著者:スティーブン・デニス(フットボール・トライブ・インドネシア

 昨日の試合レポートに続き、FIFA女子ワールドカップ2019にて13-0の結果となったアメリカとタイの対戦について、別の観点からさらに深く議論したい。この試合で勝利したアメリカ代表は非常に多くの記録を残した。そして我々は、サッカーではどんなことも起こり得ること、背後には常に物語があることを受け入れ、タイ代表と共に立ち向かわなければならない。

 13-0というスコアは恐らく最悪であり、ワールドカップは各試合が歴史に残る最大の大会であるため、誰もにとって忘れ難いこととなるだろう。

 ではタイにとって、これは悪いことなのか、災難なのか。タイ代表がこの大会には相応しくないと述べられた多くの意見には本当にショックを受けた。タイが昨年の女子アジアカップで準決勝に進み、どのようにワールドカップ出場権を獲得したか、まるで誰もが忘れてしまったかのようだ。昨年、結果的にはペナルティで勝利して決勝に進んだオーストラリアに対し、カンジャナ・スングンゴエンと仲間たちはアディショナルタイムぎりぎりまで2-2の引き分けを余儀なくさせ、むしろ優勢であった。

 結果は、両チーム間のレベルの格差を示したかもしれない。タイは今年招集された2人のアメリカまれのタイ人選手、若手ストライカーミランダ・ナイルドと若手GKティファニーソルンパオを投入して、レベルを上げていくべきかもしれない。AFFU-15などのいくつかの大会で見てきたが、この2人の選手や他の多くの若い才能が今後数年で良くなることを、かなり確信している。

 とにかく結果は衝撃的だった。特にタイ代表は前半までは前回チャンピオンを3得点に抑えていたと思ったからだ。男子サッカーでも同様のケースがあった。覚えているだろうか、イングランドロシアパナマを6-1で下したこと、2014年ワールドカップ準決勝では7-1でドイツブラジルを嘲笑したこと。国際サッカーの最大の記録として、2002年の予選ラウンドでオーストラリアがサモアを31-0で下したこともある。

 男子と女子サッカーにはそれぞれの独自性があり、これらの状況を比較しようとはしていない。例えば女子ワールドカップ自体には24カ国しか参加していない。一方の男子ワールドカップには32カ国が参加しており、またFIFAは各国間の格差を知り世界規模での発展を望んで、さらに48カ国に増やす計画がある。

 男女間の平等を目指して闘うのならば、女子ワールドカップでも32カ国参加への拡大を検討すべきだ。タイ代表がワールドカップ参加に値するかどうかを疑問視するのではなく、世界の舞台が彼らの成長にとっての貴重な機会を提供すしてることをもっと理解するべきではないか。また女子チームを発展させたい他の多くの連盟にも可能性を広げるべきではないか。

タイ女子代表 写真提供:GettyImages

 これまでのところ、女子ワールドカップ初戦は順調に進み、また予想外の結果をみせている。イタリアオーストラリアを破り、アルゼンチンは日本に対してスコアレスの試合に持ち込んだ。男子チームを考えると普通のことに見える物語も、女子チームとなると異なる意味を持つ。

 アルゼンチンは伝統的な強みがなく、長年にわたって活動がみられなかった。過去2年間でのリーグの再構築と発展に至るまで、代表チームはどの国際大会にも参加していなかったのだ。このような短期間でワールドカップの出場資格を得て、2011年チャンピオンと対戦し、彼らにとって大会史最初のポイントを獲得した。

 さらにイタリアの女子リーグセリエA女子は、完全なプロフェッショナルリーグではない。オーストラリアよりも低いスタンダードで見込まれていたが、バルバラ・ボナンセアの活力が女子サッカーであっても何でもできることをチームに気づかせた。

アメリカと対戦できたことは素晴らしい経験でした。ただただ、すごい経験でした。一斉に襲われたような感じです。信じられないほど感情的。試合前でさえ狂気的でした。試合後は全選手と握手しました、それはもう素晴らしかったです」と、アメリカまれのタイ人選手、ミランダ・ナイルドはワールドカップデビューで感じたこと、憧れのアレックスモーガンと同じピッチに立てた感想を交えて『ロサンゼルスタイムズ』に語っている。

 モーガンと仲間たち(アメリカ代表)は、2015年デビュー後2回目の出場で最善を尽くしたタイ代表選手全員を元気づける寛大な態度を示した。確かに、連盟が女子サッカーにもっと尽力していたら、結果はもっと良かっただろう。これはタイだけではなく、アフリカも南アメリカ諸国も、私の母国であるインドネシアも同じだ。もし今突然インドネシア代表がワールドカップアメリカと対戦したら、何得点入れられるのか想像もできない。

 アメリカ代表は最高のスターティングメンバープレーし、相手を過小評価することはなかった。たくさんのゴールを決めたいからではなく、タイのお手本になりたかったからだ。これが今後数年間で達成しなければならないレベルであること、そしてタイがより高いレベルに達して再開する喜びを示すために。連盟がより良い発展に投資すれば実現するだろう。

元気を出してチャバカウ(タイ女子代表の愛称)!アメリカがくれた教訓について話そう。彼らに感謝し、そして今後数年でより良く強くなって戻ってこよう。