第161回芥川龍之介賞の候補が17日に発表され、古市憲寿さんの「百の夜は跳ねて」(新潮)がノミネートした。古市さんのノミネートは第160回に続き2回目となる。


社会学者の古市憲寿さんは1985年生まれで、2013年に第4回日本学術振興会「育志賞」を受賞。これまでに、「絶望の国の幸福な若者たち」「保育園義務教育化」「彼は本当は優しい」などの著作があり、前回の芥川賞では「平成くん、さようなら」で初ノミネートとなったが、受賞は逃した。「百の夜は跳ねて」は、無機質な都市に光を灯す「生」の姿を描いた長編小説。「格差ってのは上と下にだけあるんじゃない。同じ高さにもあるんだ」——高層ビルの窓ガラスを拭く青年・翔太と頭の中に響く声との境界を越えた対話、ガラスの向こうの老婆との出会いが翔太に変化をもたらしていく。


第161回芥川賞の候補は、「百の夜は跳ねて」のほか、3回目のノミネートとなった今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」、2回目のノミネートとなった高山羽根子さんの「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」、3回目のノミネートとなった古川真人さんの「ラッコの家」、初ノミネートとなった李琴峰さんの「五つ数えれば三日月が」の全5作品。選考委員は、小川洋子さん、奥泉光さん、川上弘美さん、島田雅彦さん、高樹のぶ子さん、堀江敏幸さん、宮本輝さん、山田詠美さん、吉田修一さんが務め、7月17日に受賞作を発表する。

新潮 2019年6月号