すことになった。つまり、暗く狭い洞窟にいるのはヒマカベ族と私だけである。そんな状況でヒマカベ族が恐ろしい一言を言い放った。

 ヒマカベ族「日本人の人肉が一番美味しいんだよね」

 逃げ場がない洞窟で、このオッサンいきなり何てことを言い出すんだ。確かに自分のお肉は脂身いっぱいで美味しいかもしれない。いや、そういうことじゃない。

 私「た! 食べないでくださいいい!」
 ヒマカベ族「食べないよ~、あはは」

 まさかパプアニューギニアのジャングルちほーでけものフレンズごっこをすることになるとは。しかし人間を食していたのはとうの昔の話である。今やTシャツジーンズで現代的な生活をしているんだから、そりゃそうだ。

部族その4 最強の女部族、空港のお姉さん

 それぞれにインパクトのある3つの部族に会い、満足して日本へ帰国しようとしたところ、ポートモレスビー空港で最強の女部族に出会った。お土産屋で働く陽気な女性店員である。陳列された各種部族にちなんだ商品を見ていると丁寧に解説してくれる。商品の中にはコテカ(ペニスケース)もあり、ニューギニア島西側インドネシアでコテカを装着して暮らすダニ族にもいつか会いたいなぁと考えていたところ、店員2名が待ってましたとばかりにキメ顔で説明してきた。

 店員1「Japanese, they say
 店員1&2「ち~んち~ん!」
 店員1「ちんちんズ皮~!」

今回のスケジュールと費用

スケジュール
1日目(水)
会社から成田空港へ直行
21:05 NRT / PX0055

2日目(木) 有休
- 04:55 POM
08:00 POM - 09:10 GRA / PX0960
部族ツアー① アサロ渓谷マッドマン村半日ツアー
ゴロカ泊

3日目(金) 有休
部族ツアー② チンブー半日ツアー
部族ツアー③ グルポカ山ハイキング半日ツアー
16:30 GRA - 17:40 POM / PX0965
ポートモレスビー泊

4日日(土)
ポートモレスビー自然公園観光
14:10 POM - 19:55 NRT / PX0054
 

〈費用〉
ニューギニア航空航空券(旅行業割引価格) 1名55,190円
部族ツアー1名分 ①29,000円+②23,000円+③25,000円=77,000円
ホテル2名2泊 ゴロカ1泊13,106円+ポートモレスビー1泊13,089円
その他(飲食・お土産動物園入場料) 10,000円程度

 パプアニューギニアは航空券のみならず、ホテルツアーなど観光にまつわる物価が全体的に高い。特に部族ツアー先進国もなかなか見ない強気の価格設定で、3つの半日ツアーに参加したところ合計77,000円に及び、帰国後の生活が貧相になったのは言うまでもない。

(多田 美和)

パプアニューギニアは秘境と言われる割に、東京からのアクセスはかなり良い。