魚のカップルにも深い絆があるようだ。一生を同じ相手と添い遂げる魚「コンビクトシクリッド」は、固い夫婦の絆を見せることで知られている。
今回、仲の良いシクリットのカップルを引き離すという実験が行われた。その結果、オスを連れ去られたメスのシクリットは悲しみに暮れ、ふさぎ込んでしまうことがわかったという。
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動物にも感情がある?動物界に見られる夫婦の絆
一生をたった1人の伴侶と添い遂げる。そんな暮らしを送る動物は、きっと相手と特別な絆で結ばれているに違いない。
鼻をすり寄せる狼の夫婦、くちばしで羽をつくろい合うコカトゥーのつがい、配偶者の死を嘆く白鳥や猿など、動物界では彼らが夫婦間で愛情を感じているらしき行動が観察されている。
しかしそれが本当に愛情ゆえの行動なのかどうかは、動物が感じている感情を客観的に評価しなければ断言することができない。
その方法の1つは、動物の気分はその世界観にバイアスを与え、様々な意思決定に影響するという仮定を利用したものだ。
これは人間では確かなことだ。たとえば気分が滅入っているときに曖昧な文章を読んだ人は、それをネガティブに解釈することだろう。そして、こうした気分によって生じるバイアスは、カナリアからミツバチまで様々な動物で確認されている。
一生を同じ相手と添い遂げる魚、シクリッド
「コンビクトシクリッド」という中央アメリカ原産のスズキ目の魚もまた、固い夫婦の絆を見せることで知られている。
コンビクトシクリッドは一生を同じ配偶者と添い遂げ、協力して子育てをする。子育てでは、メスが主に卵を抱き、オスは危険がないかパトロールをする。稚魚が孵化したら、巣から離れてしまった稚魚を口に含み、安全な巣まで運んでくる。
また相性のいいシクリッドのつがいなら、稚魚を狙う敵が接近すれば一致団結して子供を守ろうとする。力を合わせれば、自分よりずっと大きな敵でさえ撃退可能で、水槽に入れられた人間の手に攻撃し、出血するほどの傷を負わせるくらいだ。
ところが相性の悪いつがいもいる。そうなるとオスとメスが夫婦喧嘩をするようになる。オスに至っては、あろうことか自分の子供やメスを食べてしまうことすらある。
メスは自分よりも3割ほど大きいオスを配偶者に選ぶ傾向があるのだが、オスから見てメスがエサに見えるような体格差ではない。
恋の相手を奪われたメスは悲しむのか?
フランス、ブルゴーニュ大学の研究者は、このシクリッドを対象に、メスが配偶者をどのように感じているのか調べる実験を行った。
まずシクリッドのメスを訓練して、水槽の隅に置かれた黒か白の蓋がされた箱を区別できるようにする。黒か白のどちらかの箱にはエサが入っており、きちんと区別できればそれを食べられる。
実験はここから。今度は黒と白の箱の間に灰色の箱を置いてみるのだ。色が曖昧な灰色の箱を見ても、そこにエサが入っているか即座に判断することはできない。
Convict cichlids are trained to open boxes in order to assess their mood
だが研究者は、気分がよく、楽観的になっているシクリッドならばすぐさま箱を開け、悲しみに沈んでいるシクリッドなら箱は空と考えるのではないか、と予測した。
そこで、メス35匹それぞれにスクリーンで区切られたオス2匹を見せて、好きな方を選ばせた。
好みのオスを見定めたメスは、すぐ近寄って求愛行動を開始する。だが、このタイミングで、メスが選んだオスか拒絶したオスのいずれかを水槽から取り出してしまう。
好きなオスを奪われたメスは悲観的になることが判明
このプロセスの各段階で、メスの気分が検証された。そして、ほとんどの状況では、シクリッドのメスはすぐに灰色の箱を調べ、そこにエサがあるのではと期待しているらしいことがうかがえた。
ところが、メスが自分で選んだオスを奪い去られた状況では、箱を調べるまでにかなりの時間がかかった。一方、白や黒の箱についてはこれまで通り、エサの有無を調べていた。つまり、彼女らが自暴自棄になっていたり、関心を失っているわけではなさそうだった。
おそらくはメスは、好きになった相手が連れ去られてしまったことで気分が沈み、悲観的になっていたのではないかと推測されるのだ。
ちなみに、望まぬオスとつがいにさせられたメスは、卵を産むまでに時間がかかり、数も少なかった。さらにお互いに対して、攻撃的な兆候も垣間見えたという。
この研究は『Proceeding of the Royal Society B』に掲載された。
References:insidescience/ written by hiroching / edited by parumo
全文をカラパイアで読む:http://karapaia.com/archives/52275590.html
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