滝田「年齢的にもう、キャプテンかどうかはあんまり関係ないけどね」

 2019年3月17日、ビーチサッカー日本代表AFCビーチサッカー選手権タイ2019(ワールドカップ予選)でアジアの頂点に立った。キャプテンとしてチームを引っ張った茂怜羅オズは、サッカー元日本代表MFラモス瑠偉監督との約束通り、大会MVPと得点王に輝いた。一方、フットサル日本代表史上初のアジア2連覇達成メンバーである滝田学もまた、日本代表キャプテンとしてチームの先頭に立ち戦った1人だ。

 日本代表を背負う2人は、今年33歳であることをはじめ、共通点が多い。どのように日本代表に選ばれ、どんな思いでアジアチャンピオンになったのか。それぞれの日本代表チームをけん引する2人が語り合った

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滝田 今キャプテンでしょ? 僕は、2014年2016年大会(AFCアジアフットサル選手権)でキャプテンだったけど、今はキャプテンを支える副キャプテンみたいな感じ。僕は引っ張っていくタイプではないし、キャプテンの次くらいが一番向いてるかな。年齢的にもう、キャプテンかどうかはあんまり関係ないけどね。

オズ そうね。自分の性格は、いつもリーダーシップを持ってやってた気がする。代表に初めて入った時はキャプテンじゃなかったけど、審判や対戦相手と話したりして、チームを引っ張っていく性格があるのをラモスさんが気づいて、キャプテンにした。キャプテンになると責任感がもっとあると思う。周りも見てるし、やることもみんな見てるっていうのもある。でも、チームを引っ張っていくことが好き。

滝田 見てて、オズは、根っからのキャプテンのような気がするな。僕が人生の中で一番嬉しかったのは、アジアAFCアジアフットサル選手権)で2連覇した時。日の丸をつけて優勝するっていうのは、何にもかえられない嬉しさがある。

 ずっとイランが優勝してて、2006年に先輩たちが初めて優勝するという歴史を作った。自分が代表に入って、2010年に3位になって、2012年に優勝。そこで世代交代して、2014年は、初めて2連覇のチャンスがあるってことで、すごくモチベーションがあった。そんななかで、フットサル日本代表史上初の2連覇ができて、それはもう嬉しかった。次の2016年大会は、ワールドカップ(W杯)予選も兼ねていて、そこで3連覇を、っていうところだったけど、それが最悪の結果で終わった。だから、人生で一番嬉しかったのも代表でのことだし、一番悲しかったのも代表でのこと。

滝田「まじでやばかったな、あの時は…」

滝田 まじでやばかったな、あの時は…。W杯出場を懸けた2016年大会(開催地/ウズベキスタン)で順位決定戦に負けて、W杯出場のチャンスがなくなった時は、みんな超泣いてて、僕も泣いてたけど、あんまり涙も出てこなくて、1回ホテルに帰って、みんな部屋に散り散り戻って……。何も考えられなかった。ホテルの部屋が13階で、外に出たら、自分がこのまま飛び降りちゃうんじゃないかって思って、超怖くなった。2人部屋で、2人で「どうしょう」って、ずっと、ぼーっとしてた。あの夜が、今までの人生の中で一番辛かった。日本に帰りたくないけど、そこにもいたくなかった。負けたあとは、もう他のチームの奴と会いたくなかった。

オズ 分かる。みんな同じホテルだしね。

滝田 その時は、中国の旧正月の関係で、帰りの飛行機が取れなくて、5日間ぐらいそこにいないといけなかった。「うわーっ、どうする」ってなってた。みんな話したくなくて……。でも、ちょっとずつ、これからのことを考えないといけないし、「もう引退するわ」っていう選手もいたけど、「ここで負けたのにも責任がある。すぐに辞めるっていうわけにもいかない」っていう話をみんなでした。

