今から40年前の1979年北海道の小さな町で中学三年生の女子が同じクラスメートの女子を刃物で刺し殺す事件が発生した。事件が発生したのはゴールデンウィーク前の4月28日北海道苫前郡(とままえぐん)にある某中学校の休み時間においてだ。

 クラスの中で明るい生徒として知られるA子(14歳)は1時間目が終わってすぐの休憩中、同じクラスのB子を教室から廊下に呼び出した。このクラスでは、4月の頭からA子が所属しているグループ内で「B子がA子の友人であるC子をいじめている」と話題になっており、A子がいじめの事実を確認するため、B子を直接問い詰めることにしたのだ。

 A子は人気のない体育館の備品倉庫で、B子は「なぜ貴女はC子の悪口ばかり言うのか。C子泣いているよ」と問い詰めた。するとB子さんは「悪口なんか言ってない」と叫び、A子の右頬をぶった。「やったわね!!」二人は殴り合いの喧嘩を始めてしまった。A子から振った喧嘩ではあったものの、B子は思いのほか喧嘩が強く、倉庫の床に倒れこんでしまった。倒れたA子がふと床を見ると、なんとそこには果物ナイフが落ちていた。

 カッとなったA子は夢中でB子を、落ちていた果物ナイフを手に持ち、胸を中心に滅多刺しにしてしまったという。

 「……とんでもないことをしてしまった」

 血まみれになりながら苦しむB子を見て、A子は激しい後悔の念にかられたが「これは現実ではない」と自分に言い聞かせ、一旦自分の教室へ戻ることにした。

 A子の制服はB子を刺した返り血で真っ赤になっており、これでは教室に戻れないことから、A子は所属していたバレーボール部の部室に行き、体操着着替え、凶器となった果物ナイフを自分のロッカーの中に隠した。

 A子がB子を刺してから着替えるまで、わずか10分間の出来事だった。

 2時間目の授業が始まる、B子の姿がないことがクラスの中で問題になっていた。体操着姿のA子は最初、何食わぬ顔をして授業を受けていたが、お昼休み後、倉庫からB子の死体が見つかり、警察がやって来たあたりから顔を真っ青にし、ブルブルと震え出した。A子の様子を怪しんだ担任が事情を聞いたところ、A子がナイフでB子を殺してしまったことを自白したという。

 A子はB子を殺してしまったことを強く後悔しており、泣きわめいてB子に懺悔し続けていたという。

 唯一、謎が残っているのが床に落ちていた果物ナイフの存在である。A子の話では果物ナイフは「体育倉庫に落ちていた」というが、そんなものが何故、倉庫にあったのだろうか。

 これはあくまで筆者の推測だが、やはりA子はB子を最初から(連休前に)殺すつもりで、家からナイフを持って来ていたのではないだろうか。人間には、強いショックを受けると、自分の記憶を架空の記憶とすり替えて自己防衛を図る機能があると言われ、A子の小さな体ではそのショックに耐え切れず、別の記憶とすり替えてしまったのではないだろうか。

 北の大地で発生した痛ましい同級生殺人事件。禊を済ましたA子が無事に社会復帰できていることを心から祈りたい。

文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)

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