ヨーロッパに仕事で来ている駐在員や、結婚でヨーロッパに住むことになった日本人がよく言うのは「ヨーロッパの人々はあまりストレスをため込まない」ということだ。なぜ、彼らはストレスがたまらないのだろうか。

 日本人がストレスを抱える大きな要因の一つとして、“他人にどのように見られているか気になること”が挙げられるだろう。しかし、ヨーロッパでは、他人にいい意味で興味がない人が多い。日本では女子同士が集まると、誰かの噂話になりがちだが、ヨーロッパではその場にいない人が話題の中心になることはあまりない。「人は人、自分は自分」という考えを持っている人がほとんどなので、その場にいない人の噂話には会話相手も興味を示さず、たいていの場合、盛り上がらない。そのため、他人の目を気にする必要がなく、ストレスを抱えることが少ないのだ。

 また、ヨーロッパの人々は、仕事においてもストレスをためないようにするのが上手だ。ヨーロッパの多くの国では、「人生の多くの時間を占める仕事でストレスを感じたくない」と思っている人が多く、「自分が今の仕事に向いていない」「自分の能力に見合った給料を得ていない」と感じたら、すぐに仕事を辞めて転職活動をする。

 アメリカの調査機関『National Longitudinal Survey of Youth』が2011年に報告した内容によると、ヨーロッパの主要国の転職の平均回数は、高等教育修了後の3年間で1.3回にのぼるという。3年でほぼ全員が転職している計算だ。仮に転職をせず、今の職場でしばらく様子を見るという選択をしたとしても、我慢はしない。改善して欲しい点や給与について上司に掛け合うことも日常茶飯事だ。

 さらに、規律正しいイメージがあるドイツでよく見られる光景だが、交通機関の乱れにイライラしないという点も大きいだろう。ドイツは交通機関が正常でないことがほとんどだ。電車が時間通りに来ないことは日常茶飯事だし、ストライキによって電車やバス、飛行機が運休になることも珍しくない。しかし、そういった場面でイライラしている人はあまり見かけない。「またか」という感じで受け入れ、別の移動手段を探したり、諦める人も多い。ドイツ人曰く、「自分の力でどうしようもないことは、受け入れてしまったほうが楽」とのことだ。

 ヨーロッパの人々はストレスを感じる前に、上手に対処することができるようだ。日本人も嫌なことを我慢してストレスをためるより、嫌なこと自体を思い切って避けるなど、許容範囲の中で判断をすることも重要なのかもしれない。

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