日本を代表するグルメマンガ『美味しんぼ』は、アニメ化だけでなくドラマ化も何回もされている。
とくに初期は美味しんぼの影響により美食家が増えたと言っても過言ではない人気で、主人公の山岡士郎が作る料理はどれも美味しそうなものばかりだ。
■厚切りとんかつは貧しい時代の後遺症?
その中でも意外だったのが、4巻で山岡が偏食の男性に食べさせるために作ったカツ丼用の『とんかつ』。作中で山岡は、「とんかつに使う豚肉の厚さは5ミリが限度。それ以上厚くするのは日本が貧しかったころの後遺症」と断言しているのだ。
■実際に試してみた
しかし日本が貧しかった頃からさらに年月が過ぎたいまでは、名店のとんかつは厚切りが多い。でも、美味しんぼが言うぐらいなのだから厚さ5ミリのほうが美味しいのかも?
実際のところを調査するべく、近所の良心的な肉屋で5ミリの厚さに切った国産豚を調達。
それ以外にも山岡が使用していたごま油で揚げ、それ以外の本物の食材も揃えて作ってみることにした。
■かつ3品を調理
作ったのは5ミリ厚の『とんかつ』と、山岡が偏食の男性に食べさせていたカツ丼の上にのせる『かつ煮』と『カツカレー』。この3つどれも厚切りよりも美味しかったら、美味しんぼで紹介される料理は現代でも通用すると言っていいだろう。
■とんかつを実食
まず1つめのとんかつを試食。ごま油の香りは非常に良いのだが…悲しいことにソースとの相性が最悪。
人気のとんかつ店はラードでコクを出したり、チェーン店は植物油であまり香りのない油を使っているが、肉が薄いためごま油の香りがどうしてもソースとカツのバランスを悪くしてしまっている。
■かつ煮は絶品!
お次の『かつ煮』は、とんかつとうってかわって猛烈にウマい! ごま油と和風のつゆ、卵の相性が素晴らしい。
しっかり衣につゆが染み込んでいるので肉が薄いのもとくに気にならず、これでカツ丼を作っても間違いなく激ウマになるだろう。
■カツカレーもなかなかの味
3品目の『カツカレー』は、カレーの風味がごま油の香りを消してしまうのだが、肉が薄いぶんごはんとルーの組み合わせの邪魔をせず、なかなかウマい。
さらにいい豚肉を使ったのでスプーンでカツが切れるため、カツカレーに使う厚さとしては最適だと感じた。ただ、油はラードにしたほうがさらにコクが出て美味しいと思う。
■とんかつは油も重要
結論としては、厚さ以外にも使う油がかなり重要だと感じた。ごま油を使うなら、かつ煮やねぎ塩かつなど、和風の味付けにしないとどうしても違和感が出てしまう。
また、厚さはそのまま食べるなら間違いなく厚切りのほうが美味しいので、かつ丼やカツカレー用にするなら最適である。
残念ながら厚切りは貧しいときの後遺症ではなかったが、新しい発見があった美味しんぼのとんかつ厚さ論、料理好きはぜひ一度試してみてほしい。
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