和風だしに、うどんではなく中華麺という名物メニューが、山陽本線姫路駅にあります。その名も「えきそば」。まねき食品が提供する、戦後まもない頃に生まれというそのミスマッチ、「クセになる味」として人気になったそうです。

和風だしに中華麺の「えきそば」なぜ誕生?

【本記事は、旅行読売出版社の協力を得て、『旅行読売』2019年7月号に掲載された特集「ホームに名店あり 駅麺の実力」内の記事を再構成したものです】

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JR山陽本線の列車がひっきりなしに発着する姫路駅兵庫県姫路市)の上下線ホームには、それぞれ立ち食いそば店がある。一番人気は、来店客の7割が頼むという名物の「天ぷらきそば」だ。

「初めてのお客様は、そのミスマッチにびっくりされることもあります」と、店舗を運営する「まねき食品」広報の石田佳之さんは話す。“ミスマッチ”とは、その麺とだしのこと。まねきの「えきそば」は、中華麺を使っているのだ。1888(明治21)年創業の同社は、もともと姫路駅ホームで駅弁を販売するかたわら、ヤカンにだしを入れてうどんも売っていた。だが、戦後に小麦が手に入らなくなったため、うどんに代わる麺をと、試行錯誤の末に生まれたのが、中華麺の「えきそば」だった。

終戦後の1949(昭和24)年に販売を始めると、そのミスマッチが「クセになる味」として、たちまち人気となった。実際に食べてみると、ほどよい太さと弾力の中華麺が、和風だしに意外なほど合う。このだしも、うどん用とは違ってカツオやサバをブレンドしたオリジナルレシピ。さらに、だしでふやけた天ぷらが麺に油分を与え、中に入った小さなエビも、食感と風味のアクセントにちょうど良い。よく考えられた組み合わせだ。

多い日は上下線合わせて1日2000人以上が訪れる人気店ゆえに、提供する側も手慣れたもの。注文してから出てくるまで、20秒かからない。列車から降りた人々が熱々の「えきそば」を食べ終え、食器を洗った頃に次の列車が到着する。実に美しい流れだ。

近年は座ってゆっくり食べられる店も新幹線乗換口前に開店した。駅弁部門は台湾にも進出し、これを記念して日本と台湾の鶏料理を取り入れた「鶏めし味くらべ弁当」を姫路駅で販売している。2019年夏には上りホームの立ち食い店が改装される予定で、同社の話題はまだまだ続きそうだ。

●まねきのえきそば
・所在地:JR山陽本線ほか姫路駅改札内(5・6番線および7・8番線ホーム
・営業時間:6時~24時(5・6番線ホームは~23時)/無休

・旅行読売(Fujisan.co.jp)

天ぷらえきそば(360円)。天ぷらをほぐして麺と絡めるのが“通”の食べ方。いなり寿司(3個170円)とセットで注文する客も多い(伊原 薫撮影)。