生活に苦しむ人やシングルマザーが懸命にお金を稼いでも、収入の大半を住居費にもっていかれてしまう。日本の貧困は、住宅政策に問題があるせいではないかーー。

こうした問題意識を共有し、社会全体に課題解決の動きを広げようとする活動を「住まいの貧困に取り組むネットワーク」(世話人・稲葉剛さん=立教大学大学院特任准教授)などが続けている。

6月12日、同ネットワークらが東京・永田町の衆議院第2議員会館で会合を開き、貧困問題に詳しい藤田孝典さんが「現代の貧困と住宅問題ー課題と政策を考える」と題して講演した。

●英仏など欧州各国は手厚い住宅支援

藤田さんは、NPO法人「ほっとプラス」の代表理事で、年間500件前後の生活困窮者による相談を受けている。そのなかで「家賃さえなければ助かる」という声を聞く機会は多いという。「人間の生活に必要な住宅を、市場任せにしないことが大事だ」と述べた。

また、英仏など欧州各国は、日本よりも格段に手厚い住宅関係の支援政策を実施していることを紹介。「日本は、住宅は自分で確保するものという意識があるが、それを転換する必要がある」とした。

貧困問題と向き合ってきたなかで、住宅を確保できずに河川敷に暮らすことを余儀なくされる人たち、ネットカフェ難民、友人宅を転々とする人たちが少なくなかったということも指摘した。

●努力ではなく、社会の仕組みが足りていない

さらに、多くの人が非正規雇用で働き、実質賃金が上がらず、昇給も見込めない厳しい実態があることを問題視。日本の貧困率(相対的)はOECD諸国のなかで高い方で、特にひとり親世帯の貧困度合いは深刻な傾向にあるとした。

具体的には、狭い劣悪なワンルームに子ども2人と同居するシングルマザーがいたり、住むところが他にないため暴力を受けつつも女性が男性と同居したりするケースもあるという。

「貧困は、住宅政策が突破口になる。働いても働いても苦しんでいる母子家庭は少なくない。怠けているわけではないし、努力が足りていないのではなくて、社会の仕組みが足りていないということだ」

給料の大半が家賃に消えてしまう…日本の住宅政策は大丈夫か? 藤田孝典さん持論