 5日間めちゃくちゃ長くて、もちろん、日本で応援してくれてた人たちも悲しんでくれてたのが分かったから辛かったけど、「現地でこの悔しい経験をできたのは、一つ意味がある」ってみんなで捉えられたのもあって、頑張ろうと思った。だから、今回、ビーチがW杯出場を決めたのはすごいし、優勝できるっていうのは、大きいよね。

オズ 大きい。前回のW杯予選は、決勝で負けてしまった。W杯に出ることは決まっていたからまだいいけど、アジア1位でW杯に出ることが大きいし、順位でW杯の組み合わせも変わると思う。W杯でも優勝したい気持ちがすごく強い。負けて日本に帰ってきたら、謝るしかないからね、いろんな人が応援してくれてるから。

滝田 日本のビーチサッカーはもっと評価されていいと思う。評価されるためだけにやってるわけじゃないけど、やっぱりすごいよ。

オズ 今まで全部のW杯に出てるのは、ブラジルと日本だけ。そういう歴史も大事だと思う。今回は、まさか、イランと準々決勝で当たるとは思わなかった(※)。

(※イランと決勝まで当たりたくない日本は、グループCで1位になったが、グループDで1位通過すると思われていたイランオマーンに負けて2位となり、日本とイランは準々決勝で当たることになった)

オズ イランが負ける試合を見たあとの帰りのバスの中は、シーンとしていた。それに気づいて、ラモスさんと話した。「まずいな」と……。次の日は試合がなかった。試合前日、選手たちが集まって話して、「死ぬか生きるかだ」って、考えてた。試合の日の朝、みんなの顔を見たら、すごくちゃんとしてた。ラモスさんがチームをまとめてくれて本当によかった。

オズ「イランに勝った時、もう帰っていいかと思った

オズ イランに勝った時、もう帰っていいかと思った(笑)イランと当たると分かってから対戦するまで1日あって、すごく長かった。ホテルにいてもぜんぜん時間が過ぎなくて、早く試合の時間がきてほしいと思った。でも、試合が終わったあとは、あっという間にW杯予選が終わった。

 今までのパターンだったら、決勝戦でイランと当たると、すでにW杯に出られることが決まっているから、プレッシャーがなくて、負けてしまっていたかもしれない(上位3チームにW杯出場権が与えられる)。イランに先制されて0-2になった時も、みんなの顔を見たら、「勝ちたい」っていうのが伝わってきた。準々決勝だったから、みんな、すべてを出したと思う。だから、翌日の準決勝でパレスチナに勝った時は、みんな喜ばなかった。イラン戦での緊張感とプレッシャーで疲れてて。

滝田 日の丸をつけるとプレッシャーがあるからね。

オズ どんな試合でも、じゃんけんでも、負けたら悔しいけど、日本代表でW杯出場がかかった試合は一番夢があるからね。

滝田 ラモスさん緊張しただろうな(笑)

オズ 緊張してたと思う(笑)ラモスさんは、イラン戦の前日、みんなが緊張しないように、選手の部屋に話をしに行ってた。僕の部屋にも来て、試合にぜんぜん関係ない話をした。

滝田 大会出発前にラモスさんがここ(店)に来て、「イランはやばい」って言ってた。そのイランに勝ったのは、でかいよね。

オズ 全試合で、ベンチからラモスさんの声が聞こえたけど、イラン戦の時だけ聞こえなかった。たぶん、それは、すごく落ち着いていたからだと思う。チームはすごくよかった。あの試合は、指示は聞こえたけど、怒ってなかった。そのあとのパレスチナ戦とUAE戦の時が一番、怒ってた。

滝田 ラモスさんは、締めるところが分かってるんだよね。ビッグゲームに勝ったあとの試合は、すごく大事だし。日本代表としてのプライドは、ラモスさんが一番意識してるんじゃないかな。

オズ 準々決勝のパレスチナ戦は勝てると思ったけど、開始6分くらい経っても0-0だったから、ラモスさんがベンチから「もっと早く点取らないと!」って声を出した。それがないと、いつでも勝てると思って、もっと難しい試合になっていたと思う。そこが、ラモスさんはやっぱりすごいなーと思う。

ラモスさんに、「おまえがMVPと優勝とトップスコアラーを取らないといけない」って言われてた。約束を守ったから、焼き肉、連れて行ってもらいます」(笑)

滝田「やっぱりゴールドはいいね」

滝田 メダルは玄関の壁に飾ってるけど、どこに置いてる?

オズ トロフィーテーブルに飾ってる。

滝田 トロフィーテーブルって、かっこいいな。オズは個人賞を多くもらってるからな。

オズ 優勝したら、1トンくらい背中から荷物が降りたから、メダルを見ると、そういう幸せな嬉しさがある。

滝田 僕も、メダルをもらった時は、めちゃ嬉しかった。2012年(開催地/ドバイ)と2014年(開催地/ベトナム)の二つ。2012年は、初戦はメンバー外だったけど、1人怪我をして、そこからずっと試合に出た。先輩たちに引っ張ってもらって頑張れた大会だった。

2014年は、キャプテンで、チームの中心として勝ち取って、2012年とはちょっと違う充実感とともにもらったメダルだった。どっちも本当に嬉しかった。やっぱりゴールドはいいね。

オズ 間違いない。

滝田 オズは、何歳まで選手続けるの?

オズ 40歳までは絶対やる。

滝田 オズならできちゃうな。

オズ ポルトガルブラジルの選手は45歳ぐらいまでやってる。怪我をせず体力があれば、もっとやる。

滝田 体力落ちてないでしょ?

オズ 落ちてない、落ちてない。

滝田 僕もまだ落ちないなと思って。

オズ みんな、30歳を超えたら変わるって言うけど、まだ落ちてない。

滝田 まだ上がるし。

オズ そうそう、そうそう。

滝田 怪我したら落ちるから、ちゃんと動いて、トレーニングしていれば。

オズ トレーニングすれば、ぜんぜん大丈夫だと思う。

滝田 でも、ビーチのフィジカルトレーニングを見てると、きついんだろうなって思う。

オズ 結構きつい。サッカーみたいな長距離は走らず、ダッシュが多い。膝や足首に負担がかからないし、フットサルでもやったらいいかなと思う。

滝田 そうだね、フットサルにも役に立つと思う。取り入れてみたいね。
   
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 対談が終わって2人が席を立った時、ふと聞いた。

「身長、伸びました?」

 オズは答えた。

「この間のメディカルチェックで1センチ伸びてました」

 フットボールを愛する2人は、鍛え、進化し、勝負の時に備えている。

(構成/写真)Noriko NAGANO

PROFILE
茂怜羅オズ(モレイラ・オズ)
【生年月日】1986年1月21日
【出身地】リオ・デ・ジャネイロブラジル
【身長/体重】190cm/90kg
【所属チーム東京ヴェルディBS
ポジション】フィクソ
日本代表歴・主なタイトル
FIFAビーチサッカーワールドカップ2013、2015、2017出場
FIFAビーチサッカーワールドカップ2013シルバーボール受賞
AFCビーチサッカー選手権(FIFAビーチサッカーワールドカップアジア予選)2019優勝
AFCビーチサッカー選手2013、2015、2019 MVP
世界ベスト5プレイヤー2014、2015、2016
アジアビーチゲームズ2016優勝

PROFILE
滝田 学(タキタ・マナブ)
【生年月日】1986年7月26日
【出身地】東京都
【身長/体重】178cm/78kg
【所属チーム】ASVペスカドーラ町田
ポジション】フィクソ
日本代表歴・主なタイトル
AFCアジアフットサル選手権2010 3位
AFCアジアフットサル選手権2012優勝
AFCアジアフットサル選手権2014優勝
AFCアジアフットサル選手権2016出場
AFCアジアフットサル選手権2018準優勝
アジアインドア・マーシャルアーツゲーム2013準優勝(Noriko NAGANO)

ともに日本代表を背負い、チームをけん引する存在だ【写真:Noriko NAGANO